あらすじ必読
『お兄ちゃんみたいになりたかった』
それが、口癖だった
お兄ちゃんは、強かった
俺とは真反対の考え方をする人だった
お兄ちゃんは「自分から離れていく人はほっとけばいい」と考える人
でも、俺は『自分から離れていったのは、自分が悪かった』と考えてしまう
それに、お兄ちゃんは色んな物を持っていた
頭が良くて、優しくて、絵が上手くて、歌が上手くて、料理が出来て、才能があって、努力できて
俺にはない物をたくさん持っていた
そんなお兄ちゃんが羨ましかった
いや、憎かった
兄弟なくせに、お兄ちゃんだからって
俺が貰えるはずだったものを取られたのではないか
と、考えてしまうからだ
そんな風に考える俺は
お兄ちゃんとは真反対の【汚い心】を持っていた
一度だけ、お兄ちゃんに言ってしまったことがある
『お兄ちゃんのせいで、俺は出来損ないって言われるんや!!』
『お兄ちゃんが何でも出来るから』
『お兄ちゃんが俺が貰えるはずはずの物を全部持っていったから』
そんな言葉を感情のままにぶつけた
そしたら、お兄ちゃん悲しそうな顔で
「そっか、ごめんね…」
ってあやまるんよ
その表情が言葉が、言い返してこない優しさが
俺の心には刺さった
自分が醜い…そう思った
そして、冷静になったから
『ごめんなさい』
と謝った
お兄ちゃんが優しくても傷つけてしまって、自分の最低さを理解した…
だから、お兄ちゃんのようになれへんのやって
そう、思えた
「…んーん、謝れてえらいね
みこちゃんは優しいね、俺は大丈夫だから」
なんて、お兄ちゃんは言う
俺が優しい?こんな酷い言葉をかけたのに?
理解のできない言葉に困惑した
でも、その言葉を言ったお兄ちゃんの顔は
赤い瞳を細めて誇らしいとでも言うような…
そんな表情だった
そんな出来事から数年後
俺は高校生になった
昔、お兄ちゃんに本音を言ったのは小5
今となればあんなことは口が滑っても言えない
だって、お兄ちゃんは…
はじめからあんなにすごい人じゃないってわかったから
お兄ちゃんは、努力して
『絵心・料理スキル・歌の上手さ・頭の良さ』を身に着けたから
努力もできてない俺にあんなことを言える資格などない
それを改めて理解した
「みこちゃん!今日のご飯はハンバーグだよ」
なんてふわふわとした口調で言うお兄ちゃんに
俺は…
『…お兄ちゃん!』
「ん?」
『…俺もお兄ちゃんみたいになってみせるから!』
なんて言ってみる
無理でも、努力は俺だってしたい
「ふふw、みこちゃんはみこちゃんのままでいいんだよ」
なんて、微笑むお兄ちゃん
でも、俺は…なりたいから
お兄ちゃんみたいな
優しくて、かっこよくて、歌が上手くて、料理ができて、絵が上手い…
そんな、最高のお兄ちゃんみたいに!
お兄ちゃんの弟って言っても
お兄ちゃんが恥ずかしくないような
そんな、弟に
いつか、お兄ちゃんの隣りに立ってみせるからな
待っててな
お兄ちゃん
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