人は車輪のようにぐるぐると生と死を繰り返して生まれ変わるという。
それが輪廻転生。
榊原 絵里香は過去に不倫という過ちを犯して、生きていくのに悲観し自ら命を絶った。
それから4年もの歳月が流れた。
死んで生まれ変わる周期は平均して約4年はかかると言われている。
真っ暗な海の中に飛び込んで両膝を抱えた。
水の中は冷たい。
ぶくぶくと空気が上と飛んでいく。
真上に明るい光が見えた。
きっとあそこに行けば生まれ変われるはずと思い、絵里香は上へ上へ泳ぎ進めていく。
細胞分裂を繰り返し、絵里香の魂は1人の人間として新たな魂となって生まれてきた。
「おめでとうございます。元気な女の子ですよ」
やっと息ができる。
まだ目が開かない。
苦しい。
話せない。
泣くことしかできない。
抱っこされて少し落ち着いた。
目をゆっくり開ける。
視力がまだ出来上がっていない。
目の前には顔立ちの綺麗な女性が汗をかいてくたくたになっていた。
(この人がお母さん?)
ベッドの横で付き添っていたのは榊原 晃 本人だった。
(まさか、晃がお父さん?)
前世の記憶を残したまま生まれ変わっている。
榊原 絵里香はこの2人の子どもとして新たな人生の幕が上がろうとしていた。
晃のそばにいられる。
妻としてではなく子どもとしてずっとそばにいられる。
いつか大人になって実質的にははなれるかもしれないが親として心がつながったままでいられる。
絵里香は生まれ変わってこの上ない幸せを噛み締めていた。
お金を稼げばいいってわけじゃない。
絵里香は晃とお金じゃなく心のつながりを持ちたかった。
間接的じゃなくお金を持っていなくても繋がれる絶対的存在。
「親子」という心のつながりだ。
【 完 】