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深い水底から引き上げられるような、ここ最近何度も体験している意識が覚醒する時の感覚だ。いつもと違って何とも言えない浮遊感を感じながらゆっくり目を開けてみたら、自分が水色の液体に満たされた空間で浮いてるのを自覚した。多分だけど、医療カプセルかな?

如何にもSFな感じのカプセル。対象者を横たわらせて、半円の蓋を閉めてポーションで満たし傷を癒す装置だ。ポーション、まあつまりナノマシンなんだけど浸されていても呼吸が出来る素敵仕様。原理は分からないけどね。

周りを見てみると、直ぐ側で椅子に座って眠ってるフェルが見えた。ずっと傍に居てくれたみたいだね。

……また心配をかけてしまったなぁ。何度も懲りない奴だって呆れられてなければ良いけど……。

ジョンさん達にも迷惑を掛けちゃっただろうね。異星人が強盗事件に介入して大立ち回りしたんだ。大騒ぎになったのは間違いない。今更ながら事態の深刻さを理解した。でも後悔はしていない。あの女の人、どうなったかなぁ。

ぼんやりと考えていると、また眠気が襲ってきた。まだまだ時間がかかりそうだし……ごめんね、フェル。心の中で親友に謝りながら目を閉じた。

『バイタル状態問題なし、規定値までの回復を確認。治癒終了、排水を開始します』

アリアの声で意識が覚醒して、満たされていたポーションがゆっくりと排水されていくのを感じる。目を開けると、心配そうに私を見てるフェルがカプセルの傍に居た。終了時間に合わせて目を覚ましたみたいだね。

完全に排水されると、ゆっくりと蓋が開く。このカプセルの問題点と言えば、ずぶ濡れの状態で放り出されることかなぁ。直ぐに体を拭かないと風邪を引いてしまう。本末転倒も良いところだから、傍にはタオルなんかを常備してある。

「清めの風よ」

今回はフェルが清めの魔法を使ってくれた。要は身体の汚れを綺麗にしてくれる魔法だ。これがあればお風呂に入らなくて良い。まあ気分の問題でお風呂には入るけどさ。

ゆっくりと身体を起こして、床に足を下ろす。絨毯を敷いてないから、当然床は冷たい。ここにも敷こうかな?なんて考えてたら、フェルに抱きしめられた。柔らかくて暖かい感触に包まれる。

「フェル?」

「心配したんですからっ!撃たれたと聞いた時は頭が真っ白になって!」

震えてる……?

……そうだよね、気丈に振る舞ってるけどフェルが全てを失ってまだ2ヶ月も経っていない。トラウマなんだ。

前回は災害救助だったけど、今回は犯罪に介入した。当然攻撃されることを予測はしていたし、それでも大丈夫だって確信はあった。でも、フェルから見れば堪ったもんじゃないよね。

センチネルならまだしも、地球人に攻撃される私。もちろん相手は犯罪者だけど、その光景は衝撃的だった筈。

……またフェルを泣かせちゃったなぁ。

「ごめん……」

「謝るのは私の方です!もう少しでティナの努力を台無しにしてしまうところだったんですから!」

ん?台無し?

私が気を失っている間に何かあったのかな?

『ティナ、貴女が気を失った後の映像があります。視聴されますか?』

「ん、わかった。でも、その前に服を着たいんだけど。ほら、フェルも」

私今素っ裸だし、それこそ風邪引いちゃうよ。

……なんで残念そうにするのかな?フェル。アレかな、フェルはそっち系だったりするのかな?色々スキンシップ凄いし。

私には……うーん、どうだろ?気にせずお風呂に入れるし、間違いなく私の性自認は女の子なんだけど。ただ、男性とお付き合いをする自分が全く想像できない。一応前世では男だったし。

アードは同性愛にとても寛容だ。遺伝子を組み合わせて子供を人為的に作れる。

ただ、最近は余り推奨されない。出生率が洒落になら無いくらい低下しているからだ。それに、人為的に作られた子供はどういうわけかマナ保有量が平均を下回る。

原因は未だに分かっていないけど、生物としての交配、つまり男女のカップルが推奨されている。まあそれはさておいて、着替えよう。風邪を引いちゃう。

手早く着替えを済ませて、アリアが用意してくれた動画を視聴した。なぜかフェルが申し訳なさそうにしていたけど、原因が分かったよ。ジョンさんが介入しなかったら、多分犯人達は跡形もなく吹き飛ばされていたと思う。そんなことになったら最悪だった。

でもフェルを責めるつもりはない。だって……。

「顔を上げて、フェル。フェルが責任を感じることじゃないよ。だって、原因は私なんだから」

いつものようによく考えないで事件に介入した私に責任がある。ジョンさんが止めてくれたけど、間違いなくジョンさん含めて合衆国政府の皆さんに迷惑を掛けてしまった。アリアが事後処理をしてくれたけど、ハリソンさん達が後始末で難儀するのは間違いない。

『良い点があるとするならば、これは地球側への良い警告となります』

「私としては対等な立場でいきたかったんだけどね」

『そのティナの優しさに付け入る勢力が居たのも確かです。マスターフェルの存在は、彼らに対する抑止力となります』

「フェルは大切な友達だよ」

まあ、アリアが言いたいことも分からないではない。私には前世の記憶があるし、地球についてもある程度の理解がある。生きていた頃より大きな変化もないしね。

でもアリアから見れば未知の、しかもアードより遥かに遅れた惑星だ。好意的な私が異常なだけだ。

それに、フェルは私を傷つけられたと思ってあの行動に出た。起きてしまった以上、それに合わせた対処をしなきゃいけない。

ジョンさん達がよそよそしくなってたらどうしようかな。それだけで落ち込む自信はあるけど、フェルに責任を感じさせないためにも私が前に出なきゃいけない。

「フェル、今日も地球へ降りるよ。フェルはどうする?」

身体の調子も良いし、ジョンさん達に会わなきゃいけない。これで数日間が空いたら、あちらも最悪を想定してしまう。変わらずに交流するためにも、直ぐに会いに行かなきゃ。助けた親子の事も気になるしね。

「私もいきます。ジョンさんに謝らないと」

「うん、一緒にごめんなさいしようね」

ちょっとしたハプニングはあったけど、これくらいで諦めたりはしない。挨拶は終わったんだ。後始末をして、フェルと一緒に地球を観光する!

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