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サイド ユズ
「……っ本当に、ごめんなさい!」
ダイキ兄の家に戻って、ユズは開口一番にそう言った。
ユメお姉ちゃんたちには許して貰ったけど、まだ他のモンダイジのみんなに謝っていなかったから。謝らないと、いけない。
「いや、平気だ!みんなも怪我とかなかったし、な!」
ダイキ兄はそう言って、みんなを見回す。
……みんなも、ホッとしたような雰囲気で頷いている。本当にみんな、優しいなぁ。
「でも、もう無茶したらダメだよ?ちゃんと相談してね!」
「……うん。でも、」
ずっと気になっていたんだ。なんで、ルネお兄ちゃんがいなくなっているのか。
「……ルネお兄ちゃんの方がユズより悪いことしてないのに、なんでルネお兄ちゃんを許さないの?」
『…………!』
みんなを命の危険に晒した、ユズの方が絶対絶対悪いのに。ルネお兄ちゃんが許されないなら、ユズだって許されないはずなのに。許されてはいけないのに。
「ルネは……俺が悪いから、もうここに来ないんだ」
「ダイキ兄が悪いことしたの?じゃあ、ユズみたいに謝ろ?みんながユズを許してくれたように、きっと“いいよ”で仲直り出来るよ!」
それが大人になると、難しくなるから。だから、ユズのパパとママは……。
「どんなに近くに居ても、どんなに大切な仲間でも、言わないと伝わらないことって、あるもん」
「……!」
ダイキ兄は、目を見開いた。
ユズはユメお姉ちゃんみたいな才能なんてない。だけど、真っ直ぐに言葉を伝えることは出来るから。
「……そう、だよな。ありがと。ユズ!」
「えへへっ!どういたしまして!」
ダイキ兄が太陽みたいに笑う。ユズも花が綻ぶように笑った。
「よしっ!なら早速ルネの奪還作戦を考えるぞ!」
ダイキ兄の言葉に、みんなも笑顔で頷いた。ルネお兄ちゃんのことをよく知らない人もいるはずなのに。迷いなく頷いてくれるのは、きっと誰もが仲間だって信じているから。
……けれど、現実はそう甘くはなかったんだ。
プルルル、という音が聞こえた。みんなが一斉に自分のスマホを確かめる。
「すみません、ちょっと電話出てきますわね」
ユメお姉ちゃんにかかってきてたみたい。
「はい、横山夢芽ですわ!…………ぇ、っ?」
ユメお姉ちゃんは顔を青ざめて、ゴトリとスマホを落とした。
「ど、どうしたの?」
ただならぬ様子に、ユイカお姉ちゃんが心配そうに聞いた。
「あ、兄の、兄のドナーに、ルネが……!」
ドナー。それは病気の人の代わりに臓器をあげること。……え?なんで??
どういうこと?
誰かの息を飲む音が、凄く遠くのように感じた。