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再会した幼馴染は、恋を知らない
第12話・最終回撮影日
――――――――――
【撮影前】
〇〇side
最終回。
鏡の前で深呼吸。
今日で全部終わる。
壁ドン。
お姫様抱っこ。
キスシーン。
全部大事なシーン。
特に壁ドンは、今回のドラマで初めて。
台本を閉じる。
〇〇(心の声)ちゃんと出来るかな。
ノックの音。
北斗。
北斗「おはよ」
〇〇「おはよ。今日だね」
北斗「だな」
いつも通りのテンポ。
でも少しだけ空気が違う。
〇〇「初壁ドンだよ?」
北斗「うん」
〇〇「自信ある?」
北斗「ない」
正直すぎて少し笑う。
〇〇(心の声)この人、ほんとに隠さないよね。
〇〇「失敗したら笑うから」
北斗「笑わせない」
その一言が少しだけ低くて。
〇〇(心の声)え、怒った笑?
――――――――――
北斗side
楽屋で一人。
台本のそのページだけ、何回も読む。
壁ドン。
今回のドラマで初。
逃げ場のない距離。
北斗(心の声)
演技、演技。
でも、相手は〇〇。
昔から知ってる顔。
演技で近づくって、こんなに難しいんだな。
メンバーからのLINEは無視。
深呼吸。
今日で終わる。
ちゃんとやれ。
――――――――――
【壁ドン】
北斗side
1テイク目。
手を壁に打ち付ける。
音はいい。
でも心が固い。
監督「もう一回」
2テイク目。
怒りを強める。
違う。
監督「好きが足りない」
北斗(心の声)簡単に言うなよ。
3テイク目。
〇〇の目が揺れる。
その目に飲まれる。
声が震える。
カット。
4テイク目。
感情が暴れる。
監督「怒鳴らない」
くそ。
5テイク目。
深呼吸。
距離ゼロ。
〇〇の瞳から目を逸らさない。
北斗「……好きなんだよ」
言った瞬間。
北斗(心の声)これ、役だよな。
でも嘘じゃない声が出た。
〇〇の涙。
呼吸が混ざる。
監督「OK」
終わった瞬間、膝が少し震えていた。
――――――――――
【お姫様抱っこ】
北斗side
監督「ここは一発で」
〇〇「落とさないでよ」
北斗「落とすかよ」
軽く言い合う。
本番。
腕を回す。
持ち上げる。
軽い。
でも近い。
首元の香りが近い。
お姫様抱っこは樹たちと飲んで〇〇が潰れた日以来だ。
〇〇の手が肩を掴む。
北斗(心の声)信じてる顔すんな。
胸が変に熱い。
〇〇(役)「重くない?」
北斗(役)「軽い」
自然に出た。
監督「OK!」
一発。
ホッとする。
でも少しだけ。
北斗(心の声)もう少しこのままでもよかった。
すぐ下ろす。
距離を戻す。
――――――――――
【キスシーン】
北斗side
一番緊張してるのに、顔は平静。
監督「長めで」
長め。
北斗(心の声)やめてくれ。
本番。
引き寄せる。
触れる。
一瞬で頭が真っ白。
でも離さない。
長い。
呼吸が絡む。
〇〇の指が服を掴む。
その感触で理性が揺れる。
北斗(心の声)これ、演技だ。
でも。
終わらせたくないと思った。
監督「OK」
ゆっくり離す。
目が合う。
逸らす。
〇〇「長くない?」
北斗「指示通り」
声が少し低い。
バレないようにするのが精一杯。
――――――――――
【撮影後】
〇〇side
全部終わった。
壁ドンも、お姫様抱っこも、キスも。
モニターで少しだけ確認。
自分でも驚くくらい、ちゃんと恋してる顔をしてた。
〇〇(心の声)あれ、演技だよね?。
北斗が近くに立つ。
少し距離をあける。
〇〇「終わったね!」
北斗「終わったな」
静かな会話。
なんか、少し寂しい。
〇〇(心の声)この距離、もう撮らないんだ。
それが、ちょっとだけ。
――――――――――
北斗side
全部撮り終えた。
セットの空気が変わる。
達成感と、終わりの匂い。
壁ドン5テイク。
お姫様抱っこ一発。
キス一発、長め。
北斗(心の声)忘れられないな。
〇〇が隣に立つ。
北斗「お疲れ」
〇〇「お疲れ!」
普通の挨拶。
それだけ。
でも胸の奥がざわつく。
このドラマでの壁ドンは初。
多分、一番本気になりそうだった瞬間。
キスも、役。
全部役。
北斗(心の声)ちゃんと終われ。
物語は完結。
でも。
今日の距離は、きっと一生忘れないら、
【クランクアップ】
「以上で――クランクアップです!」
スタジオに拍手が広がる。
〇〇side
一瞬、何が起きたのかわからなかった。
さっきまで役のままだったのに、急に現実に戻される。
監督が大きな花束を抱えて近づいてくる。
え、こんなに大きいの?
〇〇「えっ、えっ…!」
両手いっぱいの花束を受け取る。
思わず子どもみたいに笑ってしまう。
〇〇「すごい…!重い!」
現場が笑いに包まれる。
〇〇(心の声)終わったんだ。本当に。
監督「座長として本当に引っ張ってくれました」
〇〇「そんな…!」
言葉が詰まる。
花の香りがふわっと広がる。
涙が出そうになるのを堪える。
〇〇「この作品に出会えて本当に幸せでした。皆さんがいたから最後まで走れました。本当に、ありがとうございました!!!」
深く頭を下げる。
拍手。
胸がいっぱいになる。
――――――――――
北斗side
〇〇が花束を受け取った瞬間。
あの無邪気な笑顔。
北斗(心の声)…ずるいな。
撮影中とは違う、素の顔。
あんな顔、役の中じゃ見せなかった。
胸がじんわり温かくなる。
次は自分。
監督から大きな花束を受け取る。
重い。
物理的にも、気持ち的にも。
監督「社長役、本当にハマってました」
北斗「ありがとうございます」
一呼吸置く。
北斗「この現場は本当に温かくて、毎日来るのが楽しみでした。〇〇をはじめ、キャスト・スタッフの皆さんに感謝しています。本当にありがとうございました」
拍手。
横を見る。
花束を抱えた〇〇が、まだ少し潤んだ目で笑っている。
北斗(心の声)泣くなよ。ばか
――――――――――
【YouTube用コメント撮影】
カメラが回る。
二人並んで立つ。
〇〇「『再会した幼馴染は、恋を知らない』、無事にクランクアップしました!」
北斗「しました!!」
〇〇「最終回まで見届けてくださった皆さん、本当にありがとうございます」
少し震える声。
〇〇「この作品は私にとって、すごく大切な作品になりました」
涙がこぼれる。
〇〇「ほんとに……楽しくて……」
言葉が続かない。
北斗、横目で見る。
北斗「泣くの早くない?」
〇〇「だって!」
スタッフが笑う。
〇〇「ほんとに幸せだったんだもん!」
北斗(心の声)こういうとこ、変わらない。
北斗「まぁ、頑張ってたよな」
〇〇「上から!」
北斗「事実ww」
軽口。
でも声は優しい。
北斗「このドラマは、恋だけじゃなくて、再会とか成長とか、いろんなテーマが詰まっています。最後まで楽しんでもらえたら嬉しいです。本当にありがとうございました」
〇〇、涙を拭きながら笑う。
〇〇「ありがとうございました!」
二人で頭を下げる。
――――――――――
【最後のワンシーン】
監督「最後に、ちょっとだけ遊びましょうか」
花束を持ったまま、カメラの前に立つ二人。
監督「お互いにもう一度、花束を渡してください」
〇〇「え?」
北斗「なんで?」
笑い。
でも向き合う。
北斗が持っている花束を差し出す。
北斗「お疲れ」
〇〇、受け取る。
〇〇「お疲れさま」
そのまま、〇〇も花束を差し出す。
〇〇「社長さん、ありがとう」
北斗「こちらこそ」
花束越しに、少し照れた視線が交わる。
北斗(心の声)終わったな。
長い撮影期間。
初めての壁ドン。
一発で決まったお姫様抱っこ。
長めだったキスシーン。
全部思い出す。
でも今目の前にいるのは、役じゃない〇〇。
無邪気に笑う、素の〇〇。
北斗(心の声)この顔、守りたいとか思うなよ。
カメラが止まる。
監督「はい、オールアップ!」
大きな拍手。
〇〇がまた少し泣く。
北斗「また泣いてる」
〇〇「うるさい!」
笑い声。
その空気ごと、作品は幕を閉じた。
ーーーーーーーーー
再会した幼馴染は、恋を知らない
最終回撮影終了後
――――――――――
【撮影終わり・楽屋へ戻る】
〇〇side
廊下を歩く足音がやけに響く。
さっきまで賑やかだったスタジオが、急に静かに感じる。
花束を抱えたまま楽屋に戻る。
ドアを閉めた瞬間、ふっと力が抜けた。
〇〇(心の声)終わっちゃったなぁ。さみし
鏡の前に座る。
メイクを落としながら、今日一日のシーンが頭の中を流れる。
壁ドン。
お姫様抱っこ。
キスシーン。
クランクアップ。
全部、夢みたい。
でも胸の奥が少しだけきゅっとなる。
〇〇(心の声)また会えるのに。宣伝もあるのに。それでも寂しいな。
身支度を整える。
コートを羽織る。
少し迷ってから、立ち上がる。
北斗の楽屋の前。
ノック。コンコンコン🚪
――――――――――
北斗side
楽屋に戻って、一人になる。
静か。
さっきまであんなに人がいたのに。
花束を机に置く。
ネクタイを外す。
北斗(心の声)終わったな。
達成感と、ぽっかりした感覚。
コンコン。
ノック。
北斗「どうぞ」
ドアが開く。
〇〇。
北斗「どうした?」
〇〇「身支度終わった?」
北斗「今ちょうど」
少し間。
〇〇「この後仕事なかったら、一緒に帰ろー」
さらっと。
でもどこか少し照れた声。
北斗(心の声)……なんだそれ。
北斗「別にないけど」
〇〇「じゃあ決まり!」
笑う。
無邪気。
〇〇(心の声)ただ、ちょっと寂しかっただけ。
またすぐ会えるのにね笑笑。
北斗(心の声)俺は嬉しいって顔すんな。
北斗「先に言っとくけど、送らないからな」
〇〇「でも、同じ方向でしょ?」
北斗「まぁな」
少しだけ、さっきまでの寂しさが薄れる。
――――――――――
【タクシーの中】
並んで座る。
街の夜景が流れる。
〇〇「ほんと終わったね」
北斗「うん」
〇〇「壁ドン5回もやると思わなかった笑笑」
北斗「お前が泣くからだろ」
〇〇「そっちが本気出すからでしょ!」
軽口。
でも声は柔らかい。
〇〇「楽しかったなぁ」
北斗(心の声)俺も。でも言わない。
北斗「宣伝、また一緒だな」
〇〇「うん!いっぱい出よ!」
少しテンションが戻る。
タクシーが減速する。
〇〇の家の前。
ドアが開く。
〇〇、振り返る。
〇〇「バイバイ!楽しかった!お疲れ様!!」
満面の笑顔。
〇〇「次はドラマ宣伝の時に!」
北斗、タクシーの中から。
北斗「……おう。気をつけろ」
〇〇が手を振る。
ドアが閉まる。
タクシーが走り出す。
北斗(心の声)ほんと、最後までああいう顔する。
――――――――――
【家に帰った〇〇】
〇〇side
玄関のドアを閉める。
静かな部屋。
コートを脱いで、ソファに座る。
今日もらった花束をテーブルに置く。
〇〇(心の声)ほんとに終わった。
スマホを見る。
撮影中のオフショット。
北斗とのツーショット。
自然と笑ってる。
〇〇(心の声)楽しかったな。
少しだけ目が潤む。
でもさっき言った通り。
また宣伝で会える。
〇〇「よし!!次もがんばろ!!」
小さく呟く。
前を向く。
――――――――――
【タクシーで帰る北斗】
北斗side
窓の外をぼんやり見る。
〇〇が降りた後の隣の空間が、やけに広い。
北斗(心の声)寂しいとか思うな。
でも思う。
今日で終わり。
あの距離の芝居は、もうない。
キスも、壁ドンも、抱き上げることも。
仕事だ。
全部仕事。
でも。
北斗(心の声)楽しかった。
それは本当。
タクシーが止まる。
――――――――――
【家に帰った北斗】
玄関を開ける。
静か。
スーツを脱ぐ。
花束をテーブルに置く。
ソファに腰を下ろす。
天井を見る。
北斗(心の声)終わったな。
スマホに通知。
〇〇から。
「今日はありがとう!ゆっくり休んでね!」
短いメッセージ。
北斗、少し笑う。
北斗(心の声)ほんと素直。
「お前もな」
送信。
部屋に静けさが戻る。
でもどこか、温かい。
最終回は終わった。
物語は完結。
でも。
宣伝でまた会う。
北斗(心の声)次会うとき、どんな顔するんだろうな。
目を閉じる。
長い撮影期間が、静かに幕を下ろした。
ー深夜。ー
北斗side
電気を消したのに、眠れない。
天井を見上げたまま、何度も寝返りを打つ。
静かすぎる部屋。
時計の音だけがやけに響く。
北斗(心の声)寝ろよ。
目を閉じる。
でも浮かんでくるのは、今日の撮影。
壁ドン。
壁に手をついた瞬間の、あの距離。
〇〇の揺れた目。
「……好きなんだよ」
あの台詞。
役のはずなのに。
北斗(心の声)あれ、本音混ざってただろ。
布団を握る。
次に浮かぶのは、お姫様抱っこ。
軽かった体温。
首元の近さ。
信じて預けてくる手。
北斗(心の声)あんな顔するなよ。
そして、キスシーン。
長め。
監督の指示。
だから長くした。
それだけ。
でも。
唇が触れた瞬間。
時間が止まった。
北斗(心の声)好きな人とキスした、、、
事実が遅れて刺さる。
演技。
仕事。
わかってる。
でも好きな人だった。
北斗はゆっくり息を吐く。
〇〇の指が服を掴んだ感触。
離れる瞬間の目。
あれは役の目だ。
役の感情。
北斗(心の声)〇〇は、なんとも思ってない。
ただの仕事。
ただの最終回。
明るく笑って、
「楽しかった!」って言って。
それが〇〇。
北斗は顔を腕で覆う。
北斗(心の声)俺だけだろ、こんなに引きずってんの。
キスは一回きり。
壁ドンも今日だけ。
抱き上げることも、もうない。
物語は終わった。
でも気持ちは終わらない。
スマホを見る。
〇〇とのトーク画面。
「今日はありがとう!」
明るい文面。
北斗(心の声)俺はありがとうじゃ足りない。
好きだって言いたい。
でも言えない。
今の関係が壊れるのが怖い。
〇〇は仲間だと思ってる。
それで満足してる顔をしてる。
北斗(心の声)俺が勝手に好きなだけ。
天井を見る。
深夜の静寂。
胸の奥がじんわり熱い。
北斗(心の声)忘れろ。
でも忘れられない。
好きな人とキスした。
その事実は、消えない。
目を閉じる。
〇〇の無邪気な笑顔が浮かぶ。
「バイバイ!楽しかった!」
あの笑顔。
北斗(心の声)ほんと、何も思ってない顔。
苦笑する。
それでもいい。
そばにいられるなら。
宣伝でまた会える。
また隣に立てる。
北斗(心の声)この片思い、いつまで続くんだろうな。
夜は長い。
眠れないまま、
好きな人との一日を何度も思い返しながら、
北斗は静かに目を閉じた。