『大日本美術大学』の事務所の前に良仔はいた。入室して尋ねるまでも無く、事務所横の掲示板に『モデルアルバイト募集』は沢山出ていた。「猫田助教授の絵画モデル」これは時給2千円で、1日3時間。「出来ればショートカットの女性」と指定があった。「オイルアート同好会のモデル」男女問わず。「面白い顔芸が出来る人」と指示有り。日当5千円。「九曽村教授の美人モデル」これは「ヌード募集」で有り、怪しい。しかし日当1万円だった。
良仔は事務所に入り、事務員の女性に聞いた。「あのう、モデル希望なんですけど、どのくらいの期間雇って貰えますか?」「先生方の作品によりますね。1か月の場合も有るし、大作ですと2年ぐらいザラです。」と言われた。 「あなたのほうで良くても、先生がお断りされる場合も有りますから。」とも言われた。
取り敢えずメモに控え、また来校することにした。
大学は近代的なビルの様な造りで、しかし校門はヤクザの親分の邸宅の様に高い堀と、見るからに高級な寺社の山門のようだった。
良仔は美大というところに初めてやってきたのだが、(まあアタシにはモデル希望で来るくらいしか縁の無いところだ)と思った。