結局二人でお湯を使いまくってみたけれど、まだまだ湯量が多そうで。
「もったいないけど仕方ない」
言って、浴槽底のゴム栓を抜いてほんの少しお湯を捨てさせてもらった実篤だ。
そのままジャグジーのスイッチを入れると、アメニティの中から例のイチゴの香りがするという泡風呂用入浴剤を手に取って湯船にとろりと落とす。
たちまち浴槽内いっぱいに甘い香りのきめ細かい泡が立ち始めて。
ほわんとした様子だったくるみが「イチゴの美味しそうな匂いがします」とポツンとつぶやいた。
その声に、実篤が「こっちおいで」と手を差し出したら、くるみが洗いたての桃の香りがする手を載せてきた。
と、椅子から立ち上がった拍子にボディソープの流し残しに足を取られたのだろうか。
「ひゃっ」という悲鳴と共に、実篤の腕の中にくるみのすべすべな身体が飛び込んできた。
「おっと」
条件反射でそんなくるみを咄嗟に抱き留めたものの、触れた箇所全体に、上気したくるみの滑らかな肌の感触がして……おまけに柔らかな触り心地のふくよかな胸がプニューッと押し付けられるからたまらない。
「……く、くるみちゃんっ! 折角じゃし、お湯! お湯につかろうやぁ!」
下腹部の方でぐわりと天を突く勢いでカチカチにそそり立った息子が存在をアピールしまくってくるから。
そこからなるべく意識を逸らせるようにしながらくるみの身体をそっと自分から引き離したら、くるみが「あれ? なんか当たった……?」とつぶやいて視線を下向けそうになって。
実篤は慌てて「い、一番風呂頂きぃーっ!」とお湯に逃げ込んだ。
「あー! 実篤さん、ずるいです! うちの方が先に入りたかったんに」
途端くるみがぷぅっと頬を膨らませてそろりとお湯に入ってきた。
「髪の毛、上げんでもえかった?」
身体を洗うために湯を掛けた時点で結構濡れてしまっているので今更な気もしたけれど、一応聞いてみた実篤だ。
「ん、もういいんです。ぼやぁっとしちょったら結構濡れてしもうちょったし」
くるくると濡れた毛先を指に巻きつけながら「上がったらドライヤーします」と実篤を見詰めて。そこでハッと何かに気付いたみたいに「あ……」とつぶやいて大きく瞳を見開いたくるみだ。
実篤の目の前で髪をいじるくるみは、受け答えもしっかりしてきたし、何より目がトロンとしていない。
(やっとくるみちゃんが帰ってきた!)
そう思って喜んだ実篤だったけれど。
意識がしっかりしたことが、逆に弊害になってしまったのだろうか。
実篤も自分も真っ裸で――泡のなかとはいえ――一緒に湯船へ浸かっているということに今更気付いたらしいくるみが、「あ」と声を漏らすなりそろそろと実篤から距離をあけてしまう。
そんなくるみの行動に、実篤は心の中で『嘘じゃろ』とこぼさずにはいられない。
「ねぇ、くるみちゃん。折角一緒に風呂へ入るっちょるんに、何でそんなに端っこへ行くん?」
実篤が腕を預けて縋っているところのちょうど対角線上にそそくさと移動して、恥ずかしそうに背中を向けてしまったくるみに、実篤は不満たらたらだ。
よっ!と身体を浴槽の縁から離すと、くるみの方へ近付いて後ろから逃がさないよう小さな身体を抱きしめて。「まさかベッドだけで終わりじゃなんて言わんよね?」と背後から耳朶に吐息を吹き掛ける。
「ふぇっ!?」
突然の耳責めに愛らしい声を漏らすくるみが可愛くて、実篤はもっといじめてみたくなった。
「俺、まだ全然シ足りんのんじゃけど……?」
くるみの腰に回した腕にグッと力を込めて、固く張りつめた息子をわざと彼女の臀部へ押し当てる。
「やぁんっ、実篤しゃっ。――そうは言うてじゃけどっ、ベッドでもう二回も……」
「もう二回? なに言うちょるん、くるみちゃん。俺、まだ二回しか出しちょらんよ?」
「……しかっ!?」
実篤の言葉にくるみがビクッと肩を跳ねさせて、大きく瞳を見開いた。
そうしてポツンとつぶやくのだ。
「うち、実篤さんの体力についていけるようフィットネスやらへ通ぉーた方がええでしょうか?」
と。
実篤はそんなくるみのことが心の底から可愛いと思って。
それと同時。
(俺がこんとに際限なく反応出来るんはくるみちゃんだけじゃって……ちゃんと分かっちょる?)
誰に対してもそんな風に盛るだなんて思わないで欲しい。
だって……。それだとただの変態絶倫男になってしまうではないか。
実篤だって、こんなにしてもしても抱き足りないと思ったことは、それこそ十代の桃色お猿さん時代でさえなかったことで――。
それを、くるみにだけは、ちゃんと分かっていて欲しいと思ってしまった。
***
「ああんっ。しゃ、ねあつ、さっ! ……うち、もぉ……ダメぇっ」
追い炊き機能が付いているわけでも、湯温調節機能がついているわけでもない浴槽内は、熱い湯を足しでもしない限りどんどん温度が下がっていくのだけれど。
二人で広い湯船の中、半身浴に近い形とは言えかれこれ一時間近く湯の中にいたからだろうか。
びくびくと身体を震わせて、くるみが浴槽の縁にだらりとしなだれ掛かってしまった。
「えっ、ちょっ。くるみちゃんっ!?」
浴室には避妊具を一個だけしか持ってきていなかったので、ここで何回もするつもりはなかった実篤だったけれど。
一回こっきりだと思うと達くのが惜しく感じられて、ついついしつこくくるみを攻めすぎてしまった。
声を押し殺すようにしてくるみの反応を見ながらゆっくりと抽挿を続けていた実篤と違って、くるみは始終実篤に膣内の気持ちいい所を見極められ、ゆるゆると刺激され続けて。絶えず身体を小刻みに震わせては愛らしい声で啼かされ続けていたから。
当然実篤より消耗が激しかった。
実篤が達すると同時。全身の力が抜けてくたぁーっと倒れ込んでしまったのは当然だろう。
そんなくるみを見て、実篤は慌てて彼女を抱き起こしたのだけれど。
「ゃぁんっ……」
無意識だろう。
くるみが吐息交じりに内腿に力を入れて眉根を寄せたのを見て、挿入っぱなしになっていた息子を、ゴムをずらさないよう気を付けながらズルリと引き抜いた実篤だ。
だがその瞬間、正直名残惜しくなるぐらい〝きゅぅぅぅん〟っと、くるみの熱い蜜壺が媚びるように実篤の肉棒を締め付けてきたからたまらない。
いまゴムの中に出したばかりだと言うのに、それだけでまたしてもスイッチが入りそうになって、実篤は慌てて気持ちを切り替えた。
さすがにこれ以上ここでくるみを攻め続けるのはマズイではないか。
くるみが相手だとついついやり過ぎてしまう自分に、実篤は小さく吐息を落とさずにはいられない。
近い将来くるみをお嫁さんに迎える事が出来たとして、果たして自分は彼女を壊さずにいられるだろうか。
自分の雄として欲深さが、ちょっぴり怖くなった実篤だった。
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