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あらすじ必読
これはある夏の記憶
多くの蝉が鳴き、ギラギラと光る太陽
小学生が虫取り網を持ちながら走っている様子
コンビニでアイスを買い、食べ歩く様子
これぞ夏と言えるだろう
でも、俺の夏は違った
俺の夏は、一瞬で終わり寒く冬のようだった
体は冷え切って
『本当に夏なのか』と疑うほどには寒かった
凍え死ぬかのように、重くなってきた瞼を閉じる
周りの人が大きい声で喋っているが聞こえない
少し震えていた指先を誰かに握られた気がした
(温めてくれんのかな)
なんて考えて 俺は意識を手放した
ある日の夏俺の親友が死んだ
俺が殺したと言っても過言ではなかった
俺が車の確認もせずに
目の前にいる他の友達に一直線に走ったから
俺が車を見てれば
あいつが死ぬこともなかった
それに、俺は轢かれたあいつを見てることしか出来なかった
「え?は?ど、うなって…?」
そんな役に立たない言葉しか出なかった
この時に俺が「誰か救急車お願いします!」と
この一文を言えていただけで助かったかもしれないのに
助けてもらったのに助けられなかった
悔やんで悔やんで…自分が嫌になる
通行人に見つけてもらうまで
現実を受け入れられず
助けを呼べなかった自分こそ
轢かれて死ぬべき人間だっただろうと思う
通りかかった人が救急車を呼んでくれて
俺はやっと現実を理解して
微かに震えていた手を握った
だんだんと目を閉じていく親友を見て
(あぁ、助からねぇんだ)
と理解をしてしまう
今すぐにでも俺は親友と場所を変わりたい
親友をこの姿にした自分がそう思ってしまうのはひどいのかもしれない
でも、だって、俺が車見てれば
お前は死ななかったッ
未来を奪ってごめんなッ…
お前の夏を奪ってごめんなッ…
それから数年
暑い夏
セミが鳴き、ギラギラと光る太陽
小学生が虫取り網を持ちながら走っている様子
コンビニでアイスを買い、食べ歩く様子
夏が来た
俺は今お墓の前にいる
あの日俺を庇って死んでしまった親友の墓
来るたびにあの日の出来事を思い出す
でも、忘れようとか逃げようとは思わねぇ
だって、これがお前の命を奪った代償だから
命に比べれば軽い代償…
呪われもせずこの代償で許してくれたのは
お前だからかな
なんて変な妄想をしながら墓掃除をする
そして、掃除が終わる
その後は手を合わせて心のなかで語りかける
あの日のことへの謝罪
あの日庇ってくれた感謝
上から見守ってくれてると信じてるということ
そして、お前の守ってくれた命で精一杯生きるということ
「じゃ、俺帰るわ」
「今年も夏乗り越えるから」
『おう、いってこい!』
お墓から聞こえた親友の声は
生きてたときと変わらなくて
元気で、いつも悪ノリをするあいつだった
「あぁ!」
その声に負けないように俺は返事をする
お前の夏も俺が楽しみ頑張るということを心に決めて
俺は【暇72】と書いてある墓に背を向け歩き出す