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第22話
俺が住み着き始めてから二ヶ月。
この生活にも慣れて、一ヶ月くらい前から働くことになった。
家事は勿論、店の見張りも担当する事になった。
……見張りっている? 今まで泥棒とか、来なかったような雰囲気だけど……
ま、細かな事は気にせずに……
「ノア。運ぶのを頼んでいいか?」
「はい」
俺はそう言って、金属の資材の入った箱を店の裏に運んだ。
……これ、セリーナさんより重い。
「よっと……」
「あ、ノア。お疲れ様」
そう言って水の入ったコップを渡してくれた。
「ありがとうございます」
「……敬語、辞めていいのに……」
口を尖らせながら呟いて行ってしまった。
……辞められないてすよ。
命を助けてくれたんだから……
俺は手を見つめながら小刻みに震えた。
❂
嫌だよ……怖いよ……
暗い部屋で一人、丸くなって震えていた。
「お宅の、――。私の子を傷つけたのよ」
「申し訳ありません。よく注意をしておきます」
そんな声が聞こえるのは日常茶飯時。
別に、《《先祖返りの獣人》》だからって……怪我させた事もあるかもしれないけど、わざとじゃないもん……
半泣きのまま、お母さんに優しさをくれるのを待っていた。
俺の家は母子家族だ。俺の実父の置いていった金があるから暮らしには困っていなかった。
「お前の所為よ! お前が産まれたからっ!」
そう言いながらお母さんが俺に向かって怒鳴りつけた。
俺は何も返せなかった。
死んだって、産まれた事実は変わらない。子供ながら、そう思っていた。だからって、謝っても何も変わらない。
ある日の夜。俺が起きると、木の箱に入ったお母さんが寝ていた。いつものオーラは見えない。
嘘っ……お母さん?
『自分の所為で、この運命が決まった。自分は厄病神』
俺は自分の実母の遺体の前でそう悟った。
❂
「……あっ」
ん? 誰だろう?
聞き馴染みある声が俺の鼓膜を震わす。
「ご――っ……」
誰だか思い出せないのが、とても歯がかゆい。
「お願いっ……生きてっ」
リナだっ!
俺が飛び起きると、セリーナさんが抱きついてきた。
「ごめんっ……私が、見てたのっ……うわーぁん……」
俺は……?
「大丈夫? 店裏で倒れたのよ」
店裏……あ、あの時……
「はい。ちょっと、気が抜けただけですよ」
「違っ……魔力の揺れっ方が……絶対に、そんな言葉にまとめていい物じゃっ無いっ」
そう言ってセリーナさんは自分の涙を袖で拭いながら、俺の事を見つめた。
……何で、そこまで……
「……そうですね。夢見が良くなかっただけですよ」
そう言ってセリーナさんの頭を撫でて微笑んだ。
セリーナさんは唇を強く噛んでいる。それ以上強くやったら血が滲むだろう。
「貴方を悲しませるような事は絶対にしませんから安心して下さい」
そう言うと、セリーナさんは俯きながら頷いた。
「俺の事、信じて欲しいです。希望の光を与えてくれた貴女に」
セリーナさんの黒い髪が儚く揺れている。
「信じられないよっ……ノアがいつ、どこで危険な目に合うか、分からないんだから……命があるとね。死んじゃうんだよ……私の言いたい事、分かるよね?」
……貴女は、色々な事に巻き込まれて死んでしまった。俺は目を逸らして「全部、予想外で明日だって生きてるか分からない」と口の中で言葉を転がした。
セリーナさんは小さく頷いた。
「だから、私はね。信じるんじゃなくて、助け合いたい。貴方と一緒がいいの。強くなったら信じられるかもしれないけれどね」
「セリーナさん。もう一度問います。こんな俺なんかでいいんですか?」
「ふふっ。もう一度言わせて。違う逸材がいたら、今頃、記憶は消されているよ。私が見極めたんだから、少しは胸を張ってよね」
セリーナさんは変わらないな。
それと同時に『リーパーは、変わったな』とどこかで聞こえた。自分の身体の外から。だけど、人が居ない所から聞こえる。多分、空耳。
「はい。分かりました」
そう言って俺はセリーナさんの目元を拭った。
❂
ケスラー家の次男。ローベルトというクラスメイトがよくこっちを見てくる。
良く分からない。
ケスラー家とは、少し関わりがある。というか、ローベルトの父――マルティン様はすっかり、お店のお得意様になっている。
……ローベルトの妹――グレーテと、リナが間違われた。
まだまだ、注意はしないと。
……でも、ノアがいるから安心か。
あいつ、俺と手合わせをしたけど互角だったからな。
……俺、弱いはずなんだけどな……
「……ニルスだっけな。明後日の放課後、少し訪ねてもいいか?」
「え? あ、今日は掃除当番で……」
「お前の、妹に会いたい」
は? 妹……?
「妹ではないですけど、リナは大丈夫なはずですよ」
「そうか」
ありがとうも無しにローベルトは自分の輪に戻っていった。
コメント
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ああもう、第23話も沁みたわ……。セリーナさんがノアの悪夢のあと抱きついて泣く場面、めちゃくちゃぐっときた。「信じるんじゃなくて助け合いたい」って台詞、二人の関係性がちゃんと深まってて最高だよ。回想でお母さんの死に直面したノアの孤独も重かった……。ニルス視点のパートでローベルトがリナに興味持ってるのも、今後の展開が気になるな。続きめっちゃ楽しみ!🔥