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結局何の成果も得られないまま、1日の捜索が終わった。

夕方になり、アリエッタはピアーニャを抱きながらウトウトとしている。どうやら絵を描き疲れたようだ。


「相変わらず仲が良いのよ」

「どこをどうみたら、そうなる……」


パフィは持ってきた食材で料理を準備し、テーブルとして使っている岩に並べていく。ラッチの分だけは石類が盛り付けてあるだけである。

そしてミューゼがどんよりと落ち込み、ラッチが心配そうにしている。


「総長さんあのぉ……フェリスクベ…じゃなかった、ミューゼオラ様はどうしたんですか?」

「んー? マホウがうまくいかなくて、ヘコんでるんだ。ゴハンたべればもどるだろ」

「はぁ……」


途中でミューゼからの圧を感じて名前を言い直したが、敬称だけは頑なに取りたがらないラッチは、結局慰める方法は分からず、オロオロし直していた。

ミューゼは1日中ピアーニャの指導で探知用の魔法を練習していた。周囲を探知するには、魔力を広範囲に拡げるという技術が必要となる。しかしこれまでそういう操作をする機会が無かったせいか、ミューゼは魔力を周囲に拡げるという技術は全く身についていない。それどころか、どれだけ意識してみても、手の届く範囲から先へは拡がらなかった。


「かえったらテリアにきいてみるが、おそらくそういうサイノウがないんだろうな」

「うぐぅ……」


魔法が使えないハウドラント人とはいえ、長い間ファナリアに住んでいれば、それなりに魔法の知識は備わっている。もちろん知識面のみという限界はあるが。そんなピアーニャに才能が無いと言われ、さらにドンヨリと落ち込んでいくミューゼ。


「ヒトにはトクイとフトクイがあるからな。マリョクほうしゅつはダメだが、そのかわりなにかをソウサするマホウは、テンサイてきだ……とはいったのだが、ナットクできないらしくてなぁ」

「うーん? それって木を操るとかに関しては、ファナリア人の中でも天才だって事ですか?」

「うむ」

「それもう全てのクリエルテス人にとって、神の領域なんですけど!?」

「だろうな」


ラッチの中で、ますます神格化が進むミューゼであった。

探知に必要な魔力操作が使えない以上、ここでの捜索は難しい。腹を満たした一行は、明日は少し調べたら早々に切り上げる事にし、のんびりと過ごしていた。


「ところでアリエッタの絵は出来たのよ?」

「そういえばみてないが……いまかいてるな」

「…………ふんす」


少し暗くなり、ミューゼが落ち込みながらも、明るい実をつける木を出していた。その下でアリエッタが絵を進めている。


「ホント、ショクブツのマホウにかんしては、ファナリアいちかもしれんな……」

(あとちょっと。なんかみゅーぜ落ち込んでるし、今すぐ仕上げてやる)


景色は見えにくくなっているが、既に最後の調整へと入っていた為、そのまま完成させるつもりのようだ。

ミューゼもアリエッタの傍にいる事で落ち着いてはいるが、今は魔力操作について悩んでいる。

そんな初歩的な事がままならないミューゼの魔法だが、実はピアーニャの中では評価がかなり高い。というのも、植物を使う魔法の使い手はそもそも希少で、なおかつヨークスフィルンで見た程の大規模な木や、家事に使える程の繊細な操作が出来る者は、ミューゼの他に知らないのである。

さらにそれ程強力ではないが、火や水も使い、治療まで可能。ここまで出来れば、シーカーにとってはかなり貴重な人材となる。しかも最若の新人で将来性も十二分にある。という事で、総長としては例えアリエッタという天敵がいたとしても、絶対に逃したくないのだろう。


「……これはしっかり、そだててやらないとな。テリアにたのむか、ククク」


ミューゼの魔法に師匠として、ネフテリアが選ばれた。魔法の腕と知識は最高クラス、そしてミューゼの事が大好きな暴走王女。いろんな意味で適任である。もちろん子供扱いに対する復讐のネタとしても。

コッソリと嫌がらせ計画を立てた所で、アリエッタが立ち上がった。


「あら、出来たのよ?」

「できたー!」


完成した絵を掲げ、やり切ったと言いたげなドヤ顔を見せるアリエッタ。そのまま近くにいるミューゼへと絵を差し出した。


「みゅーぜ!」

「うん、頑張ったねーヨシヨシ」

「にへ~」


アリエッタの蕩ける笑顔で、ミューゼに少し元気が戻った。


「きっとアリエッタの絵を見たら元気が出るのよ」

「だな」

「ほう。絵という物にはそのような奇跡の力が……やはり神に仕える者は只者ではないリムな」


よく分かっていないラッチがよく分からない事を言っているのを聞き流し、ミューゼに見せてもらえるのを心待ちにするパフィとピアーニャ。

しかし、絵を見たミューゼの様子がおかしい事に気付く。驚いて感心するのではなく、茫然として震えているのだ。


「……どうしたのよ、ミューゼ」

「なにがかいてあるのだ?」


その問いに、なんとか反応したミューゼが、アリエッタの方にゆっくりと顔を向けた。


「アリエッタ!? これどーゆー事!?」

「?」


絵を指差して問いかけるが、そんな言葉は習っていないアリエッタは、当然言っている意味が分からず首を傾げるだけ。もちろん答える事も出来ない。


「おちつけミューゼオラ。とりあえずみせてみろ」

「あ、はい」

「ん-、どれどれ~……えっ……」


混乱していても素直なミューゼから絵を受け取り、それを見たパフィとピアーニャが、ピシリと固まってしまった。

ミューゼと似たようなリアクションをする2人を不思議そうに見るアリエッタとラッチ。


「どういう事だ? 元気とは程遠いようだが。まさか、その絵には暗黒の力が宿り、見る者を混沌へと誘い込むとでもいうリムか?」

(もしかして僕、また何か描いちゃいました?)


ラッチの言っている事に、深い意味は何も無い。ただ何かリアクションをして、それっぽい事を言いたかっただけだった。

絵を描いた当の本人は、初めて見る景色をそのまま描いていただけなので、おかしいかおかしくないかという違いは全く分からない。とりあえずリアクションの続きを待つだけである。

少し経ってから、動きを止めていた3人がゆっくりと顔を見合わせた。そして……叫んだ。


『えええええええええええ!?』

「ひゃうっ!?」(びっくりした!)

「わぁっ! いきなり何!?」


いきなりの絶叫で思わず驚いてしまうアリエッタ達。

しかしミューゼ達には気に掛ける程の余裕が無い。叫んだ後も動きを止めて、絵を食い入るように見ながら小声で話し始めた。


「お、おい。アリエッタはこいつをしっているのか?」

「飛んでる鳥の事は時々見てるけど、『鳥』っていう言葉はまだ知らないのよ」

「うん、教えようとした時に飛んで行っちゃったし」


ピアーニャが指し示しているのは、絵の中心近く…遠くにある大きめの水晶の上。そこには体の一部が半透明の鳥が描かれていた。何故か片翼を広げ、片足を出っ張った箇所に乗せ、ポーズをとっている。

鳥が絵に描かれているという事は……


「これって、アリエッタはずっと鳥を見ていたって事なのよ?」

「だよな? なんでおしえてくれなかったんだ!」

「いや、そもそも何しに来てるかも知らない筈なのよ」

「うおお! なんでコトバをしらないんだあああ!」

「あはは……」


ミューゼが苦笑いをし、パフィが呆れた顔で絵を眺め、ピアーニャがガックリと四つん這いで項垂れてしまった。

ずっと探していた目標なのに、よりによって何も知る事が出来ないアリエッタがずっと目視していたとなると、今までの自分達の行動はなんだったのかという、やるせない気持ちになってしまう。落胆の仕方はそれぞれ異なっていたが、最後に一斉に大きなため息をついていた。

心配になったアリエッタが、ピアーニャに近づこうとするが……


「あっ、ぱひー」

「うん?」


足を止めてパフィの背後を指差した。

声をかけられたパフィ達がその先、自分達の後ろを振り返ると、絵を覗こうとしているのか、クチバシのある首の長い頭が左右に揺れていた。


「えっ」

「あ?」

「なっ……」


3人は一瞬何を見たのか分からず、ちょっと声が出ただけで再び固まってしまった。

正面でそんな顔をされたその相手は、いま気づいたかのように覗く動きを止め、ピアーニャと目が合った。その瞬間──


『とりいいいぃぃぃぃ!?』


固まっていた3人が思いっきり叫んだ。いろんな意味で驚いている様だ。

大きな鳥も、いきなり叫ばれて驚いている。

そしてそんな鳥に、駆け寄る者がいた。


「あ、おっちゃん。えーと、この様な場所に現れて、何事リムか?」

『おっちゃん!?』


大きな鳥の捜索中に出会っていたラッチである。

楽しそうに話しかけている事に、3人はまたしても驚き声をあげていた。

すると、大きな鳥は軽快な足取りでラッチに近づき、気楽に話しかけた。


「おう! ちょっと気になったんでな。来てみたら本当に面白そうなモンあるしよ」


突然現れた大きな鳥の言葉に、ミューゼ達は目を見開いた。状況の整理が追い付かないのか少しだけ口を開けて唖然とし、そして──


『シャベッタアアアアアアア!?』


これまでの絶叫を超えるボリュームで、思いっきり叫んでいた。

からふるシーカーズ

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