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第十三話
入院
学園に戻ると、すぐに椥辻さんは医療棟へと運ばれました。
眠ったまま運ばれていく椥辻さんを見るのは正直、心が痛みました。
けれど――御厨くんの言う通り後悔するのではなく、先に進むために。
同じ轍は、二度踏まない!
それを胸に刻み、私はこれからも励もうと思います。
「あー、退屈だわ」
「御厨くん……いま報告書を作成中なの。退屈なはずないでしょ?」
「嫌だわ、綺ちゃん。あたしは労働担当なのよ? 報告書は、あたしの担当じゃないわ」
「いや、御厨くん……報告書は、僕た、ち……みんな、しなきゃ、いけない……ことだから」
「んもぅ。可威ちゃんまで。つれないわね……」
ふぅ、と御厨くんが大きなため息をつきます。
いつもより、少しだけ元気がないように感じました。
……椥辻さんがいないからでしょうか。
大丈夫なのか、少し心配です。
「早乙女! 医療棟に来なさい。椥辻が目を覚ました、と連絡があった」
「!!」
私は勢いよく立ち上がりました。
─────医療棟。
「な、椥辻さん……?」
「ちょ、っと……あんた……」
「あはは……」
椥辻さんは、乾いた笑いを浮かべています。
その姿を見た私は、思わず言葉を失いました。
「両手は粉砕骨折。脚は……右が折れてるわね」
カルテを見ながら、先生が淡々と告げます。
……いやいや!
粉砕骨折?
「その小さい身体で、力の加減もしていない大剣や太刀を受け続ければ当然ね」
「あ……」
私は小さく声を漏らしました。
操られていたとはいえ――。
私が原因です……!!
……いけない。
また悔やんでしまいました。
前を見る。
そう決めたばかりです。
「堪忍な。みんな……しばらく、うちは戦線離脱や」
「あら。大丈夫よ? あんたがいなくても、あたしがいるもの。ゆっくり休んでいーわよ。なんなら卒業まで」
「あ? なんやて?」
「あはは……」
ありがとうございます、御厨くん。
いま、御厨くんが椥辻さんといつも通りに接してくれているから――。
私は、泣かずにいられるんだと思います。
「椥辻さん。卒業までは御厨くんが言い過ぎだけど……ゆっくり療養してね」
「ありがとな、綺」
椥辻さんは、いつもの笑顔で私たちに手を振ってくれます。
両手や右脚をギプスで固定された姿が痛々しくて、堪らなくなります。
「また、みんなでお見舞いに来るよ、椥辻さん」
「ありがとうな、可威。あんたも気ぃつけてな」
長居するのも悪いので、元気な姿を確認した私たちは医療棟を出て、教室へ戻ることにしました。
「次は神剣くんも一緒に来れたらいいね」
「本当よ。冷たいんだから、朔夜ちゃんは」
冷たいとかではなく……。
たぶん、何も考えてないだけの気がします。
「あ。ねー、朔夜ちゃんも誘って、いまからあの子のお見舞いの品を買いに行かない?」
「僕は、いい考えだと思うよ……み、みんなで行こ?」
「そうね……神剣くんは、どこにいるのかしら」
「時間的に屋上?」
皇刃くんが時計を見ながら、首を傾げます。
「あたし、寮に戻っていくから。寮にいたら連れて来るわよ」
「じゃあ、外出届けも出さないといけないから、30分後に正門前に集合しましょ」
「わかったわ」
今回は、何か携帯用の武器を持参して行こうかしら……。
コメント
1件
うわぁ…椥辻さん、そんな重症だったんですね。両手粉砕骨折に右脚骨折って、読んでてぞっとしました。でも本人が笑顔で「堪忍な」って言えるのが、逆に胸に来ますね。 綺さんの「前を見る」って決意、御厨くんが軽いノリで椥辻さんに接してくれてるからこそ、みんなが冷静さを保ててるんだなあと感じました。最後の「携帯用武器持参しようかしら」って一文、ほのぼのした空気の中にまだ警戒が必要なんだって緊張感が残ってて、上手いなと思いました。