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こんにちは~ラテです!今回はうねさんのコンテストに参加させていただきます!
赤✕桃(微青✕桃)
俺には好きな人がいた。
リビングの方から何か倒れるような音がした。
「ないくん…?!」
そこには床に倒れたないくんがいた。
「ないくんは…?!」
救急車に運ばれ、緊急搬送された。
そして今、診察が終わったところだ。
「……内藤さんは脳に腫瘍があります。」
「手術で取り除こうにも場所が悪くて取り除けないんです…。」
そんな…。
「じゃあ、ないくんはもう助からないんですか?!」
「もうみんなで笑うことはできないんですか…?」
医者は何も言わずただ下を向いているまま。
それが何を示すか充分くらい伝わる。
「ないくん…大丈夫…?」
大丈夫なわけないと分かっていながらもそっと声をかける。
「大丈夫だよ。もともと脳に腫瘍があることは知ってたんだよ。」
え…?
言ってくれなかったのはきっとないくんなりの優しさなんだろう。
それでも言って欲しかった。
「でもまさかここまで酷くなってるとは思わなかったよ…w」
脳腫瘍の平均生存日数は79ヵ月。大体6年くらいだろうか。
でもきっとないくんはもう6年よりずっと短いかもしれない。
「それでりうらにお願いがあるんだけど…」
「……何?」
「みんなには脳腫瘍のこと言わないで欲しい」
やっぱりそうだよね。でも正直、このまま何も知らずにいなくなっちゃう方がみんな悲しむよ…。それに…
「いいの?! まろに気持ち伝えないままで」
「なんで知ってんの?!」
「てか気持ち伝えても俺死ぬかも知れないんだよ? そんな告白まろが困るじゃん…」
ないくんがまろのことを好きなのは見ててわかる。
でもこういうとこだけはまろ鈍感なんだよな。
「困るとか関係なくないくんはまろのこと好きなんでしょ? ならアプローチしなきゃ損だよ!」
きっとこのままだとないくんは自分の気持ちを隠したままでまろも知ることがなくなる。
まぁ…その方が嬉しいっちゃ嬉しいんだけどないくんのことを考えたら2人がくっついた方が幸せだと思った。
──ないくんが退院して数日
「髪型よし! ビジュ良し!」
身だしなみを整え、チェックするないくん。
今日はないくんがまろと出かける。
ないくんにとっての決戦日だ。
「今日のないくん一段とカッコいいよ!」
「ありがとう…// 頑張るよ…!」
自信もってないくん。
「お待たせ~! ごめん待った?」
「ううん、今来たとこやから大丈夫やで」
シンプルだけどちゃんと着こなされた服に綺麗にセットされた髪。
今日も一段とカッコいい。
「じゃあ行こっか!」
そう言って俺たちはカフェに向かった。
「うわぁ~!どれも美味しそう~!」
「ねね!どれ食べる?!」
美味しそうなパンケーキやパフェが並んでいてついついテンションがあがってしまう。
「ホンマにどれも美味しそうやね~」
「だよね! どれ食べるかめっちゃ迷うわ」
本来の目的を忘れてしまうくらい楽しくて仕方ない。
でも言うって決めたから。
「俺決まったよ」
「え?!もう決まったの?」
「え~っと、じゃあこれにする!」
ヤバい美味しすぎる。
何これ…ホントに何個でも食べれる。
「ねぇまろ。」
「ん?」
まろにすら聞こえそうなくらい心臓の音が激しい。
「あのね、俺、まろのことが好き。」
「それって…」
「友達としても好きだけど、今のは恋愛として好きなの」
「──ごめん。他に好きな人がいるから。」
「…好きな人ってほとけっち…?」
「……うん」
薄々気づいてたんだ。でも信じたくなくて知らないふりをしてきた。
俺たちの間に重く冷たい空気が流れた。
「ほとけっち、ホントにいいこなんだから幸せにしないと怒るからね!」
そう言いつつ明るいふりをする。
まろはまだ後ろめたい気持ちがあるのか俯いたまま。
少しして軽く話すようになり、俺たちはそのまま別れ各自帰路についた。
───ただいま
ないくんが帰ってきた。上手く言ったのかそうじゃないのか…心配しながらないくんの方を見た。
「おかえり…って」
帰って来たないくんの顔色はものすごく悪かった。
「ないくんすごい顔色悪いよ…?大丈夫?」
「さっきから頭痛が治まらなくて…」
そう言うないくんは頭痛のせいかふらついていて今にも倒れそうだった。
「ないくんっ!すぐ病院に行こ…」
「段々と症状が酷くなっていますね…」
「しばらく入院してもらいます。」
そんなに症状が進んでるなんて。
この間まではピンピンしてのに。
「ないくん、さすがにみんなに言った方がいいんじゃない?」
「いや、これでいいんだよ。言っちゃったら俺への接し方が変わっちゃうし」
まぁ、いつ死ぬかわからないなんて聞いたら普通に接するなんて無理だよね。
いつも通りお見舞いに来た。
「ないくんー!」
返事がない。
嫌な予感がして背中に冷たいものがつたわる。
「ない…くんっ…?!」
ないくんに繋がれたコードの先の心電図は今にも直線になりそうだった。
急いでナースコール押す。
医者たちは慌てた様子でまわりの看護師たちに指示している。
それでも状況は変わらない。
むしろ心電図の波は弱くなるばかり。
そんなときだった。
「りうら…俺…まろに…振られ…ちゃった」
途切れ途切れに話し始めた。
「ほとけっちに…負けちゃった…w」
「もし…俺に恋人が…できたら…」
「一緒にお祭りデートとか…してみたいなぁ…たまにはさ…カッコよく…射的で決めたりとか…」
「あと…みんなで…武道館行きたかったなぁ…いれいすの夢…だったもんな」
喋るたびに苦しそうになる顔。
「ないくんっ!わかったわかったからもう喋らないで…」
ないくんがニコッと小さく笑った瞬間
部屋中に機械の音が鳴り響いた。
ないくん…? ねぇないくん。起きてよ。
幸せそうでどこか悲しそうな顔のまま喋らなくなった。
やだ…やだ…嫌だ!!
何かのメモが落ちてきた。
それは俺宛に書かれたメッセージだった。
りうらへ
好きです。
メモには俺が予想もしないことが書かれていた。
たった一言だけど震えるような文字。
最近書いたものだとすぐにわかった。
たった一瞬、凄く嬉しくて幸せだった。
幸せだったからこそ現実だと認めたくなくて認めてしまえば深い穴に突き落とされるような感覚になる。
もっと早く伝えていたら。
ないくんに脳腫瘍なんてできなければ。
ないくんと恋人になれていたのかな。
「俺もっ…好きだよっ!…」
俺の声はないくんには届かない。
そんな俺の声は病室で消えていった。