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「……りゅうせい、好きだよ」
喉の奥から絞り出したその一言に、彼は息をのんだ。彼は驚いたように目を見開き、やがて手のひらで自分の顔を覆い隠してしまった。
ダメだよな。彼女がいると分かっていながら、こんな……浮気と変わらない真似をして。
俺はあいつの手をゆっくりと剥がし、もう一度その瞳を覗き込んだ。
「……りゅうせいは、俺のことまだ好き?」
卑怯だ。俺。こんな至近距離、逃げ場なんてどこにもないのに、りゅうせいの心を追い詰めるようなことを言っている。
「……なんで、今更……。ダメだって、言ったじゃないですか」
泣き出しそうな、震える声。
そうだよな。俺が勝手だよな。彼の心を振り回しているのは、いつだって俺だ。
「……あん時は、背負うもんが多すぎて無責任に手を出せないなって思ったんだよ。でも、今は違う。りゅうせいの全部を、ちゃんと受け止める自信があるよ」
「……本当、に?」
「うん。……ごめんな、今まで酷い事ばっか言って」
俺がそう言うと、りゅうせいは溜め込んでいた何かを吐き出すように、そっと俺の体に抱きついてきた。俺は彼の背中に手を回し、強く包み込む。
懐かしい、あの頃と変わらないりゅうせいの匂い。……幸せすぎて、どうにかなりそうだ。
口づけを落とし、薄らと空いた唇の隙間に舌をそっと這わせる。
「……おいしい」
「……ダメだ。恐ろしく……エロい」
「え? なんで?」
「そ、それ以上はダメです……っ。俺、もう耐えられそうにない」
「俺だってそうだよ」
床に押し倒し、もう一度唇を重ねようとしたその時――シャワー室の扉がガチャリと音を立てて開いた。
あっぶな。そうだった、この部屋には他に二人の男がいるんだった。もう少しで理性を完全にぶっ飛ばして、この場所で襲うところだった。
「ねぇ~!! 俺の部屋着とって~! めっちゃ寒いんだけど~!」
「おい、だいき。パンツくらい履け。ちんこ丸出しじゃねぇか」
「もう、この部屋で何本ちんこ見なきゃいけないんだよ……」
呆れきって爆笑するりゅうせいの声が、冷えた空気に溶ける。俺も、幸せすぎて腹が痛くなるくらい笑った。
「りゅうせい、こっち」
「うん、ちょっと待って」
「早く来て」
いっちゃんと身を寄せ合って眠っているだいきに布団をかけてやり、俺は三畳の物置部屋へりゅうせいの手を引いた。連れ込む、なんていうとまるでヤバいことをしているみたいだけど、今の俺にはこの狭さが心地いい。
「ソファ小さいけど、二人で寝れるかな」
「ギシギシいってるから、強度はヤバいかも」
「捨てようと思ってたやつだからな。激しい動きは……できないよね」
「……もうっ、いつきくん、スケベなんだから」
本気で顔を赤らめるりゅうせいの頬を両手で支え、深いキスをする。さっきはお預けを食らった分、これくらいは許してくれ。
「……待って。まだ心が、追いついてない」
「俺だって、今日こんなことになるなんて思ってもみなかった」
何度も軽く唇を重ね、舌を絡め合うたびに、あいつの息遣いが荒くなっていくのがわかる。
「顔、真っ赤じゃん。今頃になって酔いがまわってきたの?」
「……逆だよ。酔いが覚めてきて……恥ずかしくて、どうにかなりそう」
首元にそっと手を回され、そのままソファへ押し倒される。
もう、止められないな。
「りゅうせい、すっごい、いい匂いする。すっごいエロい」
「……誰が言ってんの?」
あいつが潤んだ瞳で俺を見上げ、悪戯っぽく、でも切なくそう問いかけた。