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「ごめん」
私は今日も、そう言った。
クラスでプリントを配るとき、
ちょっと順番を間違えただけなのに。
「ごめん」
廊下で少しぶつかっただけなのに。
「ごめん」
気づけば、私は一日に何十回も謝っていた。
本当は、そんなに悪いことしてないのに。
でも。
謝っておけば、
嫌われない気がしたから。
怒られない気がしたから。
その日の放課後。
私は廊下で、また言った。
「ごめん!」
ぶつかってしまった相手は、クラスメイトの陽斗だった。
「……なんで謝るの?」
陽斗は不思議そうな顔をする。
「え?」
「だって今、俺が前見てなかっただけだけど」
私は少し困った。
「でも、なんとなく…」
陽斗はため息をついた。
「それ、癖?」
「うん…たぶん」
すると陽斗は言った。
「それ、やめたほうがいいよ」
私はびっくりした。
「え?」
「なんで?」
陽斗は少し考えてから言う。
「だってさ」
「お前が謝るたびに」
「なんか、お前が悪いみたいになるじゃん」
その言葉に、私は黙った。
確かに。
本当は違うのに。
いつの間にか、全部
“私が悪いこと”みたいになっていた。
陽斗は続ける。
「悪いときに謝るのは大事だけどさ」
「悪くないときまで謝る必要ないだろ」
「……」
「もっと自信持てよ」
胸の奥が、少しあたたかくなる。
そのとき。
先生の声がした。
「おーい、プリント落ちてるぞ」
振り返ると、さっき配ったプリントが床に散らばっていた。
私は慌てて拾う。
「ごめんなさ…」
そこまで言って、止まった。
先生は笑った。
「いや、先生が落としたんだ」
「むしろありがとうな、拾ってくれて」
私は少しだけ笑った。
いつもなら、また謝っていた。
でも。
今日は違う。
私は顔を上げて言った。
「いえ、大丈夫です」
そして思った。
謝ることは悪いことじゃない。
でも。
自分を小さくするために
謝る必要はないんだ。
だから私は__
むやみに謝っちゃいけないと思った。