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あめ猫
3,650
昼。
いつもより少し遅い時間。
——ピンポン。
インターホンが鳴る。
クールキッドが顔を上げる。
「にいに?」
「……だろうな」
セブンが立ち上がる。
ドアを開ける。
エリオットが立っている。
「来たぞ」
軽く手を上げる。
「……ああ」
短く返す。
中に入る。
クールキッドはすぐに反応する。
「にいに!」
ぱっと顔が明るくなる。
「元気だな」
エリオットは軽く頭を撫でる。
そのまま部屋を見る。
いつも通り。
でも——
セブンの様子が少し違う。
「……何かあったか」
すぐ気づく。
「……」
セブンは少しだけ黙る。
それから。
「……苦しいって言われた」
そのまま言う。
一切の装飾なし。
そのまま。
一瞬。
エリオットが止まる。
意味を理解する。
想像する。
そして——
「……はは」
普通に笑う。
隠さない。
「……笑うな」
セブンの声が低くなる。
でも怒りきれてない。
エリオットは肩を揺らす。
「いや、そりゃそうなるだろ」
「……何が」
「力入れすぎ」
即答。
「……加減が分からない」
正直に言う。
エリオットは少しだけ目を細める。
「まあ、だろうな」
納得したように頷く。
「で?」
少しニヤッとする。
「ちゃんとやり直したか?」
「……してない」
「じゃあ失敗したままじゃん」
軽く言う。
「お前、不器用すぎ」
セブンは何も言い返せない。
事実だから。
「……」
少しだけ沈黙。
それから——
エリオットが一歩近づく。
「じゃあさ」
軽い調子で。
でもどこか楽しそうに。
「俺もぎゅーして」
ぽん、と言う。
「……は?」
セブンの動きが止まる。
完全に想定外。
「練習」
エリオットは平然としている。
「……ふざけるな」
低く返す。
でも。
即拒絶じゃない。
迷いがある。
エリオットは肩をすくめる。
「子ども相手だけだと分かんねえだろ」
理屈っぽく言う。
「大人で試せ」
セブンは黙る。
一理ある。
でも。
「……お前でやる必要はない」
「他にいないだろ」
即返し。
逃げ道を潰す。
「……」
セブンはしばらく動かない。
クールキッドはそのやり取りを見ている。
少し面白そうに。
「パパ」
「……何だ」
「やって」
無邪気に言う。
完全に流れに乗っている。
「……」
逃げ場がなくなる。
セブンは小さく息を吐く。
「……一回だけだ」
低く言う。
エリオットが笑う。
「はいはい」
そのまま、少し腕を広げる。
受け入れる姿勢。
「……」
セブンが近づく。
動きは相変わらずぎこちない。
でも。
さっきとは違う。
少しだけ、意識している。
力。
距離。
触れ方。
ゆっくり。
軽く。
抱き寄せる。
「……」
数秒。
静か。
エリオットはそのまま。
何も言わない。
それから。
「……うん」
小さく言う。
「今のは大丈夫」
評価。
シンプル。
セブンはすぐに離れる。
「……こんなものか」
「そんなもん」
エリオットは頷く。
「最初より全然いい」
クールキッドが近づいてくる。
じっと見る。
「パパ」
「……何だ」
「いまの、だいじょうぶ」
同じことを言う。
でも。
少しだけ嬉しそうに。
セブンはわずかに目を細める。
「……そうか」
短く返す。
それだけ。
でも。
昨日より、確実に前に進んでいる。
エリオットはその様子を見ている。
少しだけ満足そうに。
「な」
軽く言う。
「やればできるだろ」
セブンは何も言わない。
でも否定もしない。
クールキッドはそのままセブンにくっつく。
今度は自然に。
セブンも、少しだけ腕を動かす。
さっきより、ちゃんと。
加減して。
包み込む。
「……」
小さく、静かな時間。
でも。
確実に変わっている。
ほんの少しずつ。
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