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辺りはしんと静まり返った。私の他はみんな倒れている。私はもう死を待つだけだった。
「あ……雨……でも……降れ……ば」
出来れば喉の渇きを潤してから掘りたかった。
ポカンと空に口を開けていると、一陣の冷たい風が吹いた。
ポツリ。
空から滴が落ちてきた。
雨が降ってきた。
しばらく必死に上を向き、口いっぱいに雨水が溜まると、それを飲む。
私は体の中に水分が行き届くと、勢いよくラクダ色のTシャツを投げ。砂地を掘り返す。中は小降りの雨が降っていても予想以上に熱い。
もう限界だった。私は倒れ込むように、やり切れない気持で、砂地を思い切り叩いた。その拍子に小さい穴ができた。
「じりりりりりー」
叩いた場所から砂だらけの赤い目覚まし時計がでてきた。
辺りに赤い目覚まし時計の音が鳴り響く。
「こ……これで元の世界に戻れるか……も……みんな……やったぞ……」
私は雨の中で、ふらふらの体を鞭打ちながら、砂地に埋まっていた赤い古風な目覚まし時計を止めた。
イースト・ジャイアントは騒然となっていた。中の3人の客が衰弱して倒れたのだ。救急車がサイレンを鳴らして、車の多い道の中央を走る。店内に白い服と白いメットを被った数人の男たちが担架を3本携えて入ってきた。
3人とも意識不明の重体だった。
「毒でも入っていたのかしら……」
「この店に限ってそんなことは……」
周囲に野次馬たちができた。