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──あれから数日
どうやら、預けていたフシデがかなり成長したらしく今日か明日、見に来て欲しいとの事でサビ組へ呼ばれている
『…カラスバさん……こういうの好きかな…』
サビ組へ行く前に、店に寄りリラックス効果のあるアロマキャンドルを手に持ち悩む
『こっちは匂いキツイかな…でも男の人ってこういう匂いの方が……』
「──何をされているんですか」
『わっ!?』
悩んでいると後ろから声をかけられ慌てて振り向く
するとそこには、私服姿のグリが立っていた
『グ、グリさん!?』
「プレゼントですか?」
『あ、はい…少し匂いで悩んでて……』
あの日以降、グリとはバトルの練習で合ってはいるがやはりあんな事があってからか変に意識してしまう
しかしそんなシオンに対し、グリはシオンの横に立ちキャンドルを取り見る
「あげる方はカラスバさんですか?」
『えっ!?あ、ま、まぁ……』
「そうですか……少し妬けますね」
『……へっ!?』
「ふふ、そう警戒しなくていいですよ。
……そうですね…男性ならウッディ系の匂いはどうでしょう」
そういって白色のアロマキャンドルを差し出す
『ん、ほんとだ…いい匂い!』
「落ち着いた匂いで、香りも強すぎないので初めて渡すには1番いいと言われていますよ」
『そうなんですね…へへ、じゃあ逆にグリさんはどんな匂いが好きなんですか?』
「おれですか?」
グリは少し驚いたように、目を見開いたあと考える
「(好きな匂い等考えたことがなかった)」
しかしふとシオンの方を見ると、甘い匂いが鼻をかすめる
「…バニラ系の匂いですかね」
『なるほど…グリさんって意外と甘い匂いが好きなんですね!』
まさか自分に当てはめられているとはつゆ知らず、純粋無垢な瞳でバニラ系のアロマキャンドルを手に取るシオン
『え、と…後は〜……』
「ショッピングが好きなんですね」
『はいっ!自分の為に買うのも好きですけど、誰かに渡すってのを考えて買うのも好きなんです!』
「なるほど、もしよろしけれ御一緒しても宜しいですか?」
そういってグリに微笑みかけられ、少し悩むシオン
グリの好意は知っているし、これもきっとそういう意図だろう
しかし断ることも出来ないし、何よりグリにはバトルの事でお世話になっている
『(まぁ、明日でもいいってカラスバさん言ってくれてたし…)』
しばらく悩んだあとシオンも微笑み『いいですよ』と答えた
『香水かぁ〜…!』
「シオンさんは、こういう匂いは付けられますか?」
そういってグリが手に取ったのはローズの香りのパルファム
『ローズはあまり…けど嫌いな匂いじゃないですよ〜! 』
「そうですか、逆に苦手な匂いとかはありますか?」
『うーん…あまりないですかね……って逆にグリさんはどうなんですか?』
そう言うとグリは少し悩む
〖──人の良心に漬け込むんは、ちょっと卑怯とちゃうん?〗
苦手な匂い……
「…オリエンタル系の匂いは苦手ですね」
『なるほど、そう思ったらグリさんは反対のホワイトムスク?かな、清楚な感じのいい匂いですもんね!』
そういって匂いを嗅ごうと顔を近づけるシオンに驚いたように顔を赤くするグリ
そんなグリに気づいていないのか、そのまま気にせずショッピングを続けるシオン
「(この人は本当に……)」
人たらしなシオンに頭を抱えつつも後ろをついて歩いた
『(赤色の口紅……)』
メイクコーナーを通り過ぎる際、赤色の綺麗な口紅に目が止まる
『(カラスバさんってどっちかと言うとこういう強そうな色の方が好きだよね)」
きっと、自分には似合わないかもだけど…少し反応が見てみたい………そう思いつつ赤色の口紅を手に取ろうとした瞬間だった
「そちらが気になるのですか?」
『へ!?あ、い、いや…それは……そのっ…』
慌てて手を引っ込めて慌てるシオンを見て笑うグリ
しかしいつも薄めの口紅を好んでつけているシオンがこれを選ぶ理由は薄々分かる
きっとカラスバの好みに合わせてだろう
「確かに、カラスバさんはこういう口紅をつけてる女性を横に置いてそうですよね」
『へ!?わ、私別にカラスバさんなんて…!』
「ふふ、顔に出てますよ。貴方の事はずっと見ていましたから、すぐ分かります」
そういって笑うグリにシオンはハッとしてバツの悪そうな顔をする
『…すみません……グリさんの気持ち知っておきながら……』
「いいんです。それにまだチャンスはあると思っていますから」
『えっ!?』
そういって笑うグリ
あれからグリと話す機会もあったが、シオンはグリの気持ちには答えられないとハッキリ断っている
それでもグリはシオンのことを諦めきれず、今もこうして彼女に取り入れる隙を狙っている
「今日は付き合って頂き、ありがとうございました」
『いえ!どちらかというと私が付き合ってもらった方みたいなものですし… 』
頬をかきながら笑い、紙袋の中からグリへ買ったバニラの匂いのアロマキャンドルとハンドクリームを渡す
「ハンドクリームまで…いつの間に買ってたんですか?」
『えへへ、コソッとです〜!
グリさんは水仕事も多いだろうから、手を大事にして欲しくて』
グリの仕事柄の事を考えて、しっかり選んでくれたさり気ない気使いに胸が打たれる
「貴方は本当に素敵な方ですね」
『あっ、え、えと…ありがとうございます…』
頬を少し染めて嬉しそうに笑うシオン
そんなシオンを見て釣られるように笑ったあと、シオンへ買っていたローズの香水を渡す
『!これ……!!いいんですか?』
「ええ、是非。それとこちらも… 」
そう言って渡したのはシオンが終始見蕩れていたが、買うのを断念した赤色の口紅
「おれに気を使わず、買えば良かったのに。
本当に優しい人ですね。」
勿論、カラスバの為に買おうとしていたというのはかなり癪だし、妬けるが
自分を理由に好きなものを断念するシオンは見たくなかった
それに、赤色は自分にとって良くも悪くも思い入れのある色だった
そんな色をつけて着飾る彼女を見てみたいという浅ましい男の欲もあった
『赤の口紅…!!い、いいんですか…?』
「ええ。きっと似合いますよ」
『!ちょっとつけてみてもいいですか?』
「構いませんよ」
そういって、小さな唇に赤色の口紅が塗られる
小さく可愛らしい顔に対し、一際異彩を放つ赤色の口紅がよく似合っている
『どうですか?』
「とても…似合っていますよ」
『えへへ、よかった…!』
このまま誰の目にも届かない所へ、攫ってしまいたい
そう思ってしまうほど眩しく輝くシオンに目が眩む
しかし彼女が右手に持っている白色の紙袋の中に入っているものこそ、彼女の本命の人間へ渡すものなのだろう
ウッディ系のアロマキャンドルにアイマスクやポケモンの遊び道具と木の実
そして極めつけはフシデのポーチ
数日の間に、何があったのか
伊達にサビ組の頭を張ってる訳じゃない。侮れない男だ
あっちはおれと違って、きっと強引な手も使うだろう
しかしまだこの様子だと、付き合ってないようだしそれならおれにだってチャンスはいくらでもある
『あ、そろそろ帰らなくちゃ…今日は夜遅くまでありがとうございました!』
「…あ、シオンさん。首にゴミが着いてますよ」
『え?ほんとです……か…………』
首を触ろうとするシオンの手を掴み首元へグリの顔がシオンの首に近づき
チクッ、とした痛みがした後どこか不敵な笑みを浮かべ離れる
「まだ、おれは諦めてませんから。言いましたよね。
貴方が何度振ろうとも、貴方が誰かのモノにならない限りは諦めないと」
そういってシオンの首に着いた赤色の痕を親指で撫でたあと満足そうにその場を去った
『エッ!?』
取り残されたシオンは首を慌てて抑え、顔を真っ赤にしてその場でしばらく立っていた