コメント
0件
「僕には好きな人がいた」
でも、男の子だったから好きになっちゃいけなかったんだ。
普通じゃないんだ。
この前、母さんに言われた。
「ごめんね……。母さんの育て方が悪かった……(泣)」
ってさ。
母さんは悪くない。
女の子を好きになれなかった僕が悪いのに。
普通に生きないといけない。
自分に言い聞かせた。
普通って一体なんなの?
普通の高校に行って。
母さんの決めた大学に行って。
普通の会社に就職して。
女の子を好きになって。
付き合って。
結婚して。
それが普通…?
そんなの母さんの価値観でしかない。
唯一の母に否定されて。
僕はどうすればいいの…?
もう、わかんないよ……
みんなは「平等に。」とか言うけど。
平等なんて存在しないんだよ…。
だって、僕は平等に与えられたはずの普通がなかった。
僕はずっと、母さんの為に生きてきた。
僕の生きる理由は母さんだった。
だから、ずっと母さんの言うことを聞いてきた。
父さんがいなくて、母さんから嫌われたらもう生きていけないと思ったから。
でも、どれだけ頑張っても成績は悪くて。
なのに、僕以上に努力してない人は僕より成績が良くて。
どれだけ頑張ったって報われることはなくて。
僕より馬鹿な奴らは幸せそうで。
どうして……?
「みんな辛いんだよ」ってみんなは言う。
でも、そんなのわかんないくらい僕は辛い。
いや、辛い所じゃないなんのために生きていけばいいのか分からない。
みんな僕の人生を味わって見ればいいのに。
ずるい。
ひどい。
消えろ。
僕はそんな感情でぐちゃぐちゃしていた頃だった。
その人は現れた。
彼は優しく僕に微笑んでくれて、僕の話も否定せずずっと真剣に聞いてくれて。
僕には彼しかいなかったんだ。
でも、彼の存在は母に否定された。
普通じゃないんだって。
だから彼のことは忘れるしかない。
僕はもう消えよう。
誰の視界にも入らないように。
僕は母さんに手紙を残した。
『母さんへ。普通に生きれなくて、普通じゃなくてごめんなさい。』
そんな短い言葉だった。
ほとんど紙は真っ白で。
母さんに言い残すことなんて何も無かったんだ。
そうだ。
僕は未練なんか何も無い。
じゃあ、もういいかな。
僕も普通に生きたかった。
僕は震える手で首にナイフを突き刺した。
この死はどこにでもある普通の死だよね?
もう、誰も僕を否定しない。
でも、肯定してくれる人も誰もいない。
だから僕は自分を信じ続ける。
この死は普通の死だって。
僕の人生は普通だったって。