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星崎視点
その日は最悪だった。
朝早い時間帯の仕事があり、
支度して家を出ようと玄関のドアを開けたら、
つい数分前までは晴天だったのに、
通り雨のような土砂降りの雨が視界に入った。
「は?
嘘でしょ?」
結局傘を取りに部屋に戻り、
もう一度玄関を開けた。
お昼に入っていたラジオ番組でゲスト出演した時は、
なぜか滅多に起きないらしい機材トラブルが発生した。
相手が機械だから文句は言えないが、
散々だった。
「はぁ⋯⋯」
思わずため息が漏れる。
しかもここには知らない人ばかりで、
談笑できるほど、
打ち解けられている人がいない。
夜は夜でライブハウスで歌を披露するはずが、
どうもダブルブッキングされていたようで、
会場に着いて必要ないと言われてしまった。
日本ではまだ僕の需要がないから仕方がなかった。
そう言えば一人で行動するなと、
警告されていたなと思い出して、
その場で深瀬さんに連絡を入れた。
『仕事流れちゃいました。
今一人ですが、
帰りはどうしたらいいですか?』
ものの数分で既読がつき、
すぐにメッセージが送られてきた。
『これから打ち合わせだよ。
手が離せないから優里さんに頼んでみて』
正直困った。
ライブツアーをひかえている優里さんのことを思うと、
今はゆっくりと休んで欲しいところだ。
僕の個人的なわがままに、
振り回していいのか迷ってしまった。
Googleマップで現在地からアパートまでの距離を調べた。
約560m(徒歩7分)と表示される。
(1km未満か⋯どうしよう?)
歩いて歩けないような距離ではない。
僕が鞄をぎゅっと握ると、
防犯ブザーが目に入る。
何も起こらないことを祈って、
僕は歩いて帰ることにした。
どうせこの視線だって、
いつまでも続かないだろうから、
向こうが諦めてくれるまでの辛抱だと思うようにした。
そうはいってもやっぱり怖いものは怖いため、
出来るだけ人通りの多い大道路から、
遠回りして帰ることにした。
アパート自体が住宅街にあるため、
どうしても人通りが少ない。
警戒するには越したことないだろう。
僕が歩き始めて5分くらいした頃だった。
大道路が途切れた。
ここからは更なる警戒が必要になる。
スタスタ⋯⋯⋯⋯ピタッ
少し歩いては不定期に後ろを振り返る。
それを僕は何度か繰り返していた。
スタスタ⋯⋯⋯コツコツ
え?
僕は思わず勢いよく後ろを振り返る。
そこには誰もいない。
(それじゃあ⋯さっきの足音は何?)
視線の主と同じ人?
どうして僕を狙っている?
つけ回す目的は何?
ただひたすらに恐怖でしかなかった。
ガクガクと足が震えて、
恐怖心でその場から動けなくなる。
(変な意地を張らずに、
優里さんに連絡したらよかったのかな?)
「ちょっと君!」
こんな時間に一人?
何してるの?」
顔を上げるとそこには自転車から降りて、
僕に近づいてくる警察官がいた。
おそらく巡回の途中だろう。
「あ⋯今帰るとこです」
タタタッ⋯⋯⋯⋯
あれ?
足音が遠ざかった?
諦めてくれたのだと分かり、
ホッと胸を撫で下ろした。
「そうですか。
ではお気をつけて」
丁寧に帽子を取ってペコリと会釈して、
その警察官は来た時と同じように自転車で去って行った。
僕は全身から力が抜けそうになりながら、
フラフラとした足取りでアパートに帰り着いた。
LINEですぐ深瀬さんに、
無事に帰り着いたことを伝えて、
そのままベッドにダイブした。
極度の緊張状態から解放されたためか、
その日はご飯も食べずに眠りに落ちた。
雫騎の雑談コーナー
はい!
ストーキング行為を受けることになったら、
こういう時ってどうします?って例え話をしても、
もちろん被害を受けないのが一番ですが、
自分に実際に降りかからないとわからないこともありますよね。
しかもひと昔前はストーカーを処罰する法律なんてありませんでしたからね。
でも痛ましいストーカー殺人が発生して、
ストーカー規制法なるものが出来て、
今はしっかりと警察に被害届を出したら、
規制前より親身になって相談にものってくれて、
必要な場合は居住地周辺を巡回もしてくれるそうです。
ということで本編です!
ついに視線の主からストーキング行為を受けた星崎。
怖いと思いつつも話を大きくしたくない星崎は、
たまたま遭遇した警察官に相談せず別れてしまうんです。
そのことが仇とって更なる事件に巻き込まれていくかも?
ということでお楽しみに〜♪