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四月十九日……ミノリ(吸血鬼)は夢の中でもう一人の自分……『闇ミノリ』と戦っていた。


「こらー! 待てー!」


「へっへーん、待てって言われて待つやつなんていないよー」


ただいま、白い空間の中でミノリ(吸血鬼)と闇ミノリ(全身真っ黒)が同じところをグルグル回っています。

果たしてこれが戦いと呼べるのでしょうか?

まあ、戦いは変幻自在かつ多種多様ですから、これも一種の戦いなのかもしれません。


「もうー! ちゃんと戦いなさいよー!」


「えー、やだよー。無駄に体力消耗したくないもん」


「はぁ? あんた、本当にもう一人のあたしなの? あたしはそんなこと一度も言ったことないわよ?」


「そんなの知らないよー。あたしはずーっとここにいるからねー」


「そう……。なら、とっととここから出ていきなさい!」


ミノリ(吸血鬼)はそう言うと、右手の親指の先端を噛《か》んで出血させた。

そして、それを【日本刀】にすると、彼女に斬《き》りかかった。


「どおおおおりやあああああああああああああ!!」


ミノリ(吸血鬼)の刀が彼女の脳天に当たる直前、彼女はそれを右手の人差し指と中指だけで受け止めた。


「はぁ……なーんか期待外れっていうか、とてもあたしとは思えないほどの弱さだねー」


「な、なんですって? あたしが弱い? バカ言わないでよ! あたしは『吸血鬼型モンスターチルドレン|製造番号《ナンバー》 一』なのよ? 零《ぜろ》番には劣《おと》るけど『強欲の姫君』の力を宿しているから弱いわけないわ!」


「うーん、でもあたしにとっては、この刀の重さは爪楊枝《つまようじ》くらいなんだよねー」


「う、嘘《うそ》よ! だって、あたしはこの刀に全体重を乗せて」


その時、闇ミノリはミノリが最後まで言い終わる前にこう言った。


「全体重? あー、ダメダメ、全然ダメだよ。それだけじゃ、一生かかってもここから出られないよー」


「はぁ? あんた、さっきから何なのよ。もしかして、あたしのことバカにしてる?」


「いや、バカにはしてないよ。ただ、事実を言ってるだけだよ」


「あー、なんか今、銀髪天使に罵《ののし》られた時と同じ気持ちになったから、もう殺す気でいくわよ?」


「あー、うん、いいよー。まあ、それでもあたしは全然余裕だけどねー」


その一言でミノリ(吸血鬼)の堪忍《かんにん》袋の尾《お》が切れた。


「言ったわね? じゃあ、あたしの絶対的な力の前では、あんたなんか相手にならないってことを証明してあげるから覚悟しなさい」


ミノリ(吸血鬼)はそう言いながら、ニヤリと笑った。


「へえー、それは楽しみだなー。まあ、期待はしないけどねー」


闇ミノリはそう言うと、一瞬で後ろに数歩下がった。


「……今のあたしは手加減できないから、余所見《よそみ》してると体がバラバラになるかもしれないわよ?」


「あー、うん、そういうのいいから、さっさと始めようよー」


「ふん! そんな口が聞けるのも今のうちよ! せいぜいショック死しないように気をつけなさい!」


「はいはい、そんなので死んだりしないから、さっさと始めちゃっていいよー」


「くっ! あたしとは思えないセリフだけど、それもここまでよ!」


ミノリ(吸血鬼)はそう言うと、背中に魔力を集中させた。


「固有武装『|光を喰らう黒影製の翼《ブラックイカロス》』!!」


ミノリ(吸血鬼)がそう言うと同時に、ミノリの背中から黒影でできた翼が二枚生えた。

それは彼女の思うがままに操《あやつ》ることができるため、ほぼ死角は無くなるのである。


「へえー、それが固有武装かー。間近《まじか》で見るのは初めてだけど、かなり便利だね、それ」


闇ミノリの感想を聞いたミノリ(吸血鬼)は、とてもいい気分になった。


「ふふん! まあ、あんたがあたしに勝つには、この翼をどうにかしないといけないから、かなり厳しいわよねー」


その間《かん》、闇ミノリは屈伸《くっしん》や腕回しをしていた……。


「まあ、別にそれがあろうと無かろうと、あたしが負けるわけないから別にいいんだけどねー」


闇ミノリの挑発。

ミノリは変化技を出せなくなった!


「あっ、そう。それじゃあ……行くわよ!」


ミノリ(吸血鬼)はそう言うと、例の翼を闇ミノリめがけて、ビヨーンと伸ばした。


「えー、それはちょっとずるいよー」


闇ミノリはそう言いながら、ひょいと躱《かわ》した。


「ふん! そんなの想定済みよ!」


ミノリ(吸血鬼)は例の翼に追尾《ついび》するよう念じた。

すると、例の翼は闇ミノリの後を追い始めた。


「ふーん、追尾もできるのかー。結構、便利だねー」


闇ミノリは両手を肩より後ろに移動させると、猛スピードで走り始めた。


「いくら足が速くても、あたしの固有武装からは逃げられないわよ!」


ミノリ(吸血鬼)は例の翼を縦横無尽に動かして、闇ミノリを徐々に追い詰めていった。


「……うーん、もうそろそろいいかなー」


「さぁ、さっさとあたしの固有武装の糧《かて》となりなさあああああああああああああああああい!!」


ミノリ(吸血鬼)の固有武装は闇ミノリを完全にロックオンし、その小さな体を貫いた……かのように思えた。


「ふん、別に大したことなかったわね。さてと、さっさとここから出てい……」


「いやー、危ない、危ない。もう少しで当たるところだったよー」


「なっ!」


「はい、デコピン」


「あいたっ!」


ミノリ(吸血鬼)は、自分の背後に現れた闇ミノリにデコピンをされてしまった。

ミノリ(吸血鬼)は何が起こったのか、全く理解していなかった。


「いやー、まあ、あれだねー。同じあたしでも、頭の出来が違うと、こうも実力に差が出るんだねー」


「あ、あんた、いったい何をしたのよ!」


額《ひたい》を手で撫でながら、そんなことを言ったミノリ(吸血鬼)に対して闇ミノリは仕方なく説明した。


「固有武装を使えるのは自分だけだと思わないでほしいなー」


それを聞いたミノリ(吸血鬼)は、激しく動揺《どうよう》した。


「なっ! ちょっとそれ、どういうことよ! ちゃんと説明しなさいよ!!」


「はぁ……分かったよ。ちゃんと説明するよー。だから、とりあえず落ち着いてよー。ねー?」


「わ、分かったわよ。落ち着けばいいんでしょ、落ち着けば」


ミノリ(吸血鬼)は、しぶしぶ闇ミノリの言うことを聞くことにした。


「……コホン、それじゃあ、説明するよー。まず、あたしが使用した固有武装は『|黒影製の輪っか《ブラックフープ》』。まあ、簡単に言うと、どんな場所だろうと、好きなところに行ける輪っかだねー。それを使えば、ここから宇宙にだって行けるよー」


「な、何よ、それ。あたしのより汎用性《はんようせい》高くない?」


「まあねー。けど、これでもまだ仮名だから、早く名前を考えてほしいんだよねー」


「そ、そう……。でも、あんたの固有武装なら、それができるんじゃないの?」


「いや、まあ、あたしもそれは考えたし、実際にやってみたんだけど、なぜかこの中でしか使えないんだよねー」


「それって、つまり……」


「うん、どうもここに閉じ込められてるみたいなんだよねー」


「そっか。でも、それだとあたしはどうなるのよ。あたしはこの体の持ち主なのよ?」


「あー、まあ、そうだけど、今のままじゃ、ここから出られないよ」


「えっ? どうしてそんなこと分かるのよ」


うーん、そこから説明しないといけないのかー。まあ、いいや。どうせやることもないし。


その後、闇ミノリは、しぶしぶ語り始めた。


「えーっとね、手短に説明すると『魔力タンク』が暴走しかけているせいでとても危険な状態にあるんだよねー。それで、ナオトたちがどうにかして、それを改善しようと頑張ってる真っ最中なんだよー」


「……そう。やっぱりそうだったのね」


「んー? もしかして、自覚してたのー?」


「まあ、おぼろげだけど、なんとなく覚えてるわ。気を失う少し前くらいまでのことは……ね」


「そっかー。まあ、気長にここで待ってた方がいいと思うよー。それに、あたしに勝てないようじゃ、ここから出たとしても、また同じ症状が出るかもしれないからねー」


「……それって、つまり、今のあたしじゃどうすることもできないから、嫌でもここに居《い》ろってこと?」


「うーん、まあ、それに近いかなー。けど、死ぬよりかはマシでしょ?」


ミノリ(吸血鬼)は少し俯《うつむ》くと、こう言った。


「……冗談じゃないわよ」


「え?」


闇ミノリが小首を傾《かし》げると、ミノリ(吸血鬼)は闇ミノリを睨《にら》んだ。


「あたしはね、こんなところに居座ってなんかいられないのよ。ナオトや他のみんなに迷惑をかけたくないのもあるけど、ナオトはあたしがいないとすぐに突っ走る癖《くせ》があるから、早くここから出して……いや、出しなさい!!」


「うーん、どうしよっかなー。無条件でここから出してあげてもいいけど、いい機会だから、あたしと合体してみようよー」


「はぁ? あんた何言ってるの? 合体なんてできるわけないじゃない」


「さて、それはどうかな? 言っておくけど、あたしはちゃんと知ってるんだよ? ナオトが天使型モンスターチルドレン|製造番号《ナンバー》 四『ミカン』と一時的に合体して、強力な力を得たことでさらなる高みへと至ったことも、その光景を目《ま》の当たりにした時、今まで感じたことのない感覚に襲われたことも……ね?」


「は、はぁ? あたしには、何のことだかさっぱり分からないわ。あんたが何を知っていようと、あたしはあたしよ!」


「うん、まあ、それは知ってるけど、あたしと合体することでモンスターチルドレンを超越した存在になれるとしたら……どうするー?」


「そ、そんなこと言われても、あたしは別にそんなのに興味なんて……」


ミノリ(吸血鬼)が最後まで言い終わる前に、闇ミノリは彼女との距離を縮めると、こう言った。


「あんたに興味があろうと無かろうと関係ない。あたしは試してみたいんだよ。光と闇、太陽と月、白と黒。相反するものが融合した時、どうなるのかを」


「そ、そんなのあんたの勝手でしょ? あたしはとにかくここから出たいの! だから、邪魔しないで!」


「あたしと合体すれば、ここから出られるかもしれないと言ったら、どうする?」


「えっ! う、嘘《うそ》でしょ? だって、あんたはここから出られないって言ってたじゃない。それなのに、あたしと合体するだけでここから出られるなんてことあるわけ……」


「じゃあ、早速始めようか。はーい。それじゃあ、口を大きく開けてねー」


「い、嫌よ! あんたなんかと合体するくらいなら、死んだ方がマシよ!!」


ミノリ(吸血鬼)が闇ミノリの手を振《ふ》り払《はら》うと、闇ミノリの様子が一変した。


「……へえ、そうなんだ……。それじゃあ、望み通り殺してあげるよ」


その直後、闇ミノリは一瞬で五メートルほど後ろにジャンプした。

そして、体から漆黒《しっこく》のオーラを出し始めた。

ダンボール箱の中に入っていた〇〇とその同類たちと共に異世界を旅することになった件 〜ダン件〜

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