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沖縄の空港。そのロビーは、夕陽が差し込む柔らかな光で包まれている。ざわつく周囲の喧騒がどこか遠く、現実感の薄い空間に思える中、虎杖、伏黒、釘崎、乙骨が一堂に会していた。
「ここ、どこなんだろうな。」虎杖が辺りを見回しながら呟く。
伏黒は腕を組み、窓の外をじっと見つめている。「……空港、だな。でも、何か違和感がある。」
「細かいことは気にしない!」釘崎が元気よく割り込む。「ここにいる。それでいいじゃない?」
「うん、でも……」乙骨は眉をひそめながらも、何か言いかけて口を閉ざした。
その時、見覚えのある顔ぶれが現れる。五条、夏油、七海、伏黒甚爾、黒井美里、天内理子――既に失われたはずの彼らが、自然にそこにいる。
「よう、元気そうじゃん。」五条がサングラス越しに微笑む。
「先生……」虎杖が声を震わせながら駆け寄る。
「何で……いるんだ?」伏黒が目を見開く。
五条は柔らかな表情を崩さない。「まぁ、そういう場所なんだよ、ここは。」
「意味わかんないって!」釘崎が苛立ちを隠せずに叫ぶ。
「ここは、私たちの空間だ。全てが終わり、全てが始まる場所。」夏油が静かに言葉を重ねる。
「だからって、なんで全員ここに――」虎杖が言いかけたところで、五条が肩を叩いて止めた。
「そんな難しいこと、考えなくていいさ。大事なのは、今こうしてみんながいるってこと。」
言葉の意味を噛み締める間もなく、彼らの周囲の景色がふっと暗くなる。
視点が切り替わる。そこには、呪術師たちが空港のロビーでじっと座っている姿が映し出されている。周囲のざわめきは薄れ、まるで時間が止まっているかのようだ。
「先生、俺たち……閉じ込められてるんですか?」伏黒が静かに呟く。
五条は答えず、ただ遠くを見つめている。
釘崎が立ち上がり、周囲を見渡す。「ねえ、出口はどこ? ここから出られるんでしょ?」
誰も答えない。ただ、静寂が彼女たちを包み込む。
虎杖は拳を握りしめ、五条を見つめた。「先生、俺たち、どうなるんですか?」
五条は一瞬だけ目を伏せ、それから静かに微笑む。「お前たちなら、答えを見つけられるさ。」
そう言うと、五条はスッと立ち上がり、彼らに背を向けて歩き出した。その背中が消えそうになったその時、振り返らずに一言だけ残す。
「ありがとうな。」
そして、彼らはその場に取り残され、終わりのない空港の中で、新たな始まりを探し続けるのだった。
伏黒恵は父親である伏黒甚禰と静かに座っていた。父の目を見つめる恵の表情は、どこか鋭く、しかしどこか穏やかでもある。
「俺があの時、お前の言うことを愛していれば、違う未来があったかもしれないな。」甚禰が低く呟く。
恵は少し黙った後、冷静に答える。「父さん。今の俺は、俺でしかない。」言葉は短いが、その奥に強い意志が込められている。
「俺もそうだ、だからお前に任せる。これからの呪術界を、どうするつもりだ?」甚禰の目が鋭く光る。
恵は少し考えた後、穏やかに答える。「俺が、どうにかしなきゃならないんだろうな。」
夏油傑は自らを殺した乙骨憂太を前にして、静かに座っている。その目に光るものはないが、乙骨はただ無言でその場に立ち続ける。
「まさか、私を殺せたとはな。」夏油が薄く笑う。
乙骨は冷静に、「あんたが呪術界のためにやったことが、間違っていたって気づいたからさ。」
夏油は一瞬、表情を変えるがすぐに笑い飛ばす。「まあ、今更だ。私はもう、何も気にしちゃいない。」
乙骨は静かに彼を見つめる。「それが、何よりお前らしいよな。」
天内理子、黒井美里、灰原雄が釘崎野薔薇と一緒に座っている。みんなが同年代だからか、どこか和やかな雰囲気だ。
「じゃあ、釘崎さん、どうです。あんたが言うところの『呪術師』っていうのは?」灰原が冗談っぽく言う。
釘崎は苦笑しながら肩をすくめる。「知らないよ。でも、まあ、少なくともみんなが助かってるなら、それが一番だって思う。」
「でもさ、そんなに簡単に助かるわけなかろう。」天内が小さく笑いながら言う。「妾たちだって、何度も死ぬかと思ったのじゃからな!」
釘崎は頷き、続けた。「だからこそ、あたしはみんなに感謝してる。」
虎杖悠仁は恩師である五条悟と七海建人と並んで座っていた。彼らは大切な話をしているようだが、虎杖は静かに聞き入っている。
「虎杖、お前、今の状況をどう思う?」五条がサングラス越しに話しかける。
「どう思うって言われても…。」虎杖は少し困った顔をして答える。「でも、俺はまだ何も終わったわけじゃないと思ってる。」
七海が少し微笑んで言う。「お前は、信じているからこそ、みんなを引っ張れるんだ。」
五条は軽く頷く。「でも、お前だけじゃない。全員が信じている。」
虎杖は少し驚いた表情をしてから、思わず笑顔を見せる。「ありがとう、先生たち。」
そして、その空間に静けさが再び訪れる。空港は、まるで何もかもが終わったかのような雰囲気を醸し出している。しかし、誰もその未来を見据えていない。無言でその場に座る彼らの視線の先に、ただひとつ、消えない影が横たわるだけだった。