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紅
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『高校卒業したら結婚しようね!』
小学生の頃の限られた遊び時間。
その間のたった1コンマの約束。
幼馴染と指切りをきったあの日から………
約束は交わされた。
『お約束は破ってはダメだよ』
幼稚園、小学校から耳が痛くなるほど教わった言葉。
あの頃の俺達はずっとずっとこの約束が守られるものだと思っていた。
ただ年月が経つごとに周りが平気で約束を破っていくようになるなんてあの頃は思いもしなかっただろう。
10年後――
8月2日(日)
けたたましくなるアラーム音。
カーテンの影がうようよと動き風が夏の匂いを伝えにくる。
「ん……」
階段を降り母親が作ったご飯と味噌汁、焼き魚、おひたしに箸をつけていく。
テレビからはニュースキャスターが物騒な事件や天気予報を伝えていた。
そして、エンタメニュースに切り替わる。
内容は今日行われる晴蘭大花火大会。
テレビは去年の花火大会の一部を流すことで進行していた。
「・・・・・」
「花火、か………」
ガチャ――
「おはよぅ…」
なんで今来るんだよ。と俺は心の中でツッコミをいれた。
夜凪美琴。
俺の3つ下の妹。
黒髪のミディアムストレート…が今は跳ねているがこれでも女だ。
化粧気がないが化粧をしなくてもそれなりに顔が整っている。
「てかお兄、さっきなんか1人でなんか言ってた?」
「知らね」
聞かれてたまるか。
「ふーん… 鼻の下伸ばしてそれ言う?」
ビシッと指摘されて即座に訂正する。
「わかってて確認してくんな」
「いいな〜澪花お姉ちゃんの浴衣姿見れて」
「お前は見んくていい」
「え〜こんな鼻の下伸ばしてるお兄より私が適任じゃん!お姉ちゃんは私が守るもん!」
「馬鹿言うな」
食器をシンクの中に入れてくるりと振り返る。
「思い続けてた年月が違うんだ」
10年間。
そして来年の3月には卒業を目前に控えている。
つまりは――
(ダメだ…ニヤニヤが止まらねぇ)
「やっぱキモい」
パシャリ。
シャッター音が一回響いた。
「消せ!」
「消しません〜」
「あのなぁ…」
「(ベー」
ガキか。
中学生がするにしてはメスガキにしか見えん。
「後でお姉ちゃんに送っとこ〜」
「やめろ!マジでお願いだから!」
美琴は俺をじーっと見てからどこか遠い目をした。
その顔はどこか寂しげに細められている。
「お兄が澪花お姉ちゃんと一年足らずで結婚かぁ…寂しいな…」
「私達ずっと一緒にいたのにね」
近所に住む同世代の子。
それが澪花との節点だ。
俺と美琴は血が繋がっている兄妹だが、澪花は元々1人っ子。
いつからかずっと遊ぶことも多くなった。
美琴は姉ができたかのようによく澪花に懐いていた。
「そうだな」
その先の話をすると、高校生になってから俺達は一緒の高校に入学することとなる。
地元高の清蘭第三高等学校。
1-A 担任:⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎
1 天音 澪花
:
:
40 夜凪 蓮
まさか1年から3年に至るまで同じクラスだとは思わなかったが。
昼になりそろそろ準備を始めた。
ヘアアイロンで前髪をセンター分けにする。
センター分けは高さを盛れば盛れるほどいいのだ。
服は白の半袖オーバーシャツにインナーは黒のノースリーブ。
パンツは黒のワイドフレアパンツにベルトを合わせた韓国ストリートの雰囲気の服装にした。
「よし」
最後にさっと香水をつけたら準備が終わった。
スマホを見るとあと1時間余裕がある。
「・・・・・」
澪花は今頃用意をしているのだろうか。
女子の準備は男子の準備よりもすることが多くて長いとよく聞くし実際俺もわかっている。
浴衣を着てヘアアレンジして、化粧して………
ダメだ…俺のためにやっているならなおのこと顔が崩壊する。
ピンポーン
家のインターホンが鳴ったのはあれからちょうど1時間後のことだった。
扉を開けるとそこに澪花が立っていた。
「お待たせ…」
頬がほんのり上気しているのを見て後から緊張しているのだと悟る。
薄ラベンダーに帯は青紫で締められ髪の毛は後ろで結われて青い花の髪飾りが風で揺れている。
「・・・・・」
目線がうなじにいくのを慌てて逸らす。
いやどこを見ても綺麗すぎて言葉が喉につっかえて出てこない。
「いい、綺麗……」
ようやく出た言葉は自分でも感じるほど弱々しいものだった。
「よ、よかったぁ…」
澪花は嬉しそうに笑ったが俺は直視できなかった。
その笑顔を見たらもう死んでしまうも当然だったからだ。
それから俺と澪花は電車に乗り込んだ。
花火大会と帰宅ラッシュがあって電車は予想通りごった返し。
ようやく来た電車に俺は澪花の前に立ち庇うようにして陣取った。
電車で揺られること10分。
駅に着く。
「混んでたけど大丈夫だったか?」
「うん。蓮のおかげ。ありがとう」
「そっか」
頬が少し熱い気がしたがここは人混みの熱だと意識を紛らわせた。
そして歩くこと15分。
会場に到着した。
周りに人はいない。
要は穴場スポットということだ。
最近は有料席のチケットが販売されるが学生は手につけるか諦めるほどの金額のためこの場所を両親に教えてもらったのだ。
「凄いね。全体見回せる…」
「いいとこだよな。俺もこんな場所があるなんて知らなかった」
高台からの景色は俺達の家や街をを小さく写していた。
午後7時半。
真っ暗の空にひゅ〜という音が鳴りその後ぱんという乾いた音があたりに響き渡る。
「綺麗…」
「始まったな」
打ち上げ場所から何本も花火が上がりそして夜空に花を咲かせる。
赤、青、緑、オレンジ、金、銀……
色とりどりの花火が街を照らした。
ふと横にいる澪花を見る。
呼吸が一瞬止まった。
花火の光が澪花の横顔を照らしている。
それが幻想的で非現実なような、とにかく花火なんかよりずっと綺麗だった。
周りの人の言うことが最もだとその時俺は猛烈に理解した。
「花火より綺麗」
視線を逸らした。
照れ隠しのようになってしまっただろうか。
ただ、その声は大きく響いたらしい。
「………っ//」
澪花の息を呑む声が聞こえたが俺は顔を合わせられなかった。
彼女の顔は今とても可愛いに決まっている。
そんな状態で顔を合わせれば俺は我慢できなくなってしまう。
「・・・・・」
花火はどんどん夜空を絵の具で塗したかのように広がり消えを繰り返していた。
「不意打ち……///ね、責任とってほしい……」
「は__」
反応する前に俺の顔はすんなりと澪花によって合わせられた。
瞳は潤み頬はほんのりピンク、唇は……見るな俺。
「私達、来年の春には結婚する仲でしょう?」
正論だ。
結婚する、する覚悟していたのに客観的に見て俺は覚悟が足りていなかったらしい。
いや、ここで覚悟が足りている、いないのはどうでもいい。
相手を想う気持ちの問題だ。
グイ、と澪花の肩を抱き寄せる。
「澪花からやってきたんだから後悔すんなよ」
「……っ//うん……」
フィナーレ。
色とりどりの花火が夜空を白に染めていく中、俺達は唇を重ねた――
長いキスだった。
夜空が街を黒で染めるまでの間。
あっという間でもあったし、そうでもなかったかもしれない。
俺達は高台の階段を降り家の帰路についていた。
キスの余韻を感じながら。
十字路の信号に止められて。
静寂が包んだ。
『・・・・・』
だが不思議と気まずくなかった。
「………俺、嬉しかったわ。あんまし澪花からくることねぇから」
「……うっ。否定はしないけど…でも、自分から言うのも案外悪くないね」
「したいことあるならもっと言えよ。 澪花は諦め癖あるからな」
「………っじゃあ…言いたいこと、ある。」
「なに?」
その時、俺の視線の右側を赤い車が掠めた。
赤い車は赤信号で停止している車の向かいから交差点に侵入、交差点のを右へ曲がり、停止している車の反対側の車線へ。
だがそうはならなかった。
車は曲がりきれず、大きく膨らむようにして進路を外れ信号待ちをしていた車に激しく追突。
そして衝突の勢いで赤い車はさらに方向を変え、俺の隣にいた澪花の方へ――
一連の動きは10秒もからなかった。
「蓮、k…
「逃げろ!!」
俺は澪花を抱き寄せようと必死に腕を伸ばす。
「え――?」
ただ、澪花が気づいたときには……俺が腕を伸ばした時点では――もう遅かった。
次の瞬間、車は澪花を跳ね、交差点には激しい衝突音が響き渡った。
ほんの数秒の出来事だった。
「みお、か…?」
ようやく乾いた声が出たのは澪花の姿を理解してからだった。
赤の血溜まり。
動かない彼女。
初心者でも見てわかる程の足の折れ。
目の前の彼女は悲惨な状態で俺の瞳に映った。
「澪花っ!!」
俺は澪花の元に駆けつけた。
頭を膝の上に置く。
遠くからはわからなかったがまだ少し意識はあるようだった。
「れ………ん」
「痛いだろ。痛いよな。とりあえず話すな」
「………か……っ、こ……かっ……た」
「……っ!」
かっこよかった。
さっき言おうとしていた…言葉。
その時、近隣の住民が大きな音を聞いて飛び出してきた。
「おい、音が!兄ちゃん、大丈夫…か……。…っ!救急車呼んだるから!!」
「助かります…!」
おじさんは119に電話をかけ始めた。
その際に続々と住民が出てきた。
「や、やばい…!アンタ!!事故!!高校生の女の子が轢かれてて!!」
「轢いた奴は!?」
「まだ車の中や!多分、飲酒!!」
「AED!急げ!!公民館とこ!!」
静かな現場は慌ただしい場所へと変貌していた。
当てられた車の運転手は自身で車を降りていた。
首を抑えているが重症ではなさそうだった。
そんな騒ぎのなか掠れた声が俺の耳に届く。
澪花の顔は涙で濡れていた。
「けっ………ん、………y…くそ………く……ご………mn……」
「もういい。言わなくていい。伝わってるから」
なんで。
なんで澪花なんだ。
俺はただそばにいることしかできず少しでも安心させようと軽く体を抱きしめた。
そして住民がらAEDを持って走ってくる頃に澪花の体から力が抜けた。
「澪花?」
「・・・・・」
「おい、嘘だろ…澪花っ!!!」
救急車が到着したのはそれから3分後のことだったーー
コメント
1件
えええ、ちょっと待って!!?!?😭💦 最初の花火デートとか「花火より綺麗」とか、もうエモすぎて鼻血出るかと思ったのに…最後の展開、マジで衝撃すぎるんだけど!!最後に言おうとしてた「かっこよかった」がめっちゃ刺さった…😭💔 兄妹の掛け合いも可愛くて、澪花ちゃんのキャラもすごく好きだったから余計に辛いよ…続き、めっちゃ気になる!!