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いつから私はこんなに弱かった?
「 麗華ちゃんは普通に生きてね 」
いつから私はこんなにも最低な人間だった?
「 麗華ちゃんはイイコだね 」
いつから私は他人の為に生きていた?
「 麗華ちゃんが居なくなったら困るよ 」
私は誰の為に生きている?
私は誰の為に進路を決めた?
私は誰の為に笑っている?
ねえ私は今どんな顔してる?
顔と名前の一致しない親戚の合図で、礼儀を知らない乾杯の声と私の小さな献杯の声が重なった。
今日も人が灰になった。
たったそれだけの事実で何を思って何に対して泣けば良いのか。
私には見当もつかない。
私が冷めているのか。
私が可笑しい側なのか。
私が死ねば良かったか。
疲れて姿勢を崩し出す親戚の中で、私だけが背筋を曲げず一言として意味の分からないお経を聴きながら人として最低な事ばかり考えていた。
私だけが瞳に虚偽の雫を浮かべていた。
姉も祖母も叔母も名前を忘れた従兄妹も ‘ その人 ’ が荼毘に付される前、病的に痩せ細った顔を見て静かに泣いていた。
祖父は泣いていなかったような気がする。
無論、私も泣かなかった。
皆が泣いていたから私も悲しそうな顔をしておいた、くらいの気持ちで。
私は ‘ その人 ’ にお世話になったけれど家族に抱くような特別な感情はこれと言って無く、よく海外を旅していて毎年お年玉を他の親戚より多めにくれる人というイメージでしか無かった。
だから、訃報を耳にした時の第一声は
「 お年玉、減っちゃうな 」って。
嗚呼、つくづく嫌になる。
私は最低な人間だ。
心の底から冷えきっているんだろう。
いつからそんなに悪い子だった?
他の人の死なら悲しめたか。
否、私はきっと親の葬式ですら子供のように泣くことは出来ないだろう。
私はそういう人間だ。
でも、もしかしたら親の死なら部屋でひとり、咽び泣くくらいは出来るかもしれない。
私がたった一人、目の前で泣くことを許せた人が居た。
高校の担任で物理の教師だった。
人に自分の心の内を晒すなんて以ての外だと思っていた私が唯一、全てを話した人。
15歳の初夏、10分程度のただの面談。
何も無く終わるはずだった。
何も無く、取り繕えると思っていた。
いつものように、ただ淡々と最低限の笑顔を貼り付けて。
その男は ‘ 人に本心を話させる魔法 ’ でも使えたのか、私はぼやけた視界を眺めながら「 学校に行きたくない 」なんて心底面白味の無い話をしていた。
私が零した言葉はどれも心からの本音だった。
面談で何か言おうとする度に涙目になってきたけれど、それでも取り繕って気付かれないように必死に笑顔を貼り付けてきた。
それなのに「 大丈夫? 」なんて。
彼だけが気付いた。
彼にだけは笑って取り繕うことができなかった。
上手く笑えずに言葉に詰まっていた私は余りにも滑稽だったと思う。
それ以降、彼と話す度に本心を暴かれる度に、言葉に詰まってしゃくり上げて彼をいささか困らせた。
家族の前ですら滅多に涙を見せてこなかったのに、どうしてこいつの前では耐えられないのかと自問して、答えが分からないまま次の日もその次の日もベッドで泣きながらネットに入り浸った日々。
化学の参考書を見てmolって何だよとか思いながら、その人に解説をしてもらって楽しんで勉強が出来ていた日々。
クラスメイトは知らなそうな担任の恋愛事情を聞いてしまって独り胸が高鳴っていた日々。
こんなにも良い教師が近くに居たのに、私は差し伸べられた手を振り払って別の路に進んで、また彼を今度は酷く困らせた。
申し訳無かったとは言えなかった。
私にはそんな大層な勇気は無かったから。
消えそうな謝礼が彼の耳に届いていたかはもう知る術も無い。
素敵な人ばかり出逢ってきた私は今日も自堕落に夜に耽って、真っ暗闇をひたすら歩いている。
ねえ私は今どんな顔してる?
差し伸べられた手を全て振り払って、私らしくて私らしくない真っ当で適当な人生を歩んでいる。
後悔が山ほどある。
心の内でまだ死にたくないと思っている。
神というのは意地悪だ。
どうして人生に光を見出した途端、地獄に突き落とすのか。
どうして一番嫌だった火災での死に方なんて選んだのか。
もう一度やり直させてくれやしないかな。
今度は上手に生きてみるから。
死にたいなんて思わないから。
彼みたいな人には感謝を伝えるから。
人の死にはきちんと向き合うから。
私は私のままで生きるから。
神っていうのは残酷だ。
産まれた時、人生は一度きりだなんて教えてくれなかったじゃないか。
コメント
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皆さんお久しぶりです🍎 2ヶ月以上振りの更新になりますがお元気ですか? りんごあめは毎日暑さに打ち勝つべく、日傘とハンディファンの2個使いで何とか耐えております🥵 地震、台風、猛暑の3点セットでうんざりしますが諸々お気を付けてお過ごしくださいね🍀︎
読ませていただきました…。心がぎゅっとなる、静かで重たいお話でしたね。「お年玉、減っちゃうな」という第一声に、主人公のあまりに正直な、けれど自分で自分を責めてしまう繊細さが全部詰まっている気がして、胸が苦しくなりました。特に、唯一心を開けた物理の先生との面談シーンが印象的です。涙をごまかそうとしたのに「大丈夫?」と気づかれてしまう――その瞬間の、守っていたものが崩れる感覚がリアルでした。りんごあめさんの、人の心の弱さと強さを描く筆致、とても素敵です。続きがすごく気になります。
パンプキンパンダ
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ruruha
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