テラーノベル
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『ただいま』
家に響く声。部屋に電気はついてなくて、誰もいない。一人だけだと妙に寂しい部屋で、椅子に腰を下ろす。
もう兄ちゃんは寝たのだろうか。まあ、そうだろう。もう1時だ。サッカー選手が、夜遅くまで起きて体調崩しました、なんて笑えない。
少し肌寒くなってきた季節。夜なのもあり、気温は低い。もうシャワー浴びて寝るか___
そう思ったとき
「凛、帰ったのか」
突然部屋の電気がついて、寝室から兄ちゃんが出てきた。
『え、兄ちゃん…』
明日も練習あるだろ…?突然の出来事に驚いて固まっていると、目の前にコン、とカップが差し出された。中には温かいココアが入っている。
「寒いだろ」
それだけ言って横を向いてしまう兄ちゃん。不器用で、優しい。いつもなら嬉しくなってすぐ飲むのに、今日は手が動かない。
『…飲まないのか。じゃあ俺が飲む』
止まっている俺に少し不機嫌になってそう言って、手を伸ばす。俺が慌てて止めると、
「…もう寝る。お前も早く寝ろよ」
と言ってきた。気遣いが嬉しい。でも今はそれ以上に、そんな兄ちゃんを裏切っている自分へのい苛立ちと、罪悪感が混ざってどうにかなってしまいそうになる。
「あ」
寝室に戻りかけた兄ちゃんがふと立ち止まって
「最近帰り遅いよな。何してる?」
と聞いてくる。心臓が跳ねる。どうしよう、どうしよう、どうしよう___
「…なんでもない」
嘘をついた。もうこうなってしまったら
後には戻れない。
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しゅぴ
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コメント
1件
ああ、この不器用な兄ちゃんの優しさ、すごく刺さりました。「寒いだろ」って一言で差し出したカップ、横を向いてしまう照れ屋な仕草──全部が優しさの裏返しで。でもその優しさが逆に、凛くんの罪悪感を強くしてるんだなあ。「嘘をついた」で終わるラストの重さ、胸が締めつけられます。この裏切りを抱えたまま、どうなっていくんだろう…続きが気になりますね。