1日はセーフですよね
うん、大丈夫大丈夫
レポートもギリ許してもらえる範囲
よしおっけ
すんませんした
イけると思った
あの課題提出前もしくはテスト前スレスレに湧き出てくる謎の自信に邪魔されてしまいました。
はい、ウダウダ言ってないで行きましょうか
どうぞ……
rpem②【愛子】
「……これが…君と、私の子なんだね」
我ながら、気色の悪い台詞だと思った
100センチメートルの正方形のカンバスの中
描かれたその絵に、まるで我が子を見ているかのような愛おしさが溢れて止まない
長年連れ添った己の半身を手に、久しく感じていなかった感動に思わず零れてしまった言葉
「ええ…そうです。貴方と、僕の…可愛い子ですよ」
穏やかな声
慈愛に満ちた瞳で私を見つめる彼は
あの日と同じ様に、大粒の涙を流していた
ふと、身体が引き寄せられ、柔く抱き締められる
胸に埋められた顔は、酷く幼い
「ありがとうございます…エーミール」
艶やかな銀髪に指を絡め、形のいい頭を撫でる
ボヤける視界の中でも
彼と、彼の絵だけは、何故か鮮明に輝いていた
「やっと…やっと、完成した……」
彼と出会ったのは、つい数週間前なのに
どうしてか知己の人のように思う
あの日
飽きてしまう程通い慣れた雑居ビルの一室で
眩しいくらいの光と出逢ったあの日
相棒との演奏を終え、陽光に眩んだ目がまもなく立ち尽くす彼を捉えた
スモーキークォーツの中に若葉を宿す瞳を潤ませ、大粒の涙を流しながら
微かに震える手で拍手を紡ぐのその姿に
いつかの自分を思い出した
戦慄く唇で、ただ”きれいだ”と
そう繰り返す彼に救われた
長い間心の中に住み着いて離れなかった穢が
すぅ、と消えて無くなるような
そんな感覚
今までの全てが報われた
そう思ったのだ
彼以外にも、私の音が好きだと言ってくれた人はちゃんと居た
いつもそばに居てくれたあの人
けれど、あの人の圧倒的な音に怖気付いて
劣等感でめちゃくちゃになって
挙句の果てにはあの人の元から逃げ出した
愚かな程情けない自分に、また吐き気がして
どうしようも無いまま音に溺れる
そんな日々を繰り返していた
ああ
嗚呼
でも
漸く
「ありがとう、レパロウくん…」
きっとこれが
私の産まれた意味なのだ
「本当に…ありがとう」
彼に、『この子』に
出逢う為に
私は
…ああ
貴方にも、また会いたい
今ならちゃんと、貴方の目を見て話せる気がするんです
貴方はこの臆病者を
私の音を、まだ憶えているだろうか
ちゃんと貴方にお礼が言いたいんです
ねぇ、グルッペン
貴方のおかげだよ
貴方が居てくれたから、私は今幸せなんだよ
そう
伝えたい
昔、貴方の前でも弾いた『24のカプリース』
この曲が
この音が
どうか貴方にも届くように
「エミさん」
「…なぁに?」
するり
手を握られる
泣き腫らして赤くなった
けれど、酷く真剣な瞳が私を穿く
「エーミールさん」
「これからも、ずっと…僕の傍に居てください」
「貴方と、貴方の紡ぐ音色を…この先の生涯、ずっと愛し続けます」
「僕はまた、貴方との子を創りたい」
嗚呼
そんな事を言われたら
「それ、プロポーズ?私…勘違いしちゃうよ」
「プロポーズですよ」
柔い唇が指先に触れる
凪いだ部屋に自身の心音だけが取り残されたかの様だ
大きく心の臓が揺れ、身体の隅々まで血が巡る感覚さえも感じられる
そのせいか、茹だるほど顔が熱い
「僕は……」
「貴方の音も、貴方も…本気で愛してるんです」
「絵があるからじゃない。コレが無くたって、僕はきっと貴方の音に、貴方に恋をした」
「初めて貴方と出逢ったあの日から」
また視界が滲み始めた
ああ…ほんとに
あの時
音楽を手放してしまわないで良かった
それもこれも
全部彼のおかげだけど
今も昔も
彼には頭が上がらないな
「エーミール」
「僕と結婚してください」
私は、幸せ者だなぁ
「…それは、ずるいよ…レパロウくん」
「……ありがとう」
「これから…よろしくお願いします」
春の穏やかな陽射しの中
私達は
ただひたすらに幸福だった
はい、いかがでしたでしょうか!
これにて3話完結ですね〜
いやぁ良かった
前回載せ忘れたのも含めて登場人物の説明です
レパロウ(22)
うだつの上がらない無名の画家
幼い頃から絵を愛し、芸術高校に通っていたが美大受験に失敗しアルバイトをしつつ絵を描き続けていた
しかし自分の絵が何処か不完全であると感じており、本人曰く完成した事は無いのだそう
通っている絵画教室の入っている雑居ビルでエーミールと出会い、その音色とエーミールの美しさに心を奪われる
エーミールの協力の元描いた作品が高く評価され、自身の完成した作品を我が子と呼ぶ
昔事故に巻き込まれその時の後遺症で聴覚が異常な程良くいつも騒音に悩まされている
エーミールの演奏を聴いている時は騒音が止むらしい
エーミール(28)
うだつの上がらない無名のヴァイオリニスト
有名芸大のヴァイオリン専攻を中退後、音楽教室の講師として細々と暮らしていた
万人受けするかと言えば全くもってそうでない独特の演奏技術を持っておりそれは彼の天性の才によるもの
だが殆どの人間には理解されず本人は自分の実力不足だと思い込み長年悩み続けている
旧友のグルッペンとは高校で出会い意気投合。しかしグルッペンの才能に劣等感を抱き、迷惑をかけたくないが為に彼の元を離れた
グルッペンが拗らせていることなど全く知らない鈍感さん
授業終わりに日課の演奏を行っている最中にレパロウと出会い、何処までも真っ直ぐで純粋なレパロウに惹かれて行った
こんなもんですねぇ…なっが
設定なんて盛ろうと思ったらいくらでも盛れるからね
なんなら設定考えてる時が1番楽しい
1話ずつでも成り立つ構成ですが一応続き物なのでね
いつもとは違う書き心地でした
次からはまた1話完結のお話に戻ります
なるべく投稿はしてたいので、出来上がり次第上げてきますね!
それでは、また次の作品で……
コメント
5件
いつも言葉選びが素敵で、どこか透明でいて、なのに色鮮やかな世界観に、魅了されまくっています。 触れると壊れそうなほど繊細な文体とrpとem(そしてgr)の世界に、神々しさが垣間見えて思わず涙が溢れてしまいました。 神がかったお話、ありがとうございます。 主様は神ぃぃぃ✨️✨️
とても良いお話でした♪emさんが報われて本当に良かったです!ただ…私の内なる闇の腐女子が(このgrさんが大人しくrpemを祝福するか…?)などとほざいており…後日談などもあったら是非、読ませていただきたいです。