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「「「「お前は贄となれ」」」」
同じ村___炎眼ノ村にて四箇所で同じ言葉が響いた。
朽森家
この家では教育一門として知られている。幼い頃から何度も何度も教育礼儀を叩き込まれて来た。
「学こそ全て、知識が無いものは人に在らず。」と。
並木度家
この家は陰として生きる事を強いられている。生きた瞬間に人として完成されてなければいけない。
「誰にも知られる事なく常に2番であれ」と。
猫咲家
この一門は、己を捨てる事を生を享受した時に行われる。笑顔で居ろ、人を見ろ、嘘を重ねろ。呪文のように廻る。言葉で縛る。
「己では無い誰かを生きる事が全てだ。」と。
印南家
この家では挫け下を向くことを一切許されなかった。諦めることも、落ち込むことも、全て己が弱いのだ。集団で言われる。
「上を見る事が出来ないのであれば命を閉ざせ」と。
そうした一族に生まれた彼らは常々言葉の刃で裂かれて、罵られ蔑まれ、殴られて…能無しの烙印を押されてしまった。兄弟と、従兄弟と、親と比べられて嘲られてきた。
「よぉ〜、馨」
「…紫苑か…生きていたんだな」
冷たく聞こえるような声だけれど、中には「生きていてくれて良かった」と隠されている思いが籠っている。紫苑もそれを知っているからこそその態度に何も言わない。
「波久礼と幽は?」
「2人はまだ来てねぇ」
「そっか…」
「遅くなってすまない!ゲホッ!!」
「…抜け出すのに苦労した」
頭をガシガシと掻きながら文句を言う波久礼と頬に青痣を作っている幽が同時にやってきた。その頬を一瞥し紫苑も馨も「またか…」としか思えなかった。
彼らにとって傷は日常茶飯事なのだ。
現に馨は足に、紫苑は腕に青痣を付けており、猫咲は頭から僅かに血を流しているのだから。
「この山だけは…アイツらも来ないからな…」
傷だらけにされながらも逃げることを許されないからこそ互いに痛みを知る彼らは痛みを共有している。
誰も来ない山の麓で1日に数分会う、それだけが彼らに与えられた自由だった。
「……俺もう戻んなきゃだわ」
「俺も…」
紫苑、馨が残念そうに腰を持ち上げて歩く。波久礼や幽も連なるように歩を進めた、日が落ち始め周囲は暗くなり道に影を落とす。
「今日は…こっちから行かね…?」
帰りたくないと思う気持ちからか、紫苑は山を指差してそっと提案した。もちろん他の3人も帰りたくは無かったからコクリと頷いた。
この山には昔から神が住んでいると言われており、立ち寄るものは片手で数えるほどしかいない。しかもただの神ではない…土地を荒らし厄災を起こしていると言われる 邪神だ。
機嫌を損ねないように、これ以上厄災が起きないようにと数年に一回贄を捧げている、この村に古くから伝わる頭のおかしな伝統だ。
その神は、青く長い髪を一つに纏め包帯で両目を塞いで二連の黒子。今では見かけることが少ない着物に腕を通していると。まぁどれもこれも噂でしかない。
「帰りたくないなぁ…」
馨の小さい呟きの数秒後に根っこに足を躓かせた印南が転んだ。擦った膝には真新しい生傷ができていて血が僅かに滲んでいた。大丈夫か、と紫苑や猫咲が言う前にひどく柔らかな声が暗く陰った森に響いた。
「どうした?迷子か??」
コメント
6件
うわぁぁぁ✨ 今回もめっちゃ面白かった!! 続き楽しみにしてるねッッ!!
後輩同期組は最高すぎる! 辛い話だけど、めっちゃ好きです! 次回も楽しみに待ってます!
ほわぁ最高だっ!!♡ なんかもう辛いけど好きぃ💓 続き楽しみすぎるっ!!