いつも通りの通学路を歩いているとお義母さんと義妹が手を繋いで歩いている姿が見えた。
去年の春にお父さんが再婚してできた家族。でもその中に私は入れてなくて、よその家庭で過ごしているような居心地悪さを感じていた。2人の背中を見つめながらそっとイヤホンをつけると教室で聞いていた曲が夕暮れの空と共に流れた。
家に帰ると2人は一緒に夕飯を作っていた。一瞬、目が合って逸らされたけどなんだが気まずそうに
「ゆりちゃんも一緒に作る??」
と、まるで他人に向けるような作り笑顔に吐き気がして突き放すように大丈夫、と吐き捨て2階の自分の部屋へあがった。
自室のドアを開いて椅子にリュックをかけるとリュックにつけていたぬいぐるみのキーホルダーがないことに気づく。前のお母さんに買ってもらった、とても大事なものなのに。
いそいで家を出て帰り道を辿ったけど、何処を探しても見当たらなかった。多分、駅に入る前に落としたのかな。浅い息の中、思い当たる節が見つかった。校門を出てすぐ、自転車になにか違和感があった。何かが引っかかって物が落ちる音、
きっとあの時落としたんだと公園のベンチに座って思わず顔を覆った。
いまから取りに行く訳にも行かないしとりあえず家に戻ることにした。
ポケットからマスクを取りだし、
少し肌寒い夜道を歩いて数分で家に着いた。カレーの匂いがする家のドアを開き、そぉーっと階段を上がった。
部屋のベットで仰向けになって天井を見つめていると1回からお義母さんと義妹の楽しそうに話す声が聞こえる。
耳を隠して枕に突っ伏しているとスマホが鳴った。
【及川敦】
明日7時に被服。
LINEを開くことなくスマホを投げ捨てた。
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