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私の『パーフェクト・マップで迷子に』事件は、学園祭の準備に致命的な遅延を生じさせた。

3時間分の遅れは、後工程に深刻な影響を与えていた。


放課後、クラスで緊急ミーティングが開かれた。

かぐやは私の目の前で、淡々と、しかし容赦なく、私の失敗がもたらした損害を報告した。

「花千夢の行動により、備品の搬入が予定より3時間遅れたの、この遅れは、その後の内装と試運転の時間に響く。私は徹夜で内装計画とシフトを修正するけど、明日は全員、始業前の7時には登校して、飾り付けを終わらせて、」


かぐやの冷静な声が教室に響く。

誰も私を責めるような視線は送らない。

ただ、その沈黙と、かぐやの完璧な危機管理能力が、私を責め立てる十分な力を持っていた。


(まただ。また、かぐやの足を引っ張った。私、お姉ちゃんなのに…完璧な妹の邪魔しかできない。)

「ご、ごめん、かぐや。私、本当に、わざとじゃなくて……その、地図の読み方を間違えて……」

私は唇を噛み締めながら、かぐやに謝罪した。

かぐやは私の方を向いた。その瞳は、いつもの穏やかさとは違い、微かに疲労の色を帯びていた。

「わかってるよ、花千夢。わざとじゃないのは。でも、貴女の『勢い』は、ときに周りの全てを巻き込んで、計画を破壊する、今回のことではっきりわかったでしょう?リーダーとして、もう少し、自分の感情を制御することを意識して」


その「制御」という言葉が、私の心の中のマグマを爆発させた。

「制御……制御って、何なの!?」私は立ち上がり、勢いよく机を叩いた。


教室中の視線が、私とかぐやに集まる。

「私だって、お姫様みたいに、**かぐやみたいに…!**静かに、優雅に、完璧にやりたかったよ!でも、できないんだよ!私はいつも糸を絡ませて、水をこぼして、地図を見て迷子になる!それが私なんだよ!制御なんて、できるわけないじゃない!」

私の声は、涙で震えていた。長年の劣等感が、堰を切ったように溢れ出す。

「かぐやはいいよね!何でも完璧にできるんだから!ミスなんてしないんだから!

私のこの不器用で、コントロールできない気持ちなんて、わかるわけないじゃない!」

「かぐやは、いつも私を見て笑ってくれるけど、その優しさは、全部『お姫様のフリ』でしょ!『このドジな姉は、私がいないとダメだ』って、優越感に浸ってるんだよ!その完璧な光が、いつも私を照らして、私の影を濃くする呪いにしか見えないんだよ!」

私は涙を拭うこともせず、かぐやを指さした。


「私を完璧にできるあなたには、私のこの、不器用で、ドジで、誰にも尊敬されない気持ちなんて、

永遠にわかるわけがない!


私が最後の言葉を吐き出すと、教室は絶対的な静寂に包まれた。

かぐやは、一瞬、目を見開いた。

その顔から、いつもの穏やかな表情が完全に消え去り、代わりに痛みに歪んだ、幼い表情が浮かんだ。

彼女の唇が震え、何か言い返そうと開かれたが、声は出なかった。


「……ごめんなさい、かちゅ」


かぐやはそれだけを絞り出すと、手に持っていた企画書を落とし、教室を飛び出して行った。

彼女の去る背中は、まるで軌道から外れた流星のように、不安定に揺れていた。


私は、息を乱しながら、その場に立ち尽くした。言ってしまった。一番言ってはいけない、感情的な言葉を。

「かちゅ……やりすぎだよ。輝夜乃、泣きそうだったぞ」

陽太が、静かに言った。


私は何も答えられなかった。心の奥底で、妹のあの痛みに歪んだ表情が、チクチクと私を責め続けていた。

夜空の衝突点。

私は、妹の完璧な軌道を、大きく狂わせてしまったのだ。

【第8話 終了】

彗星のかちゅと北極星のかぐや

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