テラーノベル
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オアシスに大分近づいたあたりで飛行魔法を解くニティア。
「ん〜!やっぱり飛んでいくと大分速いな」
地面に着地した瞬間、身体を一度大きく伸ばすフィニス。
「今回は特別!前に通った道だし、道のりも砂漠だけで何もないだろうし……何よりエラリスが大変だから飛んだだけ!」
「ちぇっ……」
「……でも」
照りつける日光や吹き荒れる砂埃から身を守る布を改めて身体に巻き直すニティア。
「散歩がてら……たまにならいいけどね」
顔を隠すよう、いつもより多く頭や顔に布を巻き付けると、そのままオアシスに向けて歩き始める。
そんなニティアの背中を見て笑いながら、フィニスもまた布を全身に巻き直し、ニティアに続いていった。
⸻
「人間ってすげぇな……」
オアシスに到着するや否や、感嘆の声を上げるフィニス。
驚くのも無理はない。先日までただの坑道だった場所がオアシスになったばかりにも関わらず、数日後には桟橋やそれに繋がった船。そして小さな小屋も数件立っていたのだ。
「ほんとね……」
同じように立ち尽くすニティア。しかし、次の瞬間にはすでに辺りをキョロキョロと見回し始めるフィニス。
「どうかしたの?そんなキョロキョロして」
「いや……」
そう言いながら、オアシスの水面を覗き込んだフィニスが小さくため息をついた。
「リヴァレーやモラティがいれば、静波の葉の有無を教えてもらえると思ったんだけどな……」
「あの子達、どっちかというと安定した場所というよりも、浄化が必要な場所にいることが多いイメージだしね。ここはもう綺麗だし、人の往来も多くなってるからいないのかも」
「……だな」
項垂れるフィニスと、それを見て小さく笑うニティア。すると……
「あ、フィニスおにいちゃんとニティアおねぇちゃん!」
声の方を振り向くと、そこには笑顔で大きく手を振っているリヴの姿があった。
「え!リヴちゃん!?」
「お、まじか」
ニティア達が気づいたことが分かり、駆け寄ってくるリヴ。
オアシスとは言え、そうそう子供1人で来れる距離では無い。腰を下ろしてリヴに視線を合わせると、ニティアは驚いた様子でリヴに話しかけた。
「こんなところでどうしたの!」
「えっと……しいれ?のおてつだいできたの!」
「仕入れってことは……おばちゃんも来てるのか?」
フィニスもニティア同様にしてリヴに視線を合わせると……
「こらリヴ!勝手にウロウロするんじゃ無いよ!」
聞き覚えのある元気な声が、リヴの後方にある小屋の方から聞こえてきた。
「あら、あんた達!一体どうしたんだい!?」
「よっ」
声の主はリヴの母親である店主であった。フィニス達に気づき、驚いた表情の店主。
店主に気づいた2人は身体を起こし、フィニスは片手を軽く上げて店主に挨拶を。ニティアは軽く会釈をした。
「おかーさーん」
てくてくと母親の元へ駆け寄るリヴ。2人もリヴの後に続き、店主の元へ向かっていく。
「おばちゃん、こんな所で何してんだ?」
「それはこっちのセリフだよ!私はここで取れる魚や木の実を見にきたんだよ。店で使えそうならオアシスの管理局に申請をして卸してもらおうと思ってね」
「商人魂ってやつだな……ここにくるのだって大変だろうに」
「リヴちゃんを連れてくるのも一苦労だったんじゃないですか?」
灼熱の暑さに、歩くのも困難な砂地。魔族がいなくなり、比較的魔物の出没も減ってきたとは言え、大人であっても簡単に来れるような距離では無い。リヴのような小さな子供は尚更である。
そんな疑問を店主にぶつけると、リヴは目を輝かせながらニティアに答えた。
「お馬さんに乗ってきたんだよ!」
「馬って……こんな砂漠を馬車で?」
フィニスが首を傾げると、店主は小さく笑いながら答えた。
「あぁ……街がこの商業価値のあるオアシスへのルートを開拓し始めてね。今では定期的にデューンホースで行き来できるようになってるんだよ」
「足腰が強くて……確か砂地であっても速度を落とさずに走れる馬ですよね?よくそんな珍しい生き物を……」
「それだけ街も復興に必死ってことさね(笑)。それよりも、あんたらこそこんな所でどうしたんだい」
店主の言葉で、リヴとの再会で忘れていた目的のことを思い出した2人。一度視線を合わせた後、店主にこれまでの経緯を話すことにした。
⸻
「なるほど……あの精霊術師の嬢ちゃんを助けるために、ここに薬草を探しにきたと……」
腕を組みながら、ニティア達の話を聞く店主。
「この辺で静波の葉……あのスースーする匂いの草見なかったか?」
「スースーって……あんたくらいしかそんなの分からないわよ。背が低い割に、葉が波打つような形をしている、他にはあまり見ないような形の葉をした草なんですが、心当たりありませんか?」
2人が店主の方を見ると、店主は少しだけ困ったように笑いながら2人に答えた。
「それなら私も知っているし、多分生えているよ」
「本当ですか!?」
「ただ……」
店主がはるか遠いオアシスの向こう側を指差した。
「「え?」」
目を細めて指差された方向を見る2人。
反対側には小屋や桟橋は無い。モラティやリヴァレーの力の影響もあり、魔力が豊富なためか……短期間でありえないほどの植物が生い茂っていた。
じーっとその植物を見ていたフィニスが、草の不自然な揺れを捉える。
「ん?……あれは……」
「何が見えたの?」
ニティアの声を無視し、さらに不規則な揺れを目で追うフィニス。その正体が見えたのか、ふっと笑った。
「サンドボアか……」
「へ?」
フィニスの言葉に首を傾げるニティア。
「あのイノシシがね。うちらも食べられるような植物や木の実。さらには浅瀬にいる魚まで食べちまうもんだからさ。私らも困ってるんだよ」
ため息をつく店主。
「あいつらは確か……砂の中にも瞬時に隠れちまうから中々捕まえられないし、確か砂漠の気候にも適応して皮膚も硬いんだったよな」
「なんであんたそんなこと知ってるのよ……」
「いつか旅立った時に役に立つかもしれないと、食える動物は頭に叩き込んである」
親指を立てるフィニスに、ニティアは一瞬あきれたが、この時ばかりはその知識に感謝していた。
「まぁそういう事だね。多分あの辺を探せばその薬草は見つかると思うけど……成熟する前にあいつらに食われちまうのさ。それにあいつらは群れで行動する。おそらくあいつらのボスがこの辺を縄張りにしちまったんだろうね……」
それを聞いたフィニスが、何かを考えるように一瞬だけ視線を上に泳がせていたが、すぐにニティアに向き直し、ニヤリと笑った。
「なぁニティア……せっかくだから久しぶりにアレやろうぜ」
コメント
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ああ、この話、すごく好きだな……。まず飛行魔法を「特別」と言い訳しながらも使うニティアと、残念がるフィニスのやりとりがもう微笑ましい。それに、たった数日で坑道がオアシスに変わってる世界の復興スピード、ちゃんと感じ取れる描写がいい。リヴと再会したときの「おにいちゃん」「おねぇちゃん」って呼び方、心が温かくなった。そしてサンドボア。あの「アレやろうぜ」ってニヤリ笑い、絶対に何か面白い作戦があるんだろうな。次の展開が待ち遠しいよ。
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花月夜れん
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