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新庄 駿
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#文芸アクション
大正
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#サイコパス
――ツーー、ツーー、ツーー。
黒い影の沼が完全に消え去り、古い雑居ビルの地下アジトには、ただ不気味な静寂だけが残されていた。水無瀬蹴斗の気配も、そして彼に攫われた霧谷遼太(はるた)の気配も、完全に消え失せている。
「くそっ……! 弾かれる……!?」
雨河慶介が狂ったように床へ風の刃を叩きつけるが、鋭い突風は火花を散らして虚しく霧散した。水無瀬が消え去った床の影は、まるで強固な鉄壁と化し、妖界(あやかしかい)へ繋がる座標そのものを完全にロックしている。
「……ダメです。風の結界でも突破できません」
星野りのがノートパソコンの画面を見つめたまま、かつてないほど冷たい声を出す。画面には、妖界の地理データが次々と真っ黒に塗り潰されていくログが表示されていた。
「水無瀬は妖界へのアクセスパスを完全に書き換え、独自の『遮断結界』を展開しました。私のハッキングでも、この名門の暗号を解くには最低でも丸三日はかかります。……その頃には、霧谷くんの精神はもう……」
「チッ……! 役所の書類手続き並みに遅い結界を張りやがって!」
お札(ふだ)を握りしめた綾小路愁が、冷酷な瞳の奥に激しい怒りを燃やす。名門・水無瀬の結界術は、裏の暗殺名門『綾小路』の秘術を以てしても、外側から即座に破壊することは不可能なほど完璧だった。
「水無瀬の奴、神代(はるた)の身代金を要求する気じゃない。あいつの狙いは、神代の『覚(さとり)』の能力そのものだ。……今すぐ中に入ってあいつをお祓いしないと、僕の持つ利権がすべてあの違法コピー野郎に奪われる……!」
人間の世界に取り残された3人は、妖界へ入る手段を完全に失い、ただ漆黒の結界を前に焦燥感に駆られるしかなかった。
◇
――その頃、遮断結界の向こう側。妖界にある水無瀬の巨大なアジト。
「あ、あ、頭が……割れ、そうだ……っ!!」
遼太は呪術的な椅子に頑丈に縛り付けられたまま、絶叫していた。胸元にかざされた『他人の精神を操る禁忌の呪具』から、ドクドクと赤黒い瘴気が溢れ出し、遼太の心臓へと直接流れ込んでいる。
キィィィィィィィン!!!!
脳裏で、あの共鳴ノイズの何百倍もの爆音が鳴り響く。東の名門・神代家が誇る「覚」の読心と精神干渉の力が、呪具の禍々しい力によって強制的に引き出され、周囲の空間へと無理やり拡張されていく。
「ははは! 素晴らしい出力だ、神代の跡取り君!」
すぐ目の前で、水無瀬蹴斗が常盤木の制服を着崩したまま、三白眼を狂気的にぎらつかせ、歪んだ影を躍動させていた。
「君の精神(こころ)が、僕の洗脳システムと完全に同調していく。……あと少しで、君の自我は消失し、僕の命令を妖界全土へ発信するだけの『拡声器(システム)』になるんだ」
「ふ、ざけ……る、な……! 俺は……絶対に、お前の、思い通りに……!」
遼太は歯を食いしばり、必死に自分の精神のコアを守ろうとする。しかし、水無瀬の影鰐(かげわに)としての冷酷な暗殺術と呪具の濁流は、容赦なく遼太の意識の壁をパキパキとひび割れさせていく。
(慶介……星野……綾小路……!)
助けを求めようにも、頭の奥のノイズは自分の悲鳴で掻き消され、人間の世界にいる仲間の気配は何も感知できない。完全に孤立無援の異界の闇の中。
「さあ、人間のフリという『窮屈な仮面』を脱ぎ捨てて、僕の奴隷になろうか」
水無瀬の冷たい声が脳内に直接響き渡る。激しい濁流に意識を飲み込まれ、遼太の瞳からじわじわと光が消え失せていく。あと数十秒もすれば、彼の心は完全に書き換えられ、水無瀬の操り人形へと成り下がってしまう――。
コメント
1件
うわ、めっちゃ重い……😭💦 遼太くん、完全に孤立してて本当に辛すぎる。慶介たちが目の前で遮断されて、どんな気持ちで風の刃叩きつけてたんだろうって思うと胸が痛い…… あと数秒で心書き換えられそうな絶望感、えぐいです。でも遼太くん、まだ抗ってるのが尊い……次どうなるんだろ、続き気になるけど読むの覚悟いるな🥀