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「……うん」
「私だけを好きでいるって、柊君は……無理だと思うよ。仕事に一生懸命な柊君は、私1人を好きでいることにストレスを感じるより、いろんな人と自由に恋愛した方がいいんだと思う。きっと……」
私、今ならそう思える。
でも、これって、私なりの小さな仕返しなのかな?
意地悪だよね、すごく。
本当に……意地悪。
ごめんね、柊君――
「僕は柚葉がいなくなってから、1番大事な人は柚葉だって、改めて思い知らされたよ。寂しくて悲しくて……。その分、仕事に専念しようって決めたけど、その寂しさを紛らわせたくて、また誰かに会いたくなって……。でも、もし柚葉が側にいてくれたら、今度こそ君だけを愛せる気がするんだ」
柊君……そんなの勝手だよ。
もし、また、私以外の人に会いたくなったら、あなたはどうするつもりなの?
でも、それが柊君の恋愛感。
今の言葉も、ものすごく頑張って出した答えなのかも知れないけど……
やっぱり、私、怖いよ。
また、あんな暗闇の中に落ちるのは……
あの時、そこから救い出してくれた樹がいたから、私は何とか這い上がれた。
今の私には樹がいる――
「ごめん、柊君。私、今は……」
でも、言えなかった。
樹を好きだって……
「僕は柚葉を諦められない。勝手だってわかってても、樹が柚葉を好きだって知ってても、毎日寂しくて寂しくて仕方ないんだ」
目を潤ませる柊君を見るのはつらかった。
だけど……
「そんなこと言わないで。私はもう前みたいに柊君を愛せないよ。やり直しなんて絶対にできない」
その時、柊君のスマホが鳴った。
相手は、樹だったみたいだ。
「もしもし樹? うん、今、柚葉といる。話したいことがあったから」
柊君は、樹にそう言った。
「ああ。この前、樹が柚葉を好きって聞いて、僕は応援するつもりだった。でもやっぱり、僕は柚葉を愛してるんだ。だから……もう一度、やり直したくて」
スマホの向こうの樹は、何と言ってるんだろう?
ものすごく気になった。
「……わかった。今夜、マンションに行くよ」
柊君はそう言って、スマートフォンをカバンに入れた。
「仕事が終わったら、樹のマンションに行ってくるね。話し合ってくるよ」
樹を好きだってことも、一緒に住んでることも……
今ここでちゃんと言えばいいのに、なぜか言えなかった。
柊君を悲しませたくない――
それは、私の柊君への同情なのかな……
全てを話せばショックを受けるだろうか?
それとも諦めてくれるだろうか?
色んな思いが頭を駆け巡る。
柊君にとって、樹は大切な家族。
弟と元婚約者が、自分と別れてすぐに付き合ってるなんて、きっと驚いてしまうよね。
でも今夜、柊君がマンションに来たら全てがわかる。
それで……良かったのかも知れない。
その時に全て知ってもらおうと思う、私の正直な気持ちを――