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お化けとバズれ!

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お化けとバズれ!

1 - 第一話:バズりたい青春は真夜中に叫ぶ

2025年12月02日

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昼休みの教室。

誰もがパンやお弁当を広げながら友人と笑いあう中――

窓際の席に座ったミチルは、一人スマホ画面とずっとにらめっこしていた。

「……嘘でしょ、昨日の動画、再生200回もいってない……?」

彼女は前髪を掻き上げ、深いため息をつく。

「いやいやいやいや! 200回って! 低すぎ!」

その隣で、相棒のハルカが半泣きで叫ぶ。

2人は高校生YouTuberコンビ “ミハチャン!”

テンションの高さと、仲の良さと、勢いだけで突っ走るチャンネルだが――

数字だけはどうにも伸びなかった。

「昨日の動画、編集頑張ったのにねぇ…」

ミチルの言葉に、ハルカは机に突っ伏した。

「ミチルのくしゃみ100連発、私めっちゃ笑ったのに〜〜!

…いやまあ私は笑ったけど、世間は笑わないのかぁ〜……」

「そもそもさ、ハルカ。

“普通のこと”しててもバズらないんだよ。

ミチルが急に真面目な顔をした。

その目はどこか、決意に満ちている。

「――だから、ヤバいことしよ?」

ハルカは顔を上げた。

嫌な予感しかしない。

「ヤバいって……どうせまた意味わかんないやつでしょ?

“学校の屋上で100回ジャンプ!”とか…」

「ちっちっちっ」

ミチルはスマホを突き出した。

そこにはSNSでトレンド入りしている投稿。

#森の廃病院

#自分そっくりのお化け

#深夜に現れる影

古い白黒写真が添付されていた。

木々に埋もれた病院の廃墟。

窓の奥に、少女の影が立っている。

見れば見るほど不気味だ。

ハルカは絶句。

「……ミチル、まさか」

ミチルはにやりと笑った。

お化けでバズるの!

「いやいやいやいやあぁぁぁぁぁ!!

命を犠牲にして伸びる再生数なんて嫌ぁぁぁ!!」

周りのクラスメイトが振り返るほどの悲鳴。

しかしミチルは真剣そのもの。

「大丈夫だよ。出るわけないじゃんお化けなんて。

もし出たらその時は…その時!」

「その時が“最後”になる可能性あるんだけど!?」

だがミチルは止まらない。

「明日の夜、ライブ配信で行こう。

“高校生女子2人、ガチ心霊スポットから生配信!”

どう? 絶対バズる!」

ハルカは唇を噛む。

怖い。泣きたい。帰りたい。

……でも。

(ミチルがやるって言ってるなら、私が行かないわけにいかないよね……)

2人は小学校からの親友で、ずっと隣に立ってきた。

泣く時も、笑う時も、怒る時も。

だから、今日も――

ハルカは肩をすくめながら笑った。

「……じゃあ、死なない程度にね?」

ミチルは嬉しくて飛び跳ねた。

「いえーーい! これでバズり確定〜!!」

こうして2人の、取り返しのつかない夜が始まった。


◆ 深夜 0 時、森の入口

夜の森は、昼とは別世界だった。

木々が風で揺れる音すら、不吉な囁きに聞こえる。

「うわ……なんか湿ってる匂いする……」

「ハルカ、テンション低いよ!

ほらライブ始めるよ!」

ミチルはスマホを構え、配信スタートボタンを押す。

画面に視聴者数が表示され、コメントが流れる。

“きた!”

“女子高生の肝試しとか最高すぎる”

“気をつけて!”

「みんな〜〜!深夜だけど来てくれてありがと〜〜!!」

ミチルは全力で手を振る。

ハルカは震えながらカメラに映った。

「こ、ここほんとに怖いよ…私帰りたい……」

コメントが笑いに包まれる。

“ハルカ涙目で草”

“絶対なんか出るってこれ”

そんな中、森を進むと――

それは現れた。

白く朽ちた建物。

窓は割れ、蔦がからみつき、病院の看板が落ちかけている。

「本物じゃん……」

ハルカの声は震えていた。

ミチルはむしろテンションが上がっている。

「よっしゃ行くぞー!!」


◆ 廃病院・内部

中に入ると、空気が急に冷えた。

床にはカルテが散乱し、

天井は崩れ、

壁には手の跡のような黒い汚れ。

「うわ〜〜!やば!雰囲気120点!」

「点数つけるな!」

配信は盛り上がっていた。

視聴者も増え、コメントが止まらない。

“本物すぎるだろここ”

“後ろ!なんか動いた!”

“え、今人影なかった?”

ミチルが振り返る。

「え、どこ?」

その瞬間――

ガンッッ!!!

奥の部屋から、何か金属が落ちる音が響いた。

ハルカは悲鳴を上げる。

「ミ、ミチル……帰ろ……本当にやばいよ……」

しかしミチルはカメラを向けた。

ライトが部屋を照らす。

その奥に、

白いワンピースの少女が立っていた。

肩までの黒髪。

こちらに背を向けている。

ミチルが息を呑む。

「な、なにあれ……人?」

視聴者も騒ぎ始めた。

“やばいやばいやばい”

“絶対幽霊だって!”

“近づくな!”

ミチルが一歩踏み出した時だった。

少女がゆっくりと振り返る。

ライトがその顔を照らした。

――ミチルだった。

いや、正確には

ミチルと全く同じ顔をした少女。

ハルカが震える声で叫ぶ。

「ミ……ミチル……後ろ……!」

振り返ると、

ハルカと同じ顔の少女が、背後のドアからこちらを見ていた。

2人は声を失う。

心臓が凍りつく。

頭が真っ白になる。

次の瞬間――

配信が急にブラックアウトし、“配信終了”の文字が表示された。

「ちょっ!なんで!? 今勝手に……!」

ミチルは慌ててアプリを開く。

そこには“終了後の録画”としてサムネイルが一つ。

ハルカは震える手でそれをタップした。

そこに映っていたのは――

数分後のミチルとハルカ。

汗だくで、泣きそうな顔で、

暗い廊下を全力で走っている映像。

声が聞こえる。

『……見つけて……見つけて……』

少女の声。

自分たちと同じ声。

映像の最後には、

地下へ続く階段 が映り、

映像は途切れた。

ミチルとハルカは立ち尽くした。

「なにこれ……どういうこと……?」

「……続き、探す……しかないよね……?」

恐怖と、疑問と、背筋を刺す寒気の中で、

2人はライトを握りしめた。

――それが、すべての始まりだった。

お化けとバズれ!

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