豪邸の扉を潜り抜け、豪華な家具に囲まれた広間へと案内されたワトリー、カオリ、そしてポテト。
メイドの指示で立派なソファーに腰掛け、しばらく待つと、重厚なドアが静かに開かれ、
メイドに手を引かれた年配のオス猫が杖をついてゆっくりと現れた。
ポテトが先に口を開き、「あなたがバーナードさんですか?」と尋ねる。
バーナードは目元を緩めず、声を低くして答えた。
「はい、そうです」
ポテト「ボクは警察官のポテトです。こっちは探偵のワトリー、えーっと助手のカオリです」
とあいさつした。
バーナード「警察と探偵さんが何か用ですか?」
少し間を置いた後、ワトリーが毅然とした表情で口を開いた。
「バーナードさん、アイドルのシオンを知っているのだ?」
バーナードは僅かに眉を上げたものの、冷淡な声で返した。
「アイドルのシオンねぇ、知っていますが、それが何か?」
ポテトが緊張した声で答えた。
「実は今日、シオンさんが遺体で発見されまして。警察では猫殺事件として捜査しています。」
バーナードは興味なさげに視線を逸らし、「それが私と何の関係があるのかね?」とつぶやいた。
ワトリーは一歩も引かず、まっすぐにバーナードを見つめて続ける。
「あなたは以前、シオンのお客だったのだ。シオンを“天使”と呼び、
羽が散りばめられた部屋でシオンの写真を撮っていたと聞いたのだ。」
バーナードの目が一瞬細まったが、表情はほとんど変わらない。
「プライベートのことはお話できませんよ。」
それでもワトリーは怯まず、「シオンがデビューした後も、
彼女にしつこく付きまとっていたと聞いているのだ。それは事実なのだ?」
バーナードは冷ややかな笑みを浮かべ、吐き捨てるように言った。
「付きまとった? 確かに私はシオンの客だったが、彼女がデビューしてからは何もしていない。
だいたい、シオンの代わりなどいくらでもいる。」
ワトリーは手元の封筒を見つめ、「では、なぜシオンの楽屋に羽の入った封筒があったのだ?」と詰め寄った。
すると、バーナードは鼻で笑い、
「さあ、誰かがそれを使ってシオンを脅そうとしたんじゃないかね。」と答えた。
ワトリーがさらに追求するように問いかける。
「脅そう? なんのためにそんなことをするのだ?」
バーナード「アイドルが高級クラブで働いていたんだ、それなりの脅しには使えるだろう」
ポテト「ではバーナードさんの犯行だと思わせるためじゃなくて、脅しのために
この羽を利用したということですね」
バーナード「そうかもしれないな」
その時、バーナードの視線がゆっくりとカオリに移り、異様なまでにじっと見つめ始めた。
その視線には冷たい執着のようなものが宿っている。ワトリーとポテトはその不気味さに背筋を凍らせ、
二匹とも思わず緊張に身をこわばらせた。
バーナードは視線をワトリーに移し、「ワトリーくん、私はね病気で昨日まで、海外で治療していたんだよ
そんな年寄りに何ができるというのかね」
ワトリー「そうなのか・・・」
ワトリー「でもなぜ脅しだと思ったのだ?」
豪華な応接室で、バーナードは重々しい声で語り出した。
「まあ、今は違うとはいえ、元はシオンの客でしたから、私の知っていることはお話しましょう。」
ポテトが一礼して応える。「ご協力、感謝します。」
すると、バーナードの鋭い視線がカオリに移った。
「その前に、あなた。」低く響く声でバーナードが続ける。
「以前、サーカス団にいましたね。あのサーカス団が廃業してしまったのはとても残念でしたが、
こうしてまた出会えるとは、奇跡のようなものだ。」
ワトリーは強い口調で言い返した。「カオリはもうあの頃のカオリじゃないのだ!」
だが、バーナードは冷たい笑みを浮かべ、
「お話を続けるかどうかは、カオリさん次第ということになりますね。」とつぶやいた。
ワトリーが身を乗り出し、抗議する。「そんなこと、絶対にだめなのだ!」
バーナード「では、お話はここで終わりです。」
ポテトが必死に食い下がる。「待ってください、シオンさんは亡くなっているんですよ!
何か知ってるなら話してください!」
バーナードは涼しげに答えた。「だからこそ、カオリさん次第だと言ったでしょう?」
ワトリーは立ち上がり、声を震わせた。「もういいのだ! カオリを危険な目に合わせることはできないのだ!」
バーナードは目を細め、不気味な笑みを浮かべた。「危険な目?なるほど、あなたはまだ知らないのですね。」
ポテトが尋ねる。「いったいカオリさんに何をしようというんですか?」
バーナードは、悪びれもせず言った。「私は何もしませんよ。」
それでもワトリーはカオリの手を取って、「帰るのだ!」とその場を離れようとした。
しかし、カオリは小さな声で、「わ、わたし…だいじょうぶ…」とつぶやく。
ワトリーは心配そうに彼女を見つめ、「大丈夫じゃないのだ!」と言い返した。
カオリは頷きながら、ワトリーの手をそっと離した。「ワトリー、信じて…」
バーナードが満足そうに微笑み、「さあ、カオリさん、あちらの部屋へ。」と促すと、
メイドがカオリを連れてその場を離れていった。
ワトリーが駆け寄ろうとした瞬間、バーナードは杖をすっと持ち上げて前に出し、
低い声で言った。「大丈夫です、彼女に危害を加えたりはしませんから。」
ポテトがワトリーの肩に手を置いて静かに言った。
「ワトリー、カオリを信じよう。エイミーを助けるためなんだろう?」
ワトリーは涙目で震えながら、バーナードを睨みつけた。
「それなら、シオンについて、すべて教えるのだ!」
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