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花月夜れん
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「俺も行かなくていいのか?」
エラリスの眠る宿の室内。部屋を出ようとしているフィニスとニティアにルシオが問いかけた。
「あんた、静波の葉分かるの?」
ジト目でルシオを見るニティア。
「いや……分からないけど……」
「だったら俺らに任せてくれ。良く薬草採取の時に毟ってて、俺らは良くわかってるから」
「毟ってるって言うな」
ぺちんとフィニスの背中を叩くニティアに、呆れ顔になるルシオ。
「それにルシオ、ヴェスパやティアシャへの状況報告とか、最近できてないだろ?」
「まぁな……。それじゃジズナミノハ?の採取は任せるよ」
「任せなさい。アルテアも、エラリスのこと……よろしく頼むわね」
小さな胸に腕をトンと押し当てたニティアは、エラリスの隣に座っているアルテアへ視線を送った。
「はい、こちらも任せてください。ですが、くれぐれも無理はなさらぬように」
「おうよ!」
そう言い残し、ニティアとフィニスの2人は部屋を後にしていくのであった。
⸻
「とは言ったものの……あのばぁちゃん、この辺では見かけないって言ってたよな」
宿を出てすぐ。フィニスはニティアへ問いかけた。
「フィニス。静波の葉が採れてた場所……どんなところだったか覚えてる?」
ニティアに言われ、昔よく薬草を採取していた場所を思い出すフィニス。
「えぇ……そんな場所なんて気にしてなかったからな……」
目を閉じて眉間に皺を寄せ、過去を遡るフィニス。
ニティアとジャヌスの3人で採取した日。
ニティアと2人で採取した日。
イタズラをして怒られ、1人で採取をした日……
何かを思い出したのだろう。フィニスはゆっくりと目を開けた。
「確か、川とか湖みたいな……水辺の近く……しかも木々に覆われているようなところじゃなくて、開けた場所だった気が……」
その答えに小さく頷くニティア。
「そ。静波の葉は綺麗な水辺。そして明るい場所に生息するの。そもそも……この辺りは砂漠化が進んで、水辺が少なかったからね。でももしかしたら……」
「……オアシスか!」
ふっと笑うニティア。
「この間作ったオアシス。あそこは綺麗な水。そして植物が育つような土壌を精霊達と力を合わせて作り上げたでしょう?そして元からこの辺りは十分明るいから……」
「条件は満たしているわけか」
「ええ。あの時は薬草が生えているかなんて見てなかったし、それに……あれから数日経っているからね。精霊達が綺麗な環境を作る一環で新しい植物が生えている可能性もゼロではないでしょ?」
「それじゃあいつらに聞けば……ってそうか」
「その精霊を呼び出すエラリスを助けるために探さないとだからね」
しばらく2人が視線を合わせると、フィニスは両手で自分の頬を軽く叩いて気合いを注入する。
「よし!それじゃ精霊術師様のために、行きますかね」
それを見たニティアも力強く頷いた。
「ええ。行きましょう」
⸻
エラリスを助けるため、時間が惜しいニティアとフィニス。しかしながら空を飛ぶには暑く、そして視座を遮るものが何もない砂漠では目立ちすぎるため、地面スレスレの超低空でオアシスまで飛ぶ2人。
「随分と低いけど……」
「こんな所で飛んだら目立つでしょ!」
「いや違う。高さはさておき、こうやって2人で飛ぶのなんか懐かしいなと思ってさ」
フィニスの言う通り、2人で旅をするようになってからは、周りの景色や人をゆっくりと見ながら旅をするのが好きだった……というジャヌスの言葉もあり、歩いて旅を続けていた2人。
つい最近まで、村や街へ行き来していた2人。まるで遥か昔のよう……子供の頃を思い出すような無邪気な笑顔をニティアへ向けるフィニス。その顔を見て、顔が火照ったニティアは、フィニスから視線を外す。
「そ、そんなことより、もう着くわよ!」
「お、本当だ。なんか木っぽいのが見えてきたな」
視線を前へ移す2人。フィニスの後ろを飛ぶニティアは、フィニスに聞こえない小さな声でポツリと呟いた
「なんか暑いわね……」
急に暑くなった顔の周りを、ニティアはパタパタと手で仰ぎ続けていた。
コメント
1件
あー、このエピソードめっちゃ良かったわ!ニティアとフィニスの2人で飛ぶシーン、めっちゃ懐かしさ感じさせる描写でグッときた。「なんか暑いわね」って照れ隠しするニティア、可愛すぎるだろ!エラリスのためにオアシスに静波の葉を探しに行く展開も、前の話で作ったオアシスがちゃんと活きてて良い伏線回収だったわ。2人の距離感がじわじわ縮まってる感じ、最高だわ🔥