「……ふぅん、シクフォニ……」
窓の外を見ながら、俺は呟いた。新世代のグループがそこまで来ている。彼らは、まだ高校生。俺たちに敵うはずがない。絶対に。なのになぜか恐怖と焦りが胸の奥で燻っている。それを吐き出すように深呼吸する。
「ふふ、俺たちに勝てるかなぁ。」
窓に映った俺の頭には、赤い犬耳が生えていた。黄色と紫色の目が窓越しにこちらを見つめていた。嘲笑うように笑いかけると、窓の俺も同じように笑った。なんだか監視されてるみたい。それが怖くて可笑しくて、李犬は思わず目を逸らした。
「莉犬、会議」
ドアが開き、中から桃色髪の青年が顔をのぞかせる。青紫色の目がこちらを見つめる。莉犬は頷くと、部屋を後にした。桃色髪の青年、さとみは莉犬をそっと見下ろすと、莉犬を連れて廊下を歩き出した。
莉犬は、さとみの隣を歩きながら、心の中で先ほどの思いを反芻していた。自分たちの立ち位置は確固たるもので、揺るぎないはずなのに、どこかに感じる不安が消えない。新世代の歌い手グループが注目を集めていることが、その不安をさらに煽っているのだろうか。
「さとみ…あの子達さ、どう思う?」
莉犬はふと疑問を口にした。さとみは一瞬足を止め、莉犬の方を見た。その瞳には、深い思考の色が見えたが、やがて軽い笑みが浮かんだ。
「まぁ、勢いはあるよな。でも、俺たちが負ける理由もないと思うけど?」
さとみの言葉は、落ち着いていて力強い。だが、莉犬はその言葉の裏にある本音を探ろうとするかのように、彼の横顔を見つめた。
「そうだよね。でも、なんでか俺…」
「不安なんだろ?」
さとみは莉犬の言葉を遮るように、淡々と続けた。その言葉に、莉犬は驚きながらも、頷いた。
「俺たちは今まで、いろんな壁を乗り越えてきた。今回もその一つだ。焦ることはないでしょ」
さとみはそう言うと、莉犬の肩を軽く叩いた。その言葉に少しだけ安心感を得た莉犬は、深呼吸をして気持ちを落ち着ける。
「ありがとう、さとみ。」
「おう。会議に行こう。次の企画とか考えなきゃやし。」
さとみは再び歩き出し、莉犬もその後を追った。二人は廊下を抜け、会議室に向かって進んでいく。その途中、莉犬の心の中でさっきまで感じていた不安は、少しずつ薄れていった。彼らの絆と信頼が、どんな壁も乗り越える力を与えてくれると信じて。