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𓏸𓏸の体調はさらに悪化し、顔色も今まで以上に悪くなっていた。もうベッドから起き上がることすら難しそうで、息も浅くなっていく。
涼ちゃんは、どうしていいかわからず、ただ𓏸𓏸の顔を何度も見つめる。
不安も、焦りも、うまく言葉にならない。
そんな涼ちゃんの手を、𓏸𓏸はそっと握った。
かすれた声で、優しくゆっくりと話しはじめる。
「涼ちゃん……。薬は……あの棚の三段目、ピンクの箱……ご飯のあと、朝と夜……この名前のやつ……」
山のようにしんどいはずなのに、𓏸𓏸は全部、言葉で涼ちゃんに伝えた。
そしてそのまま、静かに目を閉じて眠り込んでいった。
部屋には二人きり。
涼ちゃんはしばらくただ座り込んでいたが、意を決してふらつきながら棚に向かった。
ピンクの箱を見つけて、言われた薬を何度も確認する。
「これでいいのかな……」と心の中で𓏸𓏸の声を何度も再生する。
余計なことは考えずに、水を準備して、ひとりで薬を飲んだ。
うまくできるか不安でいっぱいだったけれど、それでもやり遂げる。
ベッドに戻ると、𓏸𓏸は深く眠っている。
今日だけは、𓏸𓏸が少しでも多く休めるようにと、
涼ちゃんはそっと静かに待っていることしかできなかった。
それでも、「自分も誰かの役に立てた」という小さな実感が胸に残った。
そして、そんな涼ちゃんのぎこちないけれど必死な姿を、
𓏸𓏸は浅い夢の中でやさしく感じて、かすかに涙を浮かべていた。