テラーノベル
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僕たちの関係が大きく変化した始まりの日。
あの旅行から、約一年の月日が流れた。
この一年、振り返れば本当にいろいろなことがあったけれど、僕の胸の中にある気持ちが変わることはなかった。
変わらないどころか、しゅんを愛おしく想う気持ちは日を追うごとに大きく、深くなっていくばかりだった。
彼の差し出してくれる無条件の優しさや、包み込むようなあたたかさに触れ続けるうちに、あの悍ましいトラウマの記憶は、良くも悪くもただの過去になった。
傷が完全に消えたわけじゃない。
だけどそんな過去の痛みが霞んでしまうくらいに、僕の目の前にはしゅんと過ごす愛おしい”今”が溢れている。
過去よりも今日という日が、これからの未来がずっとずっと大切なんだって気付いた。
しゅんと一緒だからどんな夜も安心できた。
しゅんがいてくれるから朝を迎えることが楽しみだと思えた。
彼を心の底から愛しているからこそ、今度は僕がその手を守りたい、隣にいる彼を誰よりも大切にしたいと思えた。
守りたいものがあるから、強くなれる。
かつて僕が「強くなりたい」と願ったあの日の言葉の通り、僕はほんの少しだけ強くなれたような気がするんだ。
気づけば僕の目に見える世界の景色も、いつの間にか優しく変わったように思う。
人との関わりや目の前の仕事。
そして朝に淹れるコーヒーの匂いでさえ…。
今までと同じはずの毎日がたまらなく愛おしいと思えるのだから。
それに僕の閉ざしていた世界のなかへ、真っ直ぐに踏み込んできてくれた大切な仲間たちもいる。
吉田さんやだいちゃんとは会社の中だけじゃなく、休日にも予定を合わせて遊びに行くようになった。
もちろんはやちゃんも一緒に。
休みの日に集まれば 「なんで休日にお前らのツラ拝まなきゃいけねぇんだよ」 とぶつぶつ文句を言う吉田さんの隣で、当たり前みたいな顔をしてはやちゃんが座り、その横でだいちゃんが無邪気に「じんちゃんほんまは嬉しいんやろ~」と大騒ぎし、それを聞いたはやちゃんが「おい仁人素直になれって!かわいいなぁ~」と嬉しそうに突っ込んでいる。
テーブルの対面からそんなみんなのやり取りを、僕としゅんは並んで座りながら、ただ楽しそうに笑い合うんだ。
こんなふうに対等な友達ができたことが、すごく嬉しい。
昔の僕じゃ考えられなかったことだから。
そうそう、はやちゃんは最近、大切な恋人ができたんだって。
会えばいつも「その人がさ、本当に可愛くて、もう、めちゃくちゃ愛おしいんだわ」なんて、照れくさそうに惚気話をしてくる。
そのたびに、普段はすぐに突っ込むはずの吉田さんがなぜかその時だけはわざと聞こえないふりをしてほんのり顔を赤くしているのを僕は知っている。
そして嬉しかったのは、そんな大切な人ができてからもはやちゃんの僕に対する過保護っぷりは変わらず健在だということ。
僕に何かあれば、あの頃と変わらない真っ直ぐな優しさですぐに僕のことを心配してくれる。
きっとはやちゃんの恋人も、彼のそんな過保護な優しさを誰よりも分かっていて、一緒になって僕の背中を支えてくれているんだと、そう思っている。
もちぷよ
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きゅー
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あの人の選んだ人ならきっと、彼と同じくらいどこまでも心の温かい人なんだろうな、って。
なんでそれが、そんなにも嬉しかったかと言うと、僕のことが”好き”ってだけで優しくしてくれていたわけではなかったと知れたから。
これまでの人生、友達だと思っていた人たちが実は下心や好意から一緒にいてくれただけで、僕にその気がないとわかれば手のひらを返して去っていく人ばかりだったから。
だけどはやちゃんは違った。
恋人ができてからも、何ひとつ変わらずに僕を大切にしてくれる。
そのぬくもりに触れるたびに、はやちゃんが僕にくれたあの底なしの救いは、見返りなんて何も求めない、純粋に僕の幸せだけを願ってくれた本物の愛だったんだって、たまらなく嬉しくて胸の奥がじんわりと温かくなる。
でも本当に、はやちゃんが幸せそうに笑う姿を見られて嬉しかったんだ。
僕もやっと、はやちゃんを安心させられたのかなって。
だから今度は僕がはやちゃんの未来にたくさんの幸せが降り注ぐように、いつも心の中で祈っている。
はやちゃんの幸せは、僕の幸せでもあるから。
これからも生きていればいろんな壁や困難にぶつかると思う。
でもしゅんと一緒ならきっと大丈夫。
お互いを大切に思い合っていれば、どんな事だって乗り越えることができる。
そんな確信が、今の僕にはあった。
「じゅう! 早く行くでー!」
玄関から待ちきれないといった様子のはじけた声が響く。
「あ、待って! 今行くー!」
大きなキャリーケースを引いてドアを開けると、自分の準備をすっかり終えたしゅんが、相変わらずの眩しい笑顔で僕のことを待っていた。
「じゃあ出発や!! 北海道、楽しみやなぁ! 今回はいっぱい観光して、いっぱい美味しいもの食べよな!」
「俺、蟹食べたい!」
「おぉー、えぇな!!」
そんな他愛もない会話を交わした直後、僕のお腹から、ぐぅー……と小さく情けない音が鳴った。
「あ……」
僕のお腹の音に気づいた彼が、すかさず僕の顔を覗き込み、悪戯っぽく目を細めて笑う。
「じゅうちゃん? ふふっ、ほーんま素直な身体やね」
「もう……うるさい!……っ」
一瞬で赤くなった僕の顔を見て、しゅんはさらに愛おしさに耐えきれないというように声を弾ませた。
「そんなじゅうちゃんも好きやで?」
「……もう、やだ、無理」
「ははっ、じゅうはほんまかわええなぁ」
歩き出したしゅんの背中を追いかけながら、僕は彼の手にそっと自分の指を絡ませた。
恋人繋ぎになった手の隙間から、心地よい熱が伝わってくる。
「……ねぇしゅん、好きだよ」
不意打ちの僕の言葉に、彼は一瞬だけピタリと足を止め、それから顔を耳まで真っ赤にして僕を振り返った。
「はぁ~……。じゅう〜!!! もう、ほんま幸せやわ!」
繋いだ手にきゅっと愛おしそうな力がこもる。
9月下旬の、連休の爽やかな朝。
かつて僕が一人で抱えていたあの暗闇を優しく消し去っていくように、高く澄み渡る秋の青空の下へ。
僕たちは二人で、輝く未来への一歩を確かに踏み出したのだ。
~end~
コメント
10件
お疲れ様でした!そしてありがとうございました!! 人生で初めてってくらいの素晴らしい作品に出会えた気がします。それが終わってしまうと思うとやっぱり悲しいですが、これからの作品も応援させてください!!
遅れました( ; ; )早く見れなくて悔しすぎる😭これは真・懺悔(マジ・クヤシイ)すぎる(?) それは置いといて感想とか書きます! この作品は初めて❤️🤍でビビッと来た作品なんですよね!もどかしさ?とかがキュンキュンしすぎてぎゅんぎゅんぎゅんでした!(???) 改めてここまでの長編を書くなんて私には絶対無理だし、だからこそ凄すぎるし尊敬します! 文字数制限で返信に書きます!!
終わっちゃったあ😭 長かったような、短かったような、 楽しみがひとつ消えちゃいました🥲 ほんとに素敵なお話ありがとうございます!ILOVE💋