テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
───『███君は善い子だね。』
記憶も薄れ、本当にそんな言葉だったのかも曖昧になるほど昔、誰かにそう言われた。
でも、何を持って『善い子』なのかが分からなかった。子供のころは、いい子とは褒め言葉として受け取り思っていたが、今になっては何が何だか分からない。
ましてや自分は善い子なんかではなく、むしろ悪い子だと思う。
いつも心のどこかでは他人を蔑み、小馬鹿にして、自分より格が下の人間がいるのだと思い込み、優越感に浸っているどうしようもない子供だった。
本当に、自分ではどうしようもなかった。
それでも誰かのために何かを成すのは、軽蔑でも羨望でも、どれでもなくただ喜びと嬉しさの入り交じった複雑な感情。単純なことだけれど、それが自分の生きる意味だと言えば、俄然やる気が出てきていた。
ただ、人の役に立ったところで人を小馬鹿にしている時点でもう『善い子』ではないだろうに。それに気づけなかった自分は余程の阿呆で、馬鹿にできる立場ではなかったんだ。
それが今になって気づいて、社会という壁に立ちはだかれ、大人になったことへの絶望すら感じている。
辛いし逃げ出したい。上司や誰かに叱られて拗ねるで済んでしまう話ではない。
とにかく今は、誰かのために何かをしてあげる事もする事もできない。
生きる意味が……分からなくなってしまった。