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カントリーヒューマンズ短編集

1 - 第1話 くだらない話とティータイム

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2025年07月23日

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イギリスは午後のティータイムに命をかけている。そのことをフランスはよく知っていたし、それゆえに、わざと午後三時ちょうどに彼の家を訪れた。

「モンシェリ〜♪」

ワイン片手に、まるで自分の家のようにドアを開けて入ってくるフランスに、イギリスはげんなりした顔を向ける。

「おまえ、アポは……?」

「そんな無粋なもの、私の国にはないのよ〜。それよりティー、まだ?」

フランスはソファに座り、靴を脱ぎ、勝手にクッションを抱いている。

イギリスはため息をつきながらも、キッチンへ向かい、ティーポットにお湯を注いだ。

「なにしに来たんだ。まさか本当に茶が目当てじゃないだろうな」

「それもあるけど、ちょっと退屈してたのよ。ドイツは真面目すぎるし、アメリカはうるさいし。で、思ったの。“退屈”と言えば君だって」

「褒めてるつもりか、今のは」

ティーと一緒にビスケットをテーブルに並べながら、イギリスは眉をひそめた。

それでも、ティーカップはフランスの前にきちんと置かれていた。

「……サンキュー。ちゃんとレモン入れてるわね。愛を感じるわ〜」

「殺意なら感じてろ」

フランスは紅茶を一口すすり、ふっと目を細める。

「……でもさ、こうして静かにお茶できる相手って、意外と貴重よね」

「俺はおまえが静かだったことなんて一度もないと思うが」

二人は顔を見合わせ、少しだけ笑った。

ティーカップの中で揺れる紅茶の色と、赤ワインの深い色が、窓から差す西日で重なった。

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