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ブレイバーゲーム

1 - Prologue 〜旅立ち〜

2024年02月01日

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 魔王のいなくなった世界。

 そこに訪れたのは、真の平和ではなく、魔族軍の解体により戦意を失くし、商売にもならず、危険も伴う冒険職に就く者の急速な減少だった。

 それにより、まだまだモンスターや、危険な思想を抱く魔族の残党を危惧した国々は、学業の中に、剣術学、魔法学など、基礎戦闘知識を取り入れ、更に、『ブレイバーゲーム』という四人パーティでの競技を発足させ、国々のトップになったチームには、名誉ある功績を与えるシステムを取り入れた。

 小さな村、キルロンド王国の隅、森に囲まれたハイス村に生まれたヒノトは、絵本の中の現実に存在した伝説の勇者に憧れ、今、王国近郊の学校へと入学する。

「本当に一人で大丈夫……?」

 ヒノトの母は、心配そうにヒノトを玄関まで送る。

 父は、窓越しにタバコを吸っているのが見えた。

「ちょっとあなた! 見送りくらい……」

 しかし、母の声は遮られる。

「男が旅立つ時はな、言葉なんて要らねぇんだ」

 そう言うと、父は口から白い煙を吐き出した。

「ああ、そうだな……。俺、行ってくるぜ……! 絶対、伝説の勇者みたいになってやるんだ!」

 いつものヒノトの元気な声に、母は微笑んだ。

「無理しないで。歯はちゃんと磨いて、夜更かしはしちゃダメ。難しい教科もしっかりと……」

「母さん……」

 ヒノトは、母の肩にそっと手を置いた。

 手からは、温かい空気が漏れ出していた。

「ふふ、そうね。言葉は要らないのよね。元気で行ってきなさい! ヒノト!」

 ヒノトは、笑顔で母のことを見つめた。

 しかし、やはり『言葉は要らない』なんて、心配性の母には出来ず、去って行く背中にまた声を掛ける。

「ヒノト! 最後に、絶対忘れちゃダメ! 何があっても勇者なら笑ってみせるのよ!」

 その声に、ハッとすると、ヒノトは振り返る。

「分かってるよ! 勇者になるんだからなー!」

「フッ、青二才が……」

 そんなことを呟く父の目は、少し潤んでいた。

 少しでも多くの学生を増やしたい国からは、希望者に馬車を手配し、馬車に乗ること約五時間。

 田畑を超え、山々を超え、雑木林を抜け、更にはヒノトが目を輝かす、豪華な街々をも抜けた。

「着きました。『キルロンド学寮』になります」

「ありがとうございました!」

 馬車から降りると、ヒノトは目を輝かせる。

 その大きな学校は、村随一の大きさを誇る教会を遥かに凌ぐ大きさを誇り、大きな口を開けた。

「すげぇ……今日からここの学生かよ……!」

「ま、厳密には『明日から』だがな」

 背後からヒノトに声を掛けたのは、馬車から降りてきた背丈の少し高い、赤髪の少年だった。

「おお! お前も新入生か!?」

「まあな。俺はリゲル。よろしくな」

 すると、リゲルはニカっと手を差し出した。

「ああ、俺はヒノト! ソードマン志望だ!」

 ニカっと笑い、リゲルに握手を返した。

「お前も『ブレイバーゲーム』参加者か! 俺もソードマン志望なんだ! 同じチームは組めないが、お前には負けないぜ! ちなみに、得意魔法はなんだ? 俺は『炎魔法』が得意なんだ!」

 少し俯き、ヒノトは真っ直ぐな目を向けた。

『魔法が放てない』ことが俺の特技だ……!」

「『魔法が……放てない……?』」

 リゲルは、反復してヒノトの言葉を唱える。

 この世界は、魔法を放つ、魔法で生活する、それが当たり前の世界だった。

 そんな中で、魔法が放てないと言うことは、劣等生もいいところだった。

「それ……本当だとしたら、ブレイバーゲームなんか……」

「いいや……」

 心配そうに見遣るリゲルに、笑顔を向ける。

「俺は、強いぜ……!」

 その眼光に、リゲルはゾクっと背筋を凍らせる。

「アッハハ! なんか分かんねぇけど、強いのか! ならやっぱ、負けねぇ! 最初に話し掛けたのがお前でよかったよ、ヒノト! ライバルとして、改めてよろしくな!」

「おう!」

 今度は、二人は拳と拳を合わせた。

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