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ジョセフは考えていた。あのイザベラの様子、どうもおかしい。
あの冷静さには、何か隠された意図がある。やはり裏で何か取引をして、
サリーを使って儲けているのかもしれない。金の匂いがする。
ジョセフの長年の悪しき感覚が働いていた。もし儲けているのなら、自分もその恩恵にあずかろう。
そんなよこしまな考えが巡り、彼はイザベラの後を追いかけた。
イザベラが歩いているのを見つけ、ジョセフは軽い足取りで彼女に近づいた。
「何か用ですか?」イザベラは少し苛立ちながら振り返った。
ジョセフはにっこりと笑って答える。
「いえ、ただね、サリーはずいぶんあなたのことを信頼してるようですね。」
イザベラは一瞬、微妙に表情を変えた。
「ええ、私はデビュー当時からこのグループの担当ですから、みんな妹のような存在です。」
ジョセフは軽く頷きながら、少しずつ話を進めた。
「そうか。シオンも妹のようにかわいがっていたのか?」
「もちろん。」イザベラは言葉を濁すことなく答える。
ジョセフはその答えに不信感を抱きつつ、さらに追及する。
「シオンが亡くなってしまって…でも、
センターが変わるからって嬉しそうにしてるメンバーもいたぞ。」
イザベラの表情が一瞬硬直した。「なんですって!?」
ジョセフはその隙を見逃さず、鋭く切り返した。「どうやらサリーが次のセンターになるんだろ?」
イザベラは言葉に詰まり、視線を逸らしながら言った。「なによ、まるでサリーが喜んでいるとでも?」
ジョセフは冷静に続けた。
「しかし、脅しに使っていた羽をサリーが持っていたとなれば、
警察もサリーを疑うしかないんだよ。」
「サリーが持っていた!どうしてサリーが羽を?」イザベラは目を見開き、驚きと動揺を隠せない。
「さあ、その羽でシオンを脅したんじゃないか?」
「そんなバカな!」
ジョセフは冷笑を浮かべて答えた。「サリーはセンターの座を狙ってシオンを…」
イザベラは激しく反応し、ジョセフの言葉を遮った。「それは違うわ!」
その声は思わず大きくなり、周囲の目を引くほどだった。
しかし、ジョセフは全く動じることなく、さらに追い詰める目を向けた。
ジョセフにとって、犯猫を逮捕することよりも自分の利益が最優先だった。
このままイザベラを脅せば、金にありつける、そう考えていたのだ。
彼の目は冷徹で、イザベラに迫るその表情は、まるで交渉を重ねるビジネスマンのようだった。
「このままではサリーに疑いがかかるんだよねぇ。」ジョセフはゆっくりとした口調で言った。
「せっかくセンターの座が見えたってのに、このままだと容疑がかけられて、人気はがた落ちだ。」
イザベラはその言葉に動揺し、思わず声を荒げた。「サリーは何もしてないわ!あの子の夢を奪わないで!」
ジョセフは冷ややかな目でイザベラを見つめた。
「夢?それはあんたの夢だろう。サリーはそんなこと望んでないはずだ。」
イザベラは言葉に詰まり、動揺を隠せなかった。ジョセフはその隙を見逃さなかった。
「何が言いたいのよ?」イザベラは怒りを押し殺しながら問い返した。
ジョセフはにやりと笑って言った。
「全部話したら、サリーは警察には連れていかないよ。ずいぶんサリーで儲けているんだろう?
センターが変わるんだ、スポンサーも今ごろ大忙しだろう」
ジョセフはあたかも知っているように振る舞い、イザベラの心を揺さぶった
その言葉が重くのしかかり、イザベラは一瞬、視線を落とした。
「・・・分かったわ。」イザベラの声は小さく、そして諦めのような響きがあった。
ジョセフは心の中でほくそ笑んだ。(フッ、落ちたな。)
イザベラはバッグから小さなメモリーカードを取り出し、ジョセフの目の前に突きつけた。
「これよ。でも言っておくけど、あなたが期待して
いるようなものは何も映ってないわ。」その言葉には苛立ちと諦めが混じっていた。
ジョセフは眉をひそめながらメモリーカードを受け取る。
「ほう…どんなお宝が入ってるんだ?」内心は何かしらの決定的証拠を期待していた。
イザベラが手早くパソコンを立ち上げ、カードのデータを開くと、写真のサムネイルがずらりと並んだ。
「これは…?」ジョセフが画面を覗き込むと、そこにはメンバーたちの舞台裏の写真が映し出されていた。
楽屋で談笑する姿、リハーサルに集中する表情、衣装合わせ中の自然な一コマ――どれも仕事の
裏側を切り取った微笑ましい瞬間ばかりだ。
だが、写真のほとんどはサリーに焦点が当てられていた。
ジョセフは不思議そうに画面を見つめた。「これが何だっていうんだ?」
イザベラは深いため息をつきながら答えた。
「これは、私が内緒で撮影して売っていたものよ。公式には出せないオフショットを、
ファンの間で限定グッズとして販売していたの。サリーを推してたから、
彼女の写真が中心だけど、シオンはほとんど撮ってないわ。」
ジョセフは目を細めた。「…えっと。サリーのことをセンターにして
スポンサーと契約してるんじゃないの?」
イザベラは苦笑いを浮かべた。「そんなわけないでしょう。小遣い稼ぎ程度よ。
それに、スポンサー契約だの賭けだのって話、何を言ってるの?私はただのメイクよ。
スポンサー契約なんて社長でもなければできるわけないじゃない。」
ジョセフはその言葉に肩の力が抜けたように、「…ああ、そうか。そりゃそうだな。」
自信満々に追い詰めたつもりが、あっさりと外された拍子抜け感が、彼の表情ににじんでいた。
イザベラは冷めた目でジョセフを見つめる。「満足したなら帰ってくれる?こっちは忙しいの。」
ジョセフは肩を落としその場を去ろうとした(チッ。帰ろ)
ジョセフはふと足を止め、「ちょっと待て。じゃあ、あの羽の件はどうなんだ?」
イザベラの顔色が変わる。しばらくの沈黙の後、口を開いた。
「…それは、私よ。お弁当の袋の中に入れておいたの。」
ジョセフの目が細くなる。「つまり、シオンを殺したのもお前ってことか?」
イザベラは大きく首を振った。
「それは違う!私はただ…ちょっと脅かしてみただけよ!」
ジョセフは腕を組み、静かに問い詰める。「だから、シオンにお弁当を食べるよう促したんだな?」
イザベラは下を向き、力のない声で、「・・・はい」