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もし赤葦が人の心を読むことかできたなら


俺は生まれつき人の心が読める。人の思ってることが俺の頭の中に流れるのだ。俺はこの能力は大嫌いだ。だって分かりたくないことまでわかってしまうから…



今日は梟谷学園の入学式。俺はしっかりと制服を着こなし、学校に向かっていた。

「皆さん、ご入学おめでとうございます。我が校は……」

と、校長先生が話す中、俺の頭には、

『めんどくせぇ』

『早く終わらないかな。』

『帰りたい…』

『だりぃ…』

など、生徒の心の声でうるさかった。頭がガンガンする…もっとうるさかったら他のことに集中できるのに、静かなところで人がいっぱいいるとこは俺にとっては地獄でしかなかった。





入学式が終わり、それぞれの教室に行った。そこでも、

『あの子可愛い〜』

『おっ!!イケメン発見♡』

『あいつぶっさwいじめよwww』

『勉強ついていけるか不安だなぁ』

など、綺麗な言葉も、どす黒いほど汚い言葉も聞こえる。さっきよりはましだが、やはり気持ちの良いものではない。その時声をかけられた。

「ねぇ君、良かったら俺と友達にならない??」『コイツ大人しそうだし、何かと役にたちそーww』

あまりにも真逆な考えに俺は吐き気がした。この人とは関わらないようにしときたいな。と考えていたが、とりあえず挨拶はしとこうと思い

「いいよ。よろしく」

と、軽く挨拶して俺はトイレに逃げた。すると、さっきの人と、その友達らしき人がトイレに入ってきた。

「さっきの赤葦ってやつ何あれwwウケるんだけど」

「お前にビビって逃げたんじゃねww」

「それなwwウケるんだけどwww」

「いじめてやろww」

「いいねwww」


最悪だ。初日からこんなの酷すぎる。人は表と裏が激しい。どんな人だって裏がある。家族にも、先生にも、先輩後輩…そして、仲良しだと思っていた友達にも……。俺は人が嫌いだ。こんな能力を持ってしまった自分が大嫌いだ。





それからはとても辛い毎日が待っていた。が、いじめっ子の考えてることが分かるので、上履きの隠し場所や、机や教科書にどんな事が書いてあるかとか、そういう事が分かるから回避は簡単だった。まぁ、傷つく事には変わりはないけど…。俺はそれをやめて欲しくて勇気をだしてこの事を先生に相談した。

「先生、ちょっといいですか。」

「どうした?赤葦、そんな改まって」『めんどくせぇなぁ、俺も忙しいのに』

「俺、虐められてて、その子に注意して欲しくて」

「そうなのか、大変だな」『こいつに関わるとろくな事にならないんだよな。それぐらい自分で何とかすればいいのに、ここは中学じゃねぇんだよ』

「すみません。じゃあ俺行きます」

「…。」『注意なんてめんどくせぇからしなくていっかww』

先生、先生の思ってること全部俺には分かるんですよ。と、心の中でそう思った。言わないけど、でも確かに俺なんかの事でそんな真剣に話を聞いてくれる人なんているわけないよな。俺は1人で帰った。その後親に話してみた。

「母さん、ちょっといい??」

「どうしたの??京治」『お腹でもすいたのかしら』

「俺、学校でいじめられてて、どうすればいいのかな」

「何言ってんのw京治が虐められるわけないじゃない」『京治はこんなにしっかりしてて、背も高いのに』

「なんてね。冗談だよ」

「だと思ったww」『だろうね』


俺は諦めて部屋に戻った。




もうすぐ部活体験が始まる。俺はバレー部に入ろうとずっと前から決めていたので特に迷わなかった。中学の時は先輩と上手くいかなかったから少し怖い。

「金子さん、俺のトスどうでしたか??なにか直した方がいい所ってありますか??」

「あー、もうちょっと高い方がいいかも」『めちゃくちゃうちずれぇな、どうせ生意気でくそ真面目なお前は試合になんか出さねぇし、鬱陶しいから早く帰れよ』

「…。すみません。それともう俺帰りますね」

「おう、気をつけて帰れよ」『やっと帰った。』



「赤葦!!ちょっといいか??」『イライラするしこいつでストレス発散しよww』

「…はい」

「お前さぁもっと早く行動しろよ。後輩なんだからさぁ、 」『俯いてるwwいい眺め』

「…。」

「返事も出来ねぇなら部活やめたら??」『ほんとにやめたら毎日楽しくなりそー』

「…すみません。」

「声もさぁちっさいの、自分じゃ分からないの??」『泣けばいいのにww』

「…すみません。すみません。すみません。」

「謝って済む問題じゃないだろwwじゃあちゃんとボール拾いでもやれよ」『はぁスッキリしたww』

「…はい。」


俺は人より心が強い方だと思うからこんな中学の部活でも耐えていけた。そんなことを考えてるうちに体育館に着いた。俺は深呼吸して落ち着こうとしていたけど、こんな事をわざわざ思い出してしまったから手が震えて扉が開けられない。そこに、

「君、1年生!?もしかしてバレー部希望??」『背、たけ〜!!指も綺麗だし、バレーとかだったらセッターかな??』

いきなり後ろから大声で話しかけられたのと、一瞬見ただけでバレー部希望だということ、セッターであることを見抜かれて俺は目を見開いた。そこに居たのは木兎光太郎だった。

「はい…」

頑張って出した声はカスカスだった。

「ほんと!!バレー部!?よっしゃぁ!!!あ、俺木兎光太郎!!!」『セッターかな??俺の事知ってるかな??』

「あの5本指に入る木兎さんですか??」

「そー!!俺の事知ってるの!?まじで!?嬉しい!!!」『嬉しい!!!ほんとに嬉しい!!!』

木兎さんは思った通りの人だった。太陽みたいと思った。けどこの人もどうせ裏では俺の悪口言うんだろうな…とも同時に思った。

「君の名前は??」『名前知りたい!!』

「赤葦京治です」

「あかーしけいじな!!よろしく!!!」『いい名前だなぁ!!!』

その後、俺は木兎さんに連れられて体育館に入った。


そこから時間が経つのはあっという間だった。木兎さんはほんとに明るくて、どんな人でも同じように接していた。その時の心の声も、言ってることと同じような内容で俺はとても驚いた。この人はほんとに裏がないみたいだった。この人と一緒にいるのはとても居心地がよかった。

俺は、運良く木兎さんに気に入られて、一緒にお昼を食べるようになった。俺はずっと1人で食べていたから誰かと一緒にお昼を食べて、雑談して…という普通のことでもとても嬉しかった。



部活に正式に入部し、俺は木兎さんと一緒に過ごす時間は長くなっていった。同じ1年の中に、俺を妬み、批判するような声は聞こえてきたりするけど木兎さんといる事でそんなことはどうでも良くなってきていた。

そして今日も木兎さんと屋上でお昼を食べる約束をしていた。が、お弁当をいじめっ子達に取られてしまった。隠す事に飽きたのか目の前で取り上げられてしまった。

「弁当返してくれない??」

「返すわけねぇじゃんww」『うざっ』

「約束があるから行かなきゃ行けないんだよ」

「お前との約束なんてしてる奴の精神が分からねぇwww」『こいつに関わるなんて馬鹿だろ』

「いい加減に返して」

「返してって言われて返すバカがいるわけないしww」『このまま時間潰させて約束破らせよっかな〜』

まずいと思った。いくら明るくて優しい木兎さんでも約束を破ってしまったら嫌われる、いつもの木兎さんじゃ無くなる、怖い……もう約束の時間より10分もたっている。急がなくちゃ…

俺は俺の経験から、1回嫌われてしまえばどんどん心の声が酷くなるのを知っていた。木兎さんには、木兎さんにだけはそんなことして欲しくない。俺は本気で弁当を取り返そうとした。その時


「おい、なにやってんの??それ赤葦の弁当だよな」『赤葦……』

「ヒッ」『誰だよコイツ…青い上履き??先輩じゃんなんでうちのクラスに!?』

「返せよ」『赤葦を虐めるなんて俺が許さねぇ』

「…クソッ」『あーうぜぇ』

そう言っていじめっ子は、俺に弁当を投げつけ逃げていった。木兎さんの顔は今までにないほど怒っていた。怒られる、約束を破ってしまったら嫌われる。と、本気で俺は覚悟して目をぎゅっとつぶった。が、いきなり息が出来なくなって、暖かいなにかに包まれた。何が起こったのか理解するのに時間がかかった。俺は木兎さんに抱きつかれている。なんで??怒ってるはずなのに…どうして??

「赤葦、泣いてる。」『相当今のにショック受けたんだろな』

ハッとした。全然気づかなかったけど俺は泣いていたんだ。こんな事久しぶりすぎて分からなかった。

その後俺は木兎さんに連れられ屋上にいった。俺がどうして来てくれたんですか??と聞くと、木兎さんはぽつりぽつりと話し出した。

「今日、俺ちょっと遅れてここにきたんだよ」『遅刻しちゃったんだよなぁ』

「赤葦いつも俺より早く来てるのに今日は5分経っても来なくて、おかしいなぁって思ったんだ。」『何かあったのかすごい心配だった』

「だから俺、顧問に赤葦のクラス聞いて、走って赤葦のとこ行ったんだぞ」『ほんとにほんとに心配したんだからな!!』

「そしたら赤葦がいじめられたから、おれ咄嗟に飛び出しちゃって…」『あんなの見てられない…赤葦……』

「そしたら赤葦泣いちゃうから、どうすればいいか分からなくて、抱きしめちゃったけど、赤葦やだった??怒ってる??」『赤葦に嫌われちゃったらやだぁ(´;ω;`)』


木兎さんの言葉と心の声は俺を心配してるものばっかりだった。生まれて初めてかもしれない。俺がこんなに心配されたのは、家族でさえ此処まで本気で心配はされたことは無かった。俺は今まで貯めてた全ての思いをこの人なら受け入れてくれると思った。

「木兎さん、俺、ずっと虐められてて、先生に言ってもなんにもしてくれなくて…ほんとに今まで辛くて、助けてくれるって言った人も裏では俺の悪口言ってたり、面倒くさがってたり……嫌で、苦しくて…俺、自分が嫌いです…家族でさえも、俺の話ちゃんと聞いてくれなくて、だから、嬉しかったんです。助けに来てくれて、俺のために怒ってくれて…本気で心配してくれて……すごい嬉しかったんです。木兎さんは、俺の中でとっても大事な人なんです…だから約束破って、嫌われたくなくて……木兎さんが教室に来た時、怒ってたから…嫌われたと思ったのに……いじめっ子に怒ってくれて…優しく抱きしめてくれて……すごい、すごい嬉しかったんです。俺、ずっと苦しくて、悲しくて…怖かったんです。」


初めてだった。こんなに自分の思いを誰かに伝えたのは…こんなにすらすら言葉が出てきたのも……俺は、この人なら大丈夫と、心から思ったからかもしれない。

「赤葦、辛かったな。話してくれてありがと。今まで沢山我慢してたんだな。頑張ったな。偉いよ赤葦は。またぎゅってしてあげるから泣いていいよ。泣きな。楽になるから。」『赤葦は俺が守るから。』

そう言って木兎さんは俺を抱きしめてくれた。俺は蓋が取れたように泣いた。泣いて泣いて、辛かった思いを全部吐き出して、そして初めてこの言葉が出てきた。

「木兎さん……助けて」

「任せろ!!赤葦!!!」『絶対助ける!!!』

その心強い言葉を聞いたあと、安心したように俺は木兎さんの腕の中で、静かに目をつぶった。





ふと目が覚めると俺は知らない部屋にいた。横を見ると木兎さんがいた。

「木兎さん??ここは…」

「赤葦!!起きたんだな、よかった!!」『よかった!!』

「ここ、俺の家。学校早退して、赤葦前、共働きで家に1人の時が多いって言ってたから俺の家連れてきちゃった。」『その方が学校よりも安心するだろうし』

「ありがとうございます。」

その時ガチャっと部屋のドアが開いた。

「木兎、赤葦起きたんだって〜」『よかった〜』

「お前が急に皆を呼び出した時は何があったのかと思ったけど、正解だわ」『先生とかにバレなかったし。』

「いま学終わった、これだな赤葦の荷物」『木兎の言う通り赤葦虐められてたんだな。クラスの人に対する赤葦の対応が雑すぎる…』


そう言って中に入ってきたのは、白福、木葉、鷲尾の3人だった。

「俺だけじゃ赤葦助けられなそうだから、3人に連絡したんだ。ごめんな勝手に…でもこいつら皆優しいから大丈夫!!」『こいつらのことは信用してるから、赤葦の為に絶対動いてくれる』

「大丈夫です。ありがとうございます。」

そう言って俺は先輩方にお礼を言った。その後は、色々皆で考えて、俺の学校生活をサポートしてくれた。

木兎さんは毎時間俺の教室に走ってきてくれるし、木葉さんと白福さんには、虐められた時の対処法を一緒に考えてくれた。




「赤葦、この後ちょっとトイレ来いよ」『この前の仕返ししてやる』

「…分かった。」

俺はスマホを持って木兎さんに「あ」と、送ってカメラのビデオをONにしてトイレに向かった。

「赤葦さぁ、最近何調子乗ってるの??」『ウザイ』

「ほんとだよねぇ、ちょっと強そうな先輩味方につけてさぁ」『ウザイウザイ』

「もう学校来んなよ。顔も見たくねぇしwww」『ウザイウザイウザイウザイ』


「うるさい。そんなの俺の勝手じゃん。」



ドカンッ!!!

「ッ……」

いじめっ子の1人に横腹を殴られた。結構痛い。その時


「おい。それはさすがにねぇだろ。」『許さねぇ』

「手を出すのはさすがにねぇ…あ、今のちゃんと先生とお前らの親に報告しとくね。」『殴られる前に止められなくてごめん赤葦…』

「赤葦すまない。遅くなった」『すまない。もっと早くここが分かれば…』

「おいで、赤葦」『早くこっちに来させないと…』

俺は殴られた横腹を抑えながら、フラフラと木兎さんのとこに歩いていった。いじめっ子はカタカタと震え、顔は青ざめている。

俺と木兎さんと木葉さんと鷲尾さんは黙ってトイレを後にした。俺と木兎さんは保健室に湿布を貰いに、木葉さんと鷲尾さんは俺のスマホの録音を持って先生に話に行った。途中で木兎さんが呼んだという白福さんと合流した。白福さんは俺の荷物を持ってきてくれた。俺と木兎さんは保健室に行ったあと、職員室に行き、木兎さんと俺は木兎さんの家にお邪魔した。


その瞬間木兎さんに俺はまた包まれた。安心するな。この匂い、温もり、心音…

「赤葦、もう大丈夫。今まで良く頑張ったなぁ…お前はほんとに凄いよ」『よかった。赤葦!!助けられた。これでもう虐められない』

「はいッ……ありがとうございました。助けてくれて…俺なんかを…」

「赤葦だから助けたんだよ。」『赤葦には…好きな奴には笑っていて欲しい』



どれだけ素直で明るい人なんだ。木葉さんも鷲尾さんも、白福さんも皆優しかった。俺は嬉しさで涙が止まらなかった。これで木兎さんの中で泣くのは2回目だけどこの前みたいに、苦しかったり悲しかったりして泣くのとは違くて、ただただこんな俺を受け入れてくれるこの人達の優しさが嬉しくて泣いていたんだ。

「…木兎さん、好きです。」

びっくりした。あまりにもスっと出てきたから。木兎さんも顔を真っ赤にして、そして優しく微笑んでくれた。

「うん。俺も赤葦大好き」『好き。好き。大好き。』




あぁ幸せだな。と、感じた。













後日談



俺と木兎さんはお付き合いを始めた。信じられなかったけど、木兎さんはあの後きちんとした告白をしてくれて、俺はもちろんOKした。いじめっ子達は今は学校に来ていない。まだクラスには馴染めてる気もしないし、時々聞きたくない心の声も聞こえてくるけど、その分俺は木兎さんに話を聞いてもらうそして、優しく抱きしめてもらう。これが俺の日課になっていた。木兎さんもそんな俺を受け入れてくれるし、部活の、メンバーの人とも上手く関わって行けるようになった。それから1年。俺は副主将という大きな役職を担っている。1年前木兎さんに助けて貰ったように、今度は俺が助けてあげたい。そして何よりも、木兎さんの隣に居られることがとても嬉しい。木兎さんは相変わらず裏がなくて、一緒にいるだけで嫌な事なんて全部忘れられる。


「あかーし!!今俺が思ってること分かる??」『赤葦大好き!!』

「そうですね。俺も木兎さんが大好きですよ」

「え!!!赤葦なんで俺が思ってることわかったの!?」『すごい!!赤葦すごい!!』

「なんででしょうね」ニコ

「赤葦可愛い!!」『笑った!!』

「ハイハイ。じゃあもう部活やりますよ」



この能力は案外悪くないかもしれない。




END

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コメント

8

ユーザー

あ好き、最高まじやばい

ユーザー

最高な時間でした。ありがとうございます😊

ユーザー
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