テラーノベル
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出産から数日が経ち、体の方も順調に快復してきた頃を見計らって、お父さんが病院を訪れた。
「おぉー、これは……可愛い。前に話してもらった通りに、本当に可愛らしい男の子と女の子の双児なんだな!」
すやすやと眠っている、二人の赤ちゃんたちに、父が感嘆の声を上げる。
「そうでしょ? 男の子と女の子の二児を、いっぺんに授かるだなんて」
「そうだよなー、う〜む!」
ベビーベッドに顔を近づけ、中をまじまじと覗き込んで、またも大きな声になる父に、
さすがに見兼ねて、「しー、お父さん」と、唇に指をかざした。
「やっと寝たんだもの、あんまり大きい声を出したら、また起きちゃうでしょ」
「ああーっと、すまない。だがこれは、本当に……可愛いな」
「お父さんたら、可愛いばっかり」
傍らで見守る彼と顔を見合わせ、ふっと笑みをこぼす。
「こんなにも可愛い孫が二人もできて、じいじはとても幸せだよ。ありがとう、彩花、そして貴仁君」
父は、既に自らのことを”じいじ”と呼んで、もう一度赤ちゃんたちの顔を間近に見つめると、本当に嬉しくてたまらないといった風で、にこやかに頬を緩ませた。
「ところで、」と、父がベビーベッドから顔を上げると、
「名前は、もう決まっているのか?」
興味津々な風を隠し切れない様子で、そう尋ねてきた。
「うん」と、頷いて答える。
「名前は、貴仁さんといっしょにいろいろと考えて、女の子は結ぶって書いて、”結”に、男の子は誓うで”誓”にしたの。……互いに結んだ誓いを、いつまでも忘れないようにって……ね?」
名付けた由来を伝えると、
「……いい名前だな」
父が優しげに顔をほころばせた。
……と、ふと目を覚ました結と誓の二人がぐずり出して、私が誓を彼が結を抱き上げた。
「貴仁君も、慣れたものだな」
感慨深そうに、父が見つめる。
「……幸せになりなさい。子どもたちと、貴仁君とともに。私も、じいじとしていつでも力になるから」
「ありがとう、お父さん」
「ありがとうございます、お義父さん」
──そこへ、菜子さんと源治さんも揃って現れて、病室内はにわかに賑やかになった。
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