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いつもだけど。

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いつもだけど。

1 - いつもだけど。

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2023年03月21日

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「おはよー…」

今日も、リビングへ向かう。


「ぁ、はよー。」

家族が挨拶をしてくれる。

「ごはん、できてるから、早く食べて学校行きなさい?」

いつも通りの朝食。いつも通りの会話。いつも通りの朝。

「はぁーい…」

ゆっくり、席に着く。そして、パンを口に含む。

いつもと同じ味。いつもと同じ材料。

”おいしい”なんて、言わない。

いつもと同じ味だから。いつもそんなこと言ってられないから。


「いってきまーす」

玄関にひとりでに声を出す。”いってらっしゃぁーい”

そんな声が返ってくる。遠くから。


「んん…」

風で揺れる髪。セットしてもセットしても、ずれてしまう。

手が冷たくて、息を吐く。暖かい空気が手を優しく包み込む。

「はぁ…」

カバンからハンドクリームを出そうとすると、

昔のテストが顔を見せた。”19点” 追試が行われたテスト。

親に見せろと言われてるけど…弱1年ずっとバッグにしまってある。

ばれないから。バッグなんて、いちいち確認しないから。

ハンドクリームを両手になじみこませる。ゆっくりと手が摩擦で温まって、しみこんでいく。

クリームをカバンに突っ込むと、リップクリームも出す。

マスクを下げ、口に塗っていく。

ほんのり色のつくクリームは、クラスで流行ってて、買ったもの。

リップをバッグにしまう。気づくと駅が目の前で、急いで財布を出す。


切符を買ってホームに入ると、人がじわりじわりと入ってきた。

”ガタン…ガタン…”

ゆっくり電車が顔を見せる。それを合図に、黄色い線へ向かう。


「ふぅ…」

朝の電車は、満員。でも今日は、何故か少なかった。

少し座席が空いていて、人混みは苦手だけど、いつもより空いていて、安心できた。




「おはよー…」

2時間弱をかけて、ようやく学校につく。いつも通り。

「ぁ、おはよーっ!」

いろいろなクラスの子が返してくれる。いつも通り。

通学時間は長いし、大変で苦痛でしかないけど、

クラスメイトはみんな優しいし面白いから、この高校でよかったと思ってる。


”プルルッ…”

「おいっ、授業中はスマホの電源切れよー。」

…ん?この音…って…

俺じゃんっ!!


「すみませ、ちょっと抜けます。」

「おいっ…!」


廊下をすぐに抜ける。


「もしもし、どちら様でしょうか。」

「○△病院です。_様の携帯でよろしいでしょうか。」

「…ぁはい。」

「お母様が今入院することになりまして、」

「…ぇ」

「よければ、今来ていただけますでしょうか。」

「…ぇ…」


「……はい。」



教授に話を通すと、すぐに病院へ向かった。


「ぁの…」

「ぁ、_様…」


「はい…」

「…__さんの息子さんでよろしいですね。」

「そうですけど…」

「こちらです。」


「…ぁ…母さん…」

「ごめんね…今は元気だから。」

「…よかったよ…っっ」


普段特に話さない。普段”おいしい”も言わない。

それでも俺の事大切にしてくれる。


「…元気でよかったよ…」

わかってるよ。倒れたんだ、お母さんは。

だから、元気なわけないよ。それも入院しているんだから。


「…ふふっ、明日には退院できるから、安心してね。」


”いつも通り”でも、挨拶して、話さないとね。

俺を産んでくれたんだから、一生血がつながってるんだから。





「ん~…!おいしい。」


いつものパンだけど、


「なによw、急に。」

「こーゆーの、大切だなって思ったから。」

「そっか。」


大切だよね。


「あのさっ…これ。」

「…ぇw」


「隠してたんだよ、ごめん。」

「あら、19点w」


「ごめん、ちょっと難しくて。」

「もうっ…w次は、がんばりなさい。」


笑顔のためにも。





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