テラーノベル
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下に降りて外に出ると、第二王子とクルト王が馬を降りて出迎えた使用人に馬を預けているところだった。 フィル様が薄衣を飛ばされないように胸の前で掴んで、第二王子に走り寄る。
俺はクルト王に警戒しながら、フィル様の後を追った。
「リアム!おかえりっ」
「ただいま、フィー」
「クルト王もお久しぶりです」
「ああ。体調がよくなかったらしいが、大丈夫なのか?」
第二王子に抱きつきながら、フィル様がクルト王に笑いかける。
俺はフィル様のかわいらしい顔を見て、そんなヤツに尊い笑顔を見せなくていいと頭の中で悪態をつく。しかし不満な気持ちが表情に出ていたのか、第二王子が俺を見て苦笑した。
「ラズール、そのような顔をするな。兄上はもう何もしない」
「……左様でございますか」
何もしないと言われても、すぐに信用できるものではない。フィル様は優しいから、どのような悪人であっても許してしまわれるのは、仕方がない。だが第二王子、あなたも許してしまうのか?クルト王にはかなり酷いことをされたと思うのだが?まあ、腹が違うとはいえ兄弟だから、最後には許してしまうものなのだろうか。俺には兄弟がいないから、よくわからぬ。
短く答えた後に無言になった俺に向かって、クルト王が口を開く。
「話には聞いていたが、フィルの元側近は、主だけしか信頼できないようだな」
「…当然です。それに元側近ではありません。今も俺はフィル様にお仕えしています」
「ふーん。リアム、おまえも苦労するな」
「そんなことはない。ラズールは真面目で優れた人物だ」
第二王子の言葉に、俺は無表情で二人から目を逸らしてフィル様の様子をうかがう。
再確認した。俺はバイロン国の兄弟が嫌いだ。弟の方はフィル様の伴侶だから渋々認めるが、兄の方は特に嫌いだ。フィル様に矢を放ち殺そうとしたからだ。庇った俺も死にかけた。
しかし、そんなことよりも病み上がりのフィル様の体調が心配だ。冷えた風に当たりすぎたのではないか。俺がフィル様に中に入るよう促そうとすると、フィル様が俺と第二王子とクルト王の顔を順番に見て、にこりと笑い的はずれなことを言い出した。
「ふふっ、三人が仲良くなって嬉しい」
俺と第二王子とクルト王の動きが止まる。そして一斉に、俺の口から否定する響きが、第二王子の口から伴侶への惚気けが、クルト王の口から攻める言葉が出た。
「は?」
「フィーはかわいいな」
「フィルの目はふしあなか?」
そんな俺達の言葉など耳に入っていないかのように、フィル様は近くにいた使用人にお茶の準備をお願いしていた。
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