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「第三章 赤月の巨影」(第一戦)
巨人の掌が、空間そのものを押し潰すように迫ってきた。
星舟は衝撃波に弾かれ、船体がきしむ。
あなたは操縦席から飛び出し、甲板に駆け上がった。
「行けるか!」
「行くしかないでしょ!」
セレスティアの背から銀河の翼が広がり、数十の小さな星が浮かび上がる。
彼女はそれらを一斉に投げ放ち、星々は軌跡を描きながら巨人の腕へと突き刺さった。
しかし、赤い結晶がそれらを受け止め、砕けた光は宇宙に散った。
巨人の目が赤く輝き、口のない顔から低い振動が響く。
次の瞬間、全方位から重力がねじれ、あなたの体が宙に引き上げられた。
呼吸が詰まり、胸が押し潰されそうになる。
――その時、セレスティアが叫んだ。
「目を閉じて!」
彼女の声と同時に、無数の星光が爆ぜ、空間を裂く。
巨人の胸の結晶にひびが入り、低い唸り声が響いた。
あなたは着地と同時に、腰の星剣を抜き、光の刃を胸の裂け目へ突き込む。
金属のような抵抗の向こうで、何か柔らかいものが砕けた。
巨人は大きく仰け反り、赤い粒子をまき散らしながら後退する。
その瞬間――セレスティアが頭を押さえて膝をついた。
「……っ……また……声が……」
その瞳に、一瞬だけ映ったのは、赤月の下で立つ同じ巨人――
ただし、その隣には若き日のセレスティアが微笑んで立っていた。
幻はすぐに消え、巨人はゆっくりと星雲の奥へ退いていった。
戦いは終わったが、確信だけが胸に残る。
あれは、ただの敵ではない。
セレスティアの“何か”と深く結びついている。
彼女はまだ額に汗をにじませながら言った。
「……あれは、私が……」
言葉はそこで途切れた。