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颯

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1 - 颯

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2023年09月23日

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こんにちは!

文芸部の時に書いた作品が残っていたので投稿します笑

高校の時の作品なので暖かい目で見て下さい(^,  ,^)


〈プロローグ〉

 俺には幼なじみがいる。

そいつは容姿端麗で、運動神経抜群、成績優秀という三拍子でそのうえ性格までいい。天は二物を与えずという言葉があるがそれは嘘だと思う。一体前世で何をしたのだろうか。きっと世界を救ったスーパーヒーロー。俺なんか何をやっても普通だ。俺の名前は颯。友達はそこそこいる方だ。勉強も運動も平均くらいで顔は中の下。周りからは「2人は全然違う」とか、「一緒にいて恥ずかしくないの」って馬鹿にされ続けた。それでも俺は、あいつと一緒にいたい 。だから高校も同じところを選んだ。

「高校でもよろしくな、颯」

「うん」


〈第一章〉

高校に入ってあっという間に3ヶ月たった。7月のお昼は灼熱の太陽に照らされとても暑い。「あともうすぐで夏休みだな」とか「期末テストどうだった」とか何気ない会話で盛り上がっていると、急に告白されたと頬を染めながら言ってきた。恋愛に興味がない俺からすると話題を変えてもっと楽しい話をしたい。

 「よかったね、でも断ったんでしょ」

と俺は言った。今までに何度も告白されてるのを見てきた。けど、1度も付き合ったという話を聞いたことがない。中学の時に学校のマドンナと呼ばれた髙橋さんですら振ってた。今回も断っているだろう。それに俺と一緒にいる時間が減るから彼女は作らないと前に言ってたし。あと、めんどくさいとも言ってた。

 「断ってないよ」

雷に打たれたような衝撃が走り頭の中は真っ白になった。俺は「なんで」と声に出してしまった。あいつもびっくりした様子で俺を見た。気まずい雰囲気を作らないように話を続けた。

「その子、可愛いの」

「うん、可愛い」

「そっか」

今までに見たことのない笑顔だった。

どんな子なんだろう。ダメだ、頭の中を回る言葉と暑さで気持ち悪い。色々考えてると急にゲラゲラと笑い出した。

「ごめんごめん、嘘だよ」

嘘って言ったよな。絶対俺の事をからかってる。すごくムカつく。怒りと何とも言えない感情が込み上げ爆発寸前だ。数秒の沈黙の後に

「もうお前なんか知らない。嘘つきは大嫌いだ」

顔を真っ赤にして大声で言った。恥ずかしい。


ーー数日後ーー


「本当にごめん。そろそろ機嫌直せって」

「、、、。」

「颯くーん。無視ですか」

あーうるさいな。話しかけて来るなよ。何日も無視し続けてるんだから諦めて別の人といればいいのに。まぁ、そんなに謝るなら今回は大目に見てやってもいい。

「颯、肩に蜘蛛乗ってるぞ」

「うぎゃあああ」

絶対蜘蛛と目が合った。気持ち悪い。俺は足の多い虫が苦手だ。その中でも一二を争うほど蜘蛛が嫌いだ。恐怖のあまり咄嗟にあいつに抱きついてしまった。いや、今はそんなことどうでもいい、早く蜘蛛をどうにかしないと。

「早く取って」

「んー。俺の名前呼んでくれたらいいよ」

意味がわからず無意識に「え」と声を出してしまった。

「だって、中学卒業以来一度も呼んでくれないじゃん。ほら早くしないと蜘蛛だんだん顔に近づいてるよ」

名前を呼ぶのも嫌だけど蜘蛛がついてるのも嫌だ。考えた末俺が出した答えは、

「そ、颯太。助けて」

久しぶりに颯太の名前を呼んだ気がする。懐かしさと恥ずかしさで胸がいっぱいになった。なんでも出来る幼なじみの颯太。何をやっても平均の颯。同じ「颯」が気に食わなかった。だから高校では名前を呼ぶのを避けていた。でも、1回口にしたらそんなのどうでも良くなった。

「颯太早く取って。蜘蛛が、ひぃ。無理無理」

「暴れるな、取りにくい」 

深呼吸して気持ちを落ち着かせた。

「取れたよ」

10年間一緒にいたから俺の扱いに慣れている。安心するけど、なんかキモいな。目が合い二人同時に吹き出してしまった。こんなに笑ったのは何日ぶりだろうか。今回を機に離れる覚悟をしたが、やっぱり颯太と一緒にいたい。

「アイス奢ってくれたら許してやらないこともない」

「わかった、奢るよ」

「1番高いやつね」

「はいはい」

帰り道、一番値段の高い抹茶のアイスを買ってもらった。

「イチゴ味じゃなくて良かったの」

「お前甘いの苦手だろ、抹茶なら半分こできるかなって」

「ふーん、サンキュー」

蝉の声が空高く響く帰り道。俺たちはアイスを食べながら帰った。来週からは夏休み。俺は夏休みにしたいことをたくさん颯太に話した。全部夏休み中にできるか分からないけど一緒にしようって話になった。早く夏休みにならないかな。


〈第二章〉

案の定、夏休みの間にやりたいことは全て終わらなかった。夏休みの後半は宿題を手伝ってもらっていた。明日明日と先延ばしにしていたら悲惨な目にあった。だけど、夏の大イベントである夏祭りやプール、スイカ割りなどは全てやりきった。長かった夏休みがあっという間に終わって2学期になった。9月に入ったが真夏の暑さがまだ残っている。久しぶりに早起きをしてとても眠い。校長先生の話、長い割には内容が入ってこないんだよな。始業式を終え教室に戻った。

「皆さん、夏休みは楽しめましたか。9月は学校行事である体育祭があります。優勝目指して頑張りましょう。」

体育祭か、運動苦手だから参加したくないんだよな。いいよな颯太は、運動神経抜群で。出る種目は何にしよう。


スターターピストルの音が校庭中に響き渡っている。そう、今日は体育祭当日。俺の願いを無視して、あざ笑うかのように晴れてしまった。現在の気温は37.5℃。とても暑い。前日にてるてる坊主を3つ作り逆さに吊るしたのに。てるてる坊主の歌の歌詞みたいに頭をちょんぎってやろうかと思った。100m走の第2予選が始まったばかりなのに汗が止まらない。

「颯は種目何出るの」

げっ、颯太だ。笑顔が逆にキモいな。赤色のハチマキがよく似合う。俺が出る種目は、綱引きと玉入れ。俺が頑張らなくても周りがどうにかしてくれそうだからこれにしたと言った。こんなに憂鬱なことはない。早く1日が終わって欲しい。あれ、颯太100m走出てないんだ。てっきり出てるもんかと。逆に何に出ているのか気になる。興味津々に「そっちは何出るの」と聞いた。

「俺は、リレーと借り物競争。絶対応援してね」

「絶対に嫌だ」

全世界の陽キャ、絶滅しろ。

おかしい。何もかも順調に行き過ぎている。俺が出る種目は絶対負けるというジンクスがある。しかし綱引きも玉入れも勝ってしまった。嫌な予感がする。その嫌な予感が気になり昼ごはんが喉を通らなかった。

午後になりさらに暑さが増してきた。午後の種目は、ムカデ競走、借り物競争そして一番盛り上がるであろうリレーだけだ。

「借り物競走に出場する選手は集合してください」

そういえばあいつ出るんだっけ。背が高いから見つけやすい。確か100m走って紙に書いてあるお題を持ってくるんだよな。その後は300m走ってゴール。意外とめんどくさそう。隣の女の子が、颯太のお題が好きな人で自分のところに来ないかなと騒いでいる。「よーい、どん」とピストルの音がなった。颯太が一番乗りで走り切って紙を拾った。キョロキョロ見渡し誰かを探しているようだ。探し焦っている顔は面白いな。もう少し前に出て見よう。この時、前に出たことを未だに後悔している。颯太がすごい笑顔でこっちに来る。周りの女の子たちが「探しものは私かな」とソワソワしている。

「颯、一緒に来て」

手を引っ張られてすぐ、きゃーと声が上がった。女の嫉妬深い悲鳴は怖い。一部は嬉しそうに叫んでるけど、なんでだろう。颯太と歩幅が合わない。体力差があるから気を使ってほしい。

「おい、もう少し」

ゆっくり走れと言いかけた瞬間足元がもつれて派手に転んでしまった。すごく恥ずかしい。颯太の足引っ張っちゃって周りからのやじがすごい。早く立たなきゃ。必死に立とうとしたが、痛すぎて立てない。怪我の具合が見るに耐えない事になっている。俺は「ごめん」とか細い声で言った。泣くな、男だろ。

「ごめんな」

颯太は何も悪くない。多分最下位だろうな。さっきまで1位だったのにどんどん抜かれていく。同じチームのブーイング、女子からの視線。すごく怖い。

「勝ちに行くぞ」

どーゆうことだ。今勝つって言ったよな。歩けないのにどうやって。

「ちょ、勝手に持ち上げるな」

急に俺を持ち上げてきた。最初はジタバタしていたが落とすぞと言われ従うことにした。モテる理由がわかったかもしれない。一人また一人と抜きついに1位でゴールした。

歓声が鳴り止まない。本当に勝っちゃった。

「俺、約束は守る主義なんで」

颯太の笑顔は太陽だ。俺には眩しすぎるよ。颯太は「ありがとう」と「頑張ったね」と言って頭を撫でてくれた。人たらしめ。

「そういえば、お題何だったんだ」

「『大切な親友』だよ」



〈エピローグ〉

楽しかった学校生活もあっという間に終わり、俺たちは受験生になった。颯太は指定校推薦、俺は一般受験で同じ大学を受けた。そして今、一般受験の合否発表の真っ最中だ。308番、308番。「あ、あった。」

紹介するね。

こいつは俺の幼馴染の颯太。容姿端麗で、運動神経抜群、成績優秀という三拍子でそのうえ性格までいい。天に百物を与えられた男だ。前世はきっと世界を救ったスーパーヒーロー。

そして俺の1番大切な親友。



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