テラーノベル
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あの日の記憶が、胸の奥で蘇った。
滲んでいた視界が、ゆっくりと元に戻る。
蛍光灯の白い光が目に刺さった。
『……』
頭の中には、まだkrhの姿が残っていた。
『……ku』
小さく名前を零す。
grgnが笑う。
『そんな心配しなくても、まだ生きてるよ。』
『……』
『でも、長くはないかもね。』
一方その頃…(ku視点へ)
「…どこだよ、ここ」
ゆっくりと体を起こす。背中に鈍い痛みが走った。辺りを見渡すと、そこはさっきまでいた場所とはまるで別世界だった。
蛍光灯は半分以上が切れ、点いているものも不規則に明滅を繰り返している。
ジジッ――。
耳障りな音が静寂の中に響いた。
黄色かった壁は黒く、ところどころ壁紙が剥がれている。床には無数のひびが走り、その隙間には黒い染みのようなものが広がっていた。
「……同じ場所、じゃないよな。」
試しに一歩踏み出す。
ギシッ。
床が嫌な音を立てた。
思わず足を止める。
この場所は静かすぎる。
いや、静かじゃない。
どこからともなく、水滴の落ちる音がする。
カラン……
コツ……
ジジッ……
音は聞こえるのに、何も見えない。
「……」
嫌な汗が背中を伝う。
ここには、何かがいる。
そんな気がしてならなかった。
その時だった。
廊下の奥から、小さな足音が聞こえた。
コツ。
コツ。
コツ。
一定の間隔で、こちらへ近付いてくる。
反射的に身構える。
暗闇の向こうに、人影が見えた。
『……人間?』
低くも高くもない、静かな声だった。
思わず息を呑む。
暗闇の奥から現れたのは、一人の青年だった。
綺麗な白髪に、フードを深く被っている。人間にも見える。だけど、
「……っ」
反射的に一歩後ずさる。
すると、その青年も足を止めた。
『……ごめん。驚かせた。』
穏やかな声だった。
敵意は感じない。
それどころか、どこか申し訳なさそうに視線を伏せている。
「お前も……あいつらと同じ、なのか?」
『まあ、うん。』
否定もしない。
誤魔化しもしない。
2,224
いちいち
1,943
#lor軍団
れのん.
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ただ、静かに頷いた。
「じゃあ何で……」
『怖い?』
言葉を遮るように尋ねられる。
「……まぁ。」
正直に答えると、青年は少しだけ困ったように笑った。
『それが普通。』
『ここでは、人間は僕らを怖がる。僕らも、人間を怖がる。』
その言葉に、思わずlorの顔が浮かぶ。
「……そうか。」
沈黙が流れる。
蛍光灯が一度だけ明滅した。
ジジッ――。
その音だけが廊下に響く。
やがて青年は、ゆっくりと口を開いた。
『ここは下層。』
『一人で歩くのは危ない。』
「……危ない?」
『壊れてるから。』
青年は天井を見上げた。
次の瞬間、少し離れた場所で天井の一部が崩れ落ちる。
轟音が狭い廊下に響いた。
kuは思わず肩を震わせる。
『だから。』
青年はkuの方を見て、小さく手を差し出した。
『上に帰りたいなら、一緒に来て。』
その声には、嘘も、企みも感じられなかった。
コメント
1件
読了しました。第9話、ku視点への切り替わりと一気に異質な世界観に引き込まれる展開、とても良かったです。特に「ここでは、人間は僕らを怖がる。僕らも、人間を怖がる。」という白髪の青年の台詞が心に残りました。敵か味方か分からない緊張感の中にある、あの穏やかな声音の誠実さ……次が気になります。めらみさん、素敵な世界をありがとうございます。続きを楽しみにしています🌷