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透は薄曇りの空を見上げ、秋風が彼の髪を揺らす。9月に入り、日々が過ぎていく中で、彼は奇妙な静けさを感じていた。呪詛の王の手がかりを掴んだが、それ以降、大きな動きはなかった。だが、その静寂は逆に不安を煽る。
「嵐の前の静けさってやつか…」透は独り言のように呟いた。
基地に戻ると、部隊のメンバーが待っていた。朱音は文献を読み込んでおり、百鬼はトレーニングに没頭していた。神楽坂は窓際で一人煙草を吸い、夏目は地図を睨んで何かを考え込んでいる。
「今日も変わりないか?」透が尋ねると、百鬼冴が顔を上げた。
「ああ、特に動きはない。呪力の波動が微妙に強まってきている気がする。王が目覚めるまで、もう時間の問題だろう」百鬼冴の言葉は淡々としていたが、その背後には深い不安が滲んでいた。
その夜、東京に激しい雨が降り始めた。9月の冷たい雨は、街を包み込むように降り注ぎ、部隊のメンバーもその異常な雨に気づいた。
「これはただの雨じゃないな」神楽坂が窓越しに雨音を聞きながら言った。
「呪力を帯びた雨…王が本格的に動き出したのかもしれない」朱音が全員に警告する。彼女の呪具「霧封結界」が微かに光り、雨に反応していた。
透は立ち上がり、窓の外を睨んだ。「雨が意味するのは…王が復活する合図なのかもしれない」
「ならば、猶予はない。す動かなければならないな」夏目が決断し、全員に指示を飛ばした。
「今夜、雨を調査する。居場所を突き止めるんだ」