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そうして、『お外に出た方がよろしいかと思いますがいかがなさいますか?』
この服で…
この髪で…
『ちょっとだけ…』
外に出る…
『この服、星名さんの方が似合うのではないかな?』
『私には可愛すぎますし、大きさも合いませんので。』
『大きさは合わないかもしれないけど、似合うとは思いますよ?』
『銅様の方がお似合いです。』
『いやいや!女性向けっぽいし、星名さんの方が似合うかと思いますよ。』
『私だって男ですので、似合いませんよ。』
男?
おとこ?
オ・ト・コ?
『え?』
一瞬、男が何かわからなくなった。
『私、よく間違えられますが男です。』
『・・・』
マジか…
信じられない。
それほど、少女に見えていた。
『女の子だと思ってた…』
琥珀さんもそう見えていたようだ。
『申し訳ございません。隠していたつもりではなかったのです。』
そうか…
ずいぶんと可愛らしい男だこと…
その後、歩き回って、
『・・・』
剣士署の前を通る。
と、
奏さんがいた。
そうか、もうお昼か。
ちょうどいいな。
行こう。
『か、かなで…さん……』
緊張して、声が裏返った。
奏さんが、こちらを見た。
恥ずかしい…
『え、誰…』
少し、驚いているようだった。
『アカガネ…』
『なに、してるの…』
奏さんは、引いていた。
『え、えと…女装……』
夢で見た。
確か瑠璃さんは、
女装した姿が見たいとか言っていた。
もし、奏さんが瑠璃さんなら…
『刑務所に戻した方が良さそうね。』
『え…』
怪しい物を見るような目。
あ、僕が怪しいのか…
あれ、女装ってこういうことじゃないのか?
化粧をするべきだった?
『・・・』
奏さん?
『こちらを睨みながら無言で剣を抜かないでぇ!』
『いまさらーーーーーー』
『え?』
奏さんが何かを言ったが、よく聞こえなかった。
『かわいくなんて…ないんだからねっ‼︎』
『はあっ‼︎』
奏さんの頬が、赤くなっていく。
ほぼ、確定した。
この人、瑠璃さんだわ。
『その、僕は記憶喪失で、記憶がなかったんですけど、最近は思い出してきてるんです。瑠璃さんのことも、思い出してきてるんです。』
『瑠璃なんて、知らないわ。』
奏さんは、知らないふりをした。
『お待たせしてしまって、申し訳ございませんでした。その、お久しぶりです、瑠璃さん。』
『だから、知らないって言ってるでしょ!』
『コスモス畑で会って、シロツメクサの冠をつくっ…』
『なにもしらない!きょうみない!』
『瑠璃ちゃん、無事だったんだね。また、あそぼう?』
『あそばない!』
琥珀さんも声をかけたが、認めない。
なぜだろう…
『その、何か、悪いことをしたなら謝る。だから、昔みたいに仲良くしてくれないかな。』
『仲なんて、よくない。人違いよ。』
『そんな…』
ある程度、わかってきてはいた。
でも、
まだまだ足りないのだろう。
もう少し、時間が必要だ。
『銅様の言う、‘瑠璃さん’については分かりませんが、‘こちらの方’の反応を見ると、何かを隠しているように見えます。』
『かくしてない!かってなこといわないで!』
そうは言うけど…
星名さんまでそう思うんだ。
やっぱり、そうなんだろうな。
『奏って、ツンデレなのか?』
『は、はあ⁉︎』
『あ…』
奏さんの後ろから、如月さんが歩いてきた。
『よっ!久しぶりだな、あかが……誰?』
『久しぶ……』
如月さんは、笑顔から不思議そうな顔に変わる。
気まずいな…
色々な意味で。
『銅…だよな?甘の姉さん?妹さん?』
『銅.甘です…』
気まずっ!
『甘なのか⁉︎はははっ!面白い格好してんな!』
でも、如月さんはあまり気にしてないみたいだ。
『あなた、私に向けてツンデレと言ったの?』
『そうだけど?だって、どう見てもツンデレじゃん。』
『ちがう!ツンデレなんかじゃない!』
『顔、赤くなってんぞ?』
『う、うるさい!もうかえる‼︎』
『まだ仕事、終わってないぞ?』
『・・・』
奏さんは、僕たちに背を向けて歩き出した。
あんな奏さん、初めて見た…
『奏って、あんな感じなんだなぁ。ツンデレ奏、悪くないな。』
『あぁ、そうか…』
消え入りそうな声で言った。
『んで、どうしたんだ?そんな格好してよぉ。』
『ええと…奏さんが、昔の友達なんじゃないかと思って…』
この空気、ツラい…
『え、そうなん?友達なん?』
『でも、あんな性格ではなかったはずなんだけどな…』
夢の中の瑠璃さんは、優しい人だった。
でも、
奏さんは…ツンデレ?だった。
『へぇーそうなんだ。そんで、剣士はどうすんのか、あん時何があったのかを訊いてもいいか?』
『・・・』
如月さんに、言いたくない…
言うのが、怖い…
『そうか。』
?
何も、言ってないはずなのに…
『無理はするなよ。銅なら、どんな選択をしても上手くいくさ。でも、ここにいつ戻ってきてもいいんだぜ?いつでも待ってるからよ、その時はまた一緒に、この島を平和にしてやろうぜ。』
如月さんは、笑顔だった。
『はい…』
泣きそうになった。
いつかまた…戻れるだろうか。
『桜乃のヤツ、泣いてたぞ?』
『っ……これからは、お願いします…』
『わかった、任せとけ。』
『今まで、ありがとうございました…』
寂しいな。
でも、寂しいということは、
楽しかったんだろうな…
『おう!こっちこそ、ありがとな!』
如月さんが手を振る。
僕は少しだけ笑顔を見せて、歩く。
長いようで短かった。
もっと、あそこに居たかった…
『銅様、悲しい思いをさせてしまい申し訳ございません。』
『構わないよ。僕も、強くならなきゃいけないから。』
そうだ、
いつまでも、弱いままではいられない。
落ち込んでいる場合ではない。
深呼吸をする。
『もう、これくらいでいいよ。僕たち2人でも、問題ないから。ありがとね。』
『左様ですか。』
星名さんが、少し寂しそうな顔をしたように見えた。
星名さんと別れて、家に帰る。
『甘ちゃん。琥珀も、頑張るね。』
『あぁ、強くなって、大事な人を守れるようにならないとな。』
強くなるために、できることをしよう。
自分から幸せを掴みにいこう。
体力をつけるためにランニングをして、
筋力をつけるために筋トレをして、
ナイフを振る。
それから、本気で頑張った。
琥珀さんも、一緒に頑張ってくれた。
そして、
夢を見た。
何度も、瑠璃さんのところに行って、コスモスを見て、人気のない道を歩き、色々話した。
幸せな日々が続いた。